4回目を迎えた恒例イベント。経験に合わせて選べる3クラス制の走行会
10月24日、秋晴れの十勝スピードウェイに、早朝から参加車両が集まってきた。GR Garage札幌西が主催するイベント「第4回サーキットを楽しもうの会」が開催されたのだ。

GR Garage札幌西は、AGHトヨタ札幌が運営するGR Garageだ。GR Garageとは、トヨタがスポーツカーシリーズ「GR」の投入に合わせて2017年から全国に展開している、GAZOO Racingの地域拠点。「町いちばんの楽しいクルマ屋さん」をコンセプトに、GRコンサルタントと呼ばれる専任スタッフが、地域のクルマファンが楽しめる活動に取り組んでいる。
GR Garage札幌西の前身は、GR Garageの初期店舗のひとつとして札幌市厚別区に開設された「GR Garage札幌厚別通」。2024年7月に札幌市西区へ移転し、現在の店名になった。オートテストやジムカーナ、そしてこの走行会と、モータースポーツの入口づくりにも力を入れている。

そんなGR Garage札幌西が主催する本イベントは、今年で4回目ということもあり、北海道のクルマ好きにとっては恒例行事となっているようだ。今回も募集開始から1〜2日で枠がほぼ埋まってしまったという人気ぶりで、当日は稚内から前日入りした人、苫小牧から下道を3時間走ってきた人など、道内各地から参加者が続々と集まった。
このイベントの魅力が、豪華なゲストドライバーだ。今年は、昨年に続いての参加となるラーマン山田選手と、初登場の小山美姫選手が登場した。

山田選手は、タイムアタックの第一人者として、チューニング誌『オプション』などでも長く活躍してきたからご存じの方も多いだろう。小山選手は2022年にフォーミュラ・リージョナル日本選手権を制し、FIA公認の男女混合選手権で女性初のチャンピオンになった経歴をもつ。今季はスーパーGTのGT300クラスにapr LC500h GTで参戦している。
山田選手は「いつもの走行会では男性ドライバーと一緒になることが多いのですが、今日は速い女性ドライバーと一緒でうれしい」と顔をほころばせた一方、初対面だという小山選手は「もっとワイルドな方だと思っていたら、普段は優しい方でした」と返し、会場の笑いを誘っていた。

愛車でサーキットを疾走! 初級から上級まで、それぞれのペースで
イベントの中心は、参加者が自分のクルマで十勝スピードウェイ クラブマンコースを走るフリー走行だ。クラスは経験に応じて3つに分かれている。サーキット走行の経験がない人向けの初級、2回以上の経験者向けの中級、そしてクラブマンコースを1分43秒以内で周回できる人向けの上級だ。走行は1枠20分で、午前に1本、午後に2本の計3本を走ることができる。

初級クラスは、ゲストのプロドライバーが先導する。参加者には無線機が渡され、走行中に注意事項やアドバイスを受けられる。そして周回を重ねるごとに少しずつペースを上げていくので、サーキットが初めての人でも無理なくコースに慣れることができるというわけである。こうした初心者への気配りも、このイベントのうれしいところだ。
それでは、走行を終えた参加者に話を聞いてみよう。
■佐藤一輝さん(初級クラス)/トヨタGRカローラ
「G16E-GTSエンジンにどうしても乗りたかった」という理由でカローラツーリングから乗り換えたGRカローラは、3年ほど待ってようやく手に入れた1台。今回が初めてのサーキット走行で、これまではグランツーリスモでGRカローラの挙動を研究してきたが、実際に走るとGの大きさに驚いたそうだ。サーキットモードもこの日初めて使ったとか。来年は1分40秒台を目標に、アドバン ネオバAD09への履き替えや、VARISの可変フラップ付きウイングの装着も計画している。
■氏家功司さん(中級クラス)/トヨタGRヤリス
ラリー車が好きで、四駆ターボを探してたどり着いたのが愛車のGRヤリス。それまではMR2やS660に乗っていたが、雪の多い北海道では走れない時期が長かったことも乗り換えの理由だ。ベースはRCだが、今年は足まわりをRZの純正品に交換し、タイヤもシバタイヤに新調した。「RCの足は限界が低くて、全然曲がっていかなかったんです。今回はタイヤもしっかりグリップして、タイムは去年より3〜4秒速くなりました」と、確かな手応えを感じていた。
■撃沢ゲン@GR王さん(中級クラス)/トヨタGRヤリス
GRスープラ、GRカローラ モリゾウエディション、GR86、GRヤリスと、GRの4台を所有する「GR王」。昨年に続いて2回目の参加だ。「カスタムをすると、ディーラーではNGということもあるじゃないですか。でもGRは、お客さんが楽しめる幅を広げて『どうぞ』と言ってくれているように思える。それがGRに惹かれる理由ですね」。今回は、サーキット用のカスタムが間に合わなかったGR86ではなく、ECUや排気系をHKS製で仕上げたGRヤリスで参加した。以前乗っていた20式と比べると、現在の愛車の24式では、エンジンの進化を強く感じているという。
■佐々木翔一さん(上級クラス)/トヨタGR86
苫小牧から下道で3時間かけて参加した佐々木さんは、一昨年に続いて2回目の参加。レガシィB4を2台、スイフトスポーツを乗り継ぎ、GR86で初めてFRを手に入れた。4年目になる愛車は、エンジン本体はノーマル。エキマニから後ろの排気系をガナドールに替え、足まわりにはエンドレスのZEALをカスタムオーダーで組み込んでいる。普段はドライブに使うため、快適装備は残して軽量化はしていない。「普段乗っていても目線が低くて、ハンドルもクイック。日常でもスポーツカーだと感じます」
■佐藤健士郎さん(上級クラス)/トヨタGRスープラ
ZN6型の86、GRカローラ、GRコペンも所有し、GR車を乗り継ぐ佐藤さん。今回は友人に誘われて初めての参加となった。GRスープラは筑波サーキットにも毎年持ち込んでいるが、「まだ手探り状態」だという。足まわりは、レーシングドライバーの佐々木雅弘選手が開発に携わったD2ジャパンの車高調「MASA-SPEC(マサスペック)」をインストール。この日は1分30秒台の好タイムを記録したが、フロントのグリップ不足が課題として残った。「来年に向けて、ちまちま改善していこうと思います」
プロの助手席で「クルマの性能」を体感! 参加者も家族も笑顔になった同乗走行
この日、大盛況だったのがプロドライバーによる同乗走行だ。デモカーの助手席で山田選手と小山選手の走りを体感した参加者は、異口同音に「すごい…」と驚嘆の声をもらしていた。


上級クラスの佐々木翔一さんにとっても、山田選手の走りからは次元の違いを感じたという。
「速度域が全然違いますし、『そこで踏めるんだ!?』という感じでした。そして、すべての動作が素早くて迷いがない。どこで何をやるかが、もう決まっているかのようでした」
山田選手は、同乗走行の狙いを次のように語った。
「一番大事なのは、クルマの性能がそこにあるということ。僕はそれを見せたいだけなんです。その性能はなかなか引き出せないけれど、開発の人たちは毎日一生懸命作っている。それを体感してもらいたい。クルマの伝道師みたいなものですね」
トークショーで聞く、十勝の攻略法とタイヤの話。「クルマと対話」することの大切さも
昼食後のトークショーも、この走行会の恒例イベントだ。この日は、まず十勝スピードウェイの走り方が話題になった。山田選手は十勝を「走っていて楽しいコース」と評し、その理由にコース幅の広さと縁石の低さを挙げた。
「縁石がほかのコースより低いので、イン側や外側の縁石を使ってタイムを上げられるんです。このサーキットとはものすごく相性が良くて、大好きなコースのひとつですね」

小山選手はN-ONEのワンメイクレースやGR86/BRZ Cupで十勝スピードウェイを走った経験がある。ただ、十勝は似たようなコーナーがRを変えながら続くため、どこを走っているのかわかりにくくなるという。
「コースが広いのでバトルはしやすいのですが、タイムアタックはすごく難しい。目指すのは早めに切り込んで早めにアクセルを開けること。もし『行き過ぎた』と思っても、出口でラインの取り方を臨機応変に変えることで対応できますよ」

話題はタイヤの重要性にも広がった。どんなマシンでも、路面に接地しているのはタイヤだけ。クルマに応じて、タイヤを100%生かす走らせ方をすることが肝要というわけだ。
そのなかでも山田選手がカギに挙げたのが、タイヤの内圧管理。走行すると内圧は上がるので、走り出しは低めに設定しておく。たとえば2.1kg/cm2で走り出して2.5kg/cm2まで上がったら、走行直後に2.3kg/cm2まで下げる。そうして内圧をきちんと管理することが、自分のクルマでベストタイムを出す要素のひとつだという。
サーキットを楽しむためのアドバイスを求められた小山選手は、こう答えた。
「タイムを追い始めると、壁に当たったときに楽しくなくなります。速く走らせようとする気持ちよりも、クルマを感じ取り、クルマと対話することのほうが大切です。理解が深まれば、結果としてタイムにもつながります」

GRヤリスで「パフォーマンスソフトウェア」と「リフレッシュサービス」の効果を体感
今回のイベントには、事前に告知されていなかった「裏コンテンツ」が存在した。それが、GAZOO Racingの開発陣が直々に開催した体感走行だ。対象はGRヤリスとGRカローラのオーナーで、ふたつのメニューを用意。ひとつは、すでに販売されたクルマの走りをソフトウェアで進化させる「パフォーマンスソフトウェア」。もうひとつは、消耗した部品を新品に替えて本来の乗り味を取り戻す「リフレッシュサービス」である。

「GRヤリス/GRカローラ パフォーマンスソフトウェア」シリーズは、無料機能のサーキットモードをさらに進化させたソフトウェアで、今年5月に発売された。「ストリート」「サーキット」「コンペティション」の3つの商品が用意されており、それぞれ想定する走行シーンに合わせてアクセルレスポンスや前後の駆動力配分などを好みに合わせて設定できる。たとえばコンペティションでは、前後の駆動力配分を1%単位で変えられる。雪道では1%の違いでも差が分かりやすく、北海道のユーザーに向いた機能だという。
パフォーマンスソフトウェアには、公道でも使用・体感できるさまざまな機能が用意されている。一方で、リミッターカットなどサーキット等の特定施設でのみ作動する機能もある。この日は特設コースで複数の機能による違いを比較できる、貴重な機会となった。前後配分やアクセルレスポンス、ステアリングの重さを変えてもらった中級クラスの氏家功司さんは、「まったくの別物です。たぶん誰でも分かるくらい変わりますね」と驚いていた。小山選手も、リヤ寄りの配分にするとピッチングの変化が分かりやすく感じられたという。

一方のリフレッシュサービスは、マウントやブッシュ、ショックアブソーバーなどの消耗部品を新品に替え、新車当時の乗り味を取り戻すメニューだ。86(ZN6)向けには「86リフレッシュサービス」として、すでに全国のGR Garageで提供されており、GR Garage札幌西でも施工できる。コースはエンジン、マウントゴム、足まわりゴムブッシュ、ショックアブソーバー、ブレーキの5つ。

GRヤリス用はまだ発売前で、近日中の発売が予定されているという。今回は、10万kmを走行した後、全メニューを施工してリフレッシュされたGRヤリスが特別に持ち込まれた。
体験した参加者の評価は上々。撃沢ゲン@GR王さんは「第一声は『うまいな』でした。10万km以上走っているのに、程度が悪いとはまったく感じられません」と話す。走行約2万2000kmの愛車で参加していた氏家功司さんも、「こんなになるの?というくらいカチッとしていました」と驚いていた。
前日に試乗した山田選手も、このリフレッシュサービスによる乗り味の変化には驚いたという。
「速くなるのではなく、ボディ感があってシャキッとする。バタつき感がなくて、全体的にすごくスムーズになっています。チューニングパーツを付けたのとは、まったく違う効果がありますね」
まだまだあります! 当日の模様をダイジェストでレビュー



オートテスト、ジムカーナ、そしてサーキットへ。走行会に込めた想いとは
すべてのプログラムを終えるころには、日はすっかり暮れていた。走行会を企画・運営したAGHトヨタ札幌の古島淳一さんに、この日の手応えを聞いてみた。
「今日、何より良かったのは、事故やけががなかったこと。皆さんの協力で成り立っているイベントだと改めて感じました」

古島さんはサーキット走行会をはじめとしたGR Garage札幌西で取り組むモータースポーツを「三段活用」と表現する。
「新規のお客様を増やすイベントとしてオートテストがあり、もう少しステップアップしたい方にはジムカーナ、もっとアクセルを全開で踏みたい方にはサーキットがあります。こうしたモータースポーツに関するイベントを通じて、お客様との関係性が深まると感じています」
若い世代に興味を持ってもらうことも狙いのひとつだ。一般的なサーキットイベントは、どうしてもハードルが高い。先導車をつけたり、無線でアドバイスを送ったりするのは、その入口を極力低くするためだ。トヨタ車以外のクルマで参加できるのも、同じ考えからきている。

「このイベントがきっかけで、少しでもGRに興味を持ってもらえたらいいな、という想いもあります。また、トヨタ車以外のクルマでもご参加いただくことで、接点を持つことが大事だと考えています」と語る古島さん。実際に、他メーカー車で付き合いが始まり、その後、GR Garageでクルマを買い替えた人もいるという。
来年の開催にも期待して良さそうだ。参加者のアンケートを反映しながら内容を磨いていくとのことだが、「まだ何も決まっていませんが、春と秋、年に2回やるのもいいかもしれませんね」と、古島さんの口からはうれしい言葉も。これからも「サーキットを楽しもうの会」が、北海道のクルマ好きの輪を広げていってくれそうだ。

走行写真ギャラリー(初級クラス)













走行写真ギャラリー(中級クラス1)

















走行写真ギャラリー(中級クラス2)
















走行写真ギャラリー(上級クラス)





































【公式】GR Garage札幌西 | AGHトヨタ札幌
