
2017年の東京モーターショー。マツダのブースには、美しいコンセプトカーを一目見ようと多くの観客が詰めかけていた。その視線の先にあったのが、VISION COUPEと魁(KAI)コンセプトである。

美しいデザインと究極のエンジン
当時のマツダ・デザインは、まさに絶頂期にあったと言っていいだろう。
2010年に「魂動(こどう)—SOUL of MOTION」というデザイン哲学を打ち出し、「靱(SHINARI)」「勢(MINAGI)」「雄(TAKERI)」「跳(HAZUKI)」「越(KOERU)」といったコンセプトカーを次々と発表。それらはやがて、市販車として結実していった。

2015年にはRX-VISIONを出展し、大きな話題を呼んだ。そして2017年、VISION COUPEと魁(KAI)コンセプトが登場する。
今回の主役は、この魁(KAI)コンセプトだ。
当時はデザインだけでなく、技術陣も勢いに乗っていた。魁(KAI)コンセプトでは、次世代ガソリンエンジンであるSKYACTIV-Xの搭載が予告されていた。
マツダにおいて、ビジョンモデルはデザインの方向性を示す存在。一方で漢字一文字のコンセプトカーは「将来の市販モデル」を示唆する。となれば、この美しいハッチバックが何になるかは明白だった。すなわち、マツダの中核モデルとなるMAZDA3である。

魁(KAI)コンセプトの主要スペックは以下のとおり。
- 全長×全幅×全高:4420×1855×1375mm
- ホイールベース:2750mm
- エンジン:SKYACTIV-X
- 駆動方式:FF
(当時の)Cセグメントとしてはやや広い車幅と大径タイヤを除けば、ディメンジョンは現実的。それでいて圧倒的に新しく、美しいデザインだった。
ほぼそのまま市販化されたMAZDA3


市販モデルのMAZDA3がワールドプレミアされたのは、2018年11月のロサンゼルスショーだ。
主要諸元は以下のとおり。
- 全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm
- ホイールベース:2725mm
- エンジン:SKYACTIV-X
- 駆動方式:FF

量産化にあたり、タイヤサイズは245/35R20から215/45R18へと小径化され、リヤバンパーの処理も変更された。しかし全体としては、コンセプトカーの造形を高いレベルで保ったまま市販化されたと言っていい。


コンセプトから量産へ見事に昇華した好例である。


美しさと引き換えにしたもの

ただし、MAZDA3はマツダの期待ほどの大ヒットには至らなかった。
美しいデザインの代償として後席の閉塞感が指摘され、SKYACTIV-Xは高価で、燃費面ではストロングハイブリッドに及ばなかった。
魁(KAI)コンセプト登場から9年、MAZDA3発売から7年。
そのスタイルには、いささかの古さも感じさせない。
それは、マツダ・ロードスターと並び、魁(KAI)コンセプト=MAZDA3のデザインがいかに優れていたかを物語っている。




