タイでの販売価格は約620万円。日本では果たしていくらになる!?
日本のファンが待ち望んでいるトヨタ「ランドクルーザーFJ」が、ついに生産国タイでデビューを果たした。“最もコンパクト、最もリーズナブルなランクル”という立ち位置のランドクルーザーFJだが、その上位モデルとなる「ランドクルーザー250」とはデザインやサイズ以外でも様々な違いがある。日本での使い方を考えれば、その違いはユーザーに影響がないのかもしれない。しかし、“違い”を知って買うほうがよりこのクルマの魅力を体感できるはずだ。

すでにこのメディアでも多くの情報が流れており、実車の写真も掲載されている。読者の皆様もすでにご存知の部分が多いだろう。そこで、今回は公開された情報から見えることをお伝えしていきたい。
さてランドクルーザーFJは、“より広い地域にランドクルーザーを広める”といったトヨタの主旨で開発されたと思うが、タイでは126万9000バーツ(日本円で約620万円)という価格が付けられた。為替の関係で、日本での600万円という感覚とは異なるにしろ、かつて70系が200万円台で売られていた時代を知っている身には、“お手頃価格!”という印象ではない。

巷では、日本での販売価格を400万円台前半と予想する向きが多い。トヨタではお馴染みの2TR-FE型2.7L直4エンジン、シャシーは「ハイラックスチャンプ(IMV-0)」のスーパーショートの流用、四駆システムはパートタイム式であることを考えれば、もっと安くてもいいのではないかと思う方もいるかもしれない。

コストという点から考えれば、もちろん250系よりも抑えてあることは間違いない。最新の電子制御システムもランドクルーザーFJでは控え目の採用となっている。だが、シャシーは流用と言ってもランドクルーザー品質の補強がなされているし、サスペンションもリアは4リンク式コイルリジッドでこれにもコストがかかる。さらに、フルタイム4WDと比べれば構造はシンプルだが、トランスファー自体のコストはかかる。加えて、リアデフロックの標準化もコストアップのポイントだ。
車内を見てみると、ダッシュボード上には12.3インチの液晶モニターがドーンと載っている。各スマホとの親和性を考えた機能が標準装備されているようだ。オートエアコンやステッチ入りの電動シートの見た目も安くない。加えて、ブラインドスポットモニターやパノラミックビューモニター、EBD、VSC、A-TRCといった安全装備群も当たり前のように装備されている。
リアシートを折り畳んだ時に大きな段差ができるのは残念だが、車内のユーティリティもSUVとしては十分合格ライン。むしろランドクルーザーとしてはコンパクトなボディサイズが、日本のユーザーには評価されるはずだ。


こうしてカタログデータをつぶさに見ていくと、むしろ日本で400万円台というのは安いかも、と思えてくるのだ。これなら、250系ではなくFJがいいとではないかという人も多くいるだろう。そこで、今回のテーマに戻ろうと思う。「では、FJは250系と何が根本的に異なっているか」ということだ。
コンパクトさと軽さに勝るものなし。悪路走破性はFJが250を上回る!?
まだ試乗をしていない段階で早計ではあるが、予想では250とは異なる乗り心地とハンドリングではないかと思う。そもそも250系は300系と同じTNGA「GA-Fプラットフォーム」を使っているのに対して、FJはやはりIMV-0ベース。両車のスケルトンシャシーを見ればわかるが、フロント周りの構造や部材はまったく異なっている。リアコイルスプリングの配置位置やストローク量において、FJはかなり苦心した感じが見受けられる。
もちろん250系よりも車両総重量が軽いという前提なので、どれほどフィーリングに差があるかは不明だが、やはりオンロードは250系にアドバンテージがあると思われる。


前述のように4WDシステムも異なる。250系はサブトランスファー付きの電子制御フルタイム4WD。様々な電子デバイスによって、世界でも屈指のオフロード性能をオーナーは享受できる。300系とまではいかないにせよ半自動でのオフローディングが可能で、ドライバーにさほどのテクニックがなくてもクルマが“走らせてくれる”のだ。
一方のFJは、そこまでのデバイスを持っていない。詳細な性能は不明ではあるが、リアブレーキの電子制御によるオートリミテッドスリップデフ(後輪のみの差動)が付いているものの、トラクションコントロールがオフロードでも作動するかはまだ分からない。ただ、リアデフ内にデフロック機構が標準装備されているため、いざとなれば高い悪路走破性を発揮することは間違いなさそうだ。

パートタイム式の4WDも一見すると古いメカニズムのように思えるが、十分な整備インフラがない環境ではアドバンテージがある。十分な検証を済ませているとは言え、電子制御方式は経年劣化や苛酷な環境下での作動不良という懸念が払拭できない。もし、人里から遙かに離れた場所で故障が生じた場合、電気系統はなかなか応急で対処するということが難しい。
FJはトランスファーギアの切り替えに電動切り替え式を採用しているが、ここは賛否が分かれるかもしれない。ジムニーシリーズも先代までスイッチとソレノイドを使った方式をトランスファーに採用していたが、いくつかのシーンでトラブルが発生することが分かり、現行型ではレバー式という最もオーセンティックな形に戻している。トヨタはすでに40年以上もこのスイッチ方式を使っているので信頼性は十分だろうが、それでも…というリスクヘッジがあってもよかったと思う人もいるだろう。

FJのオフロード走行でもうひとつ言えるのは、悪路を走る場合はそれなりの知識とテクニック、経験が必要になるだろうということだ。最低でも「対角スタック」くらいは知っておかないと、どんなシーンでデフロックを使えばいいのかも分からない。
よく“日本ではそんな性能を使うシーンはない”という声を聞く。だが今後起きうる自然災害を考えれば、オフロードテクニックを知っておくことはアドバンテージになることは間違いない。また、電子の塊のような300系や250系に比べれば、実はFJの方が“地球の最後に残るランクル”かもしれない。

70系というさらに質実剛健なモデルもあるが、大きさを考えるとFJの日本への親和性は高い。1855mmという全幅は決してスリムとは言えないが、5.5mというジムニーノマドよりも小さい最小回転半径は、林道内では美点となる。
250系のロングホイールベースもオフロードでは時としてアドバンテージとなるが、やはりコンパクトさと軽さに勝るものはない。見た目は愛嬌のあるFJだが、ランクルの本領であるオフロードにおいては、もしかすると250よりもFJの方が実用的と言えるかもしれないのである。不安材料としては、リアサスペンションのストローク不足だが、それも考えてのリアデフロックの標準化かもしれない。
いずれにせよ、ランドクルーザーFJの日本での発売は秒読み段階に入った。トヨタにはすでに予約が入っているという話も聞くが、果たして今回はどれだけの人が手に入れることができるのか。久しぶりのショートなランクルの発売は、何かと気になる点がいっぱいだ。


