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自衛隊新戦力図鑑
富士総合火力演習で主砲を射撃する10式戦車。起伏に合わせて車高を変化させ撃つ稜線射撃。巨大な発砲炎の先に徹甲弾の弾芯が飛翔している。

10式戦車は国産の主砲を久しぶりに装備した。これは戦後初の国産戦車である61式戦車以来のこと。搭載するのは44口径120mm滑腔砲だ。これは技術研究本部(現・防衛装備庁)と日本製鋼所が共同開発したもの。同じ寸法や仕様に近い90式戦車の主砲より強力となるよう、砲身や薬室(発射する砲弾を収め激発させる場所)などに独自の設計を施した新型砲だという。その90式戦車の主砲は44口径120mm滑腔砲Rh120だ。これはドイツ・ラインメタル社製の「Rh120」を日本製鋼所でライセンス生産したもの。現在でも世界第一線級の性能を発揮する戦車砲といわれている。

重複するが、10式の主砲は口径(砲口直径)も砲身の長さも90式の「Rh120」と変わらず、前述したように同様に見えるがまったくの別物で、10式の主砲はより強火力を発揮できるよう開発されているのが相違点といえる。

主砲と同時に開発された新型砲弾「10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)」は10式専用の強力砲弾だ。90式のAPFSDSに比べ、装甲貫通性能が向上した非常に強力な徹甲弾といわれ、米軍が運用する最大貫通性能を持つ劣化ウラン弾芯の徹甲弾に迫る性能ともいわれる。成形炸薬弾(HEAT-MP)は90式戦車と同じ「JM12A1対戦車榴弾」を使う。

10式も砲弾の自動装填装置を搭載しており、砲塔後部にセットされている。自動装填装置を初搭載した国産・陸自戦車は90式戦車になる。10式の自動装填装置はこの90式と同じベルト・マガジン方式。砲塔後部の左右幅を使って設置・レイアウトされているという。この装置は90式のものを発展、改良を施してあるそうだ。それは、主砲に仰角が付いている、あるいは走行中で砲身などに重力加速度が掛かっている状態でも装弾可能だという。

精巧に作られ高威力の主砲や高性能な射撃管制装置(Fire Control System:FCS)、砲安定装置などで構成される射撃システムを積んだ10式は、パワフルなエンジンと運動性の高い脚周りの組み合わせに支えられ、スラローム走行しながら連続的に射撃し、しかもその初弾から命中させるなど驚くべき性能を見せる。

この射撃能力は射撃システムの能力に加えて走破性や走行安定性など「走りの良さ」にも支えられたものだろう。富士総合火力演習でも10式のアピールポイントのまずひとつは、激しく走りながら射撃し命中させる点にあると理解できる。また、他のデモンストレーションから想像できるのは、丘陵や平原などでの従来型機甲戦闘や狭い都市地域などでの諸活動でも威力を発揮するだろうということ。10式の守備範囲は広いものと考えられる。

10式戦車の副武装である12.7mm重機関銃M2。写真中央の車長用ハッチ基部に設置され回転可能。ハッチの左側は車長用照準潜望鏡。
砲塔後部の円筒は起倒式の環境センサー。気温や気圧、風向、風速を測定、その気象データを弾道計算コンピューターへ送り射撃諸元に加味することでその精度を向上させる装置。

しかし10式の砲塔は90式よりも小型化させたため、自動装填装置への搭載弾数は比較的少ないといえるタマ数のようだ。また戦車砲弾を車内へ積む給弾方法は見直され、砲塔上面から砲弾を入れる方法の90式に対して、10式は砲塔後面の小型ハッチを介する方法へ変更した。これは給弾作業で便利だろう、作業者の腰などに優しいはずだと思われる。

副武装として主砲と同軸で74式車載7.62mm機関銃を装備する。12.7mm重機関銃M2は砲塔上に1丁装備。これは砲塔上面にある車長用ハッチの周囲に装着された円形レールに装着している。

砲塔前側面の両側、砲塔後部両側にレーザー検知器を計4基、取り付けてある。相手のレーザー式照準を検知するものだ。検知器は全周をカバーしていて、どこからレーザー照射されてもほぼ判別できるという。76mm発煙弾発射装置は砲塔前側面の両側に1基ずつ装備した。

左右に移動しながら射撃するスラローム射撃中の10式戦車。命中率は高く、本車の特筆点のひとつだ。

陸上自衛隊:最新世代戦車「10式戦車」の性能①、ヒトマルの機動力に注目する

これまで90式戦車、74式戦車を紹介してきたが、今回から10式戦車を見てみよう。装備された2010年度にちなみ名称は「10(ヒトマル)式戦車」と呼ばれる。開発は防衛省技術研究本部(現・防衛装備庁)が2002年から09年まで行い、製造は三菱重工。最新世代の戦車として登場して以来、主力戦車のひとつとなっている。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

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