BEV戦略説明会で異彩を放った“小さなランクル”


2026年中頃の発売が予定されている注目モデル、ランドクルーザー”FJ”。ランドクルーザー”FJ”には、その原型とも言えるコンセプトカーが存在した。もちろん、2006年にアメリカで販売が開始され、2010年に日本市場にも投入されたFJクルーザーもデザインソースだが、もっと直接的につながるモデルがあった。2021年のCompact Cruiser EVである。

2021年12月、トヨタはバッテリーEV戦略に関する説明会を開催した。豊田章男社長(当時)の後ろには、トヨタが今後投入予定のBEVがズラリと並んだ。そのなかに、当時のトヨタBEVが空力重視(それは現在も変わらないが)の丸いデザイン路線だったなかで、BEVらしからぬルックスを持つコンセプカーがあった。
Compact Cruiser EVである。

四角いボディ、張り出したフェンダー、短いオーバーハング、白いルーフ、そして大径タイヤで、FJ Cruiserや古いランドクルーザーへのオマージュであることがわかる。だが、BEVのコンセプトだ。
戦略説明会後、 Compact Cruiser EVへの反響は大きかった。「ミニ・ランクル、ベイビー・ランクル」として期待されたのだ。
デザインを手がけたのは、南フランス・ニースにあるトヨタのデザイン拠点ED²(イーディースクエア)。欧州の若いデザイナーたちが、「都市生活でも使いやすいサイズの遊べるEVオフローダー」として提案したものと言われている。




詳細スペックは、明らかにされなかった。バッテリー容量も、モーター出力も、プラットフォーム(モノコックなのかフレーム構造なのか)も非公表だ。

見ようによっては、技術提案というよりデザインスタディとして生み出されたコンセプトカーだったわけだ。



そしてランドクルーザー”FJ”へ


さて、そこから4年後、2025年のジャパンモビリティショーでワールドプレミアされたのがランドクルーザー”FJ”プロトタイプである。
ずっと噂に上っていた”ベイビー・ランクル”である。
ランドクルーザー”FJ”のエクステリアデザインは
- 歴代ランクルが重視してきた居住性と積載性を考慮したスクエアなキャビンを意識したシルエットを踏襲
- サイコロをモチーフとした直方体ボディと角をそぎ落とした面取り構成で、無駄のない強い塊感と楽しさを表現
- フロント・リヤは、引き締まったシンプルなボディに力強いバンパーと張り出したフェンダーの構成とし圧倒的な安定感を表現
- フロント、リヤともにコーナーバンパーを取り外し可能な分割タイプとすることで、壊れた部分のみ交換可能とし修理性を向上させるとともに、より個性的にランクルを楽しめるカスタマイズへの対応にも配慮
とトヨタは説明する。


IMVプラットフォームを採用するランドクルーザー”FJ”は、フレーム構造を持つオフロードSUVである。BEVではなく、エンジンを搭載する(日本仕様は2.7L直4ガソリンエンジン)。生産はタイだ。
ランドクルーザー”FJ”
全長×全幅×全高:4575mm×1855mm×1960mm
ホイールベース:2580mm
エンジン:2.7Lガソリン(2TR-FE型)
駆動方式:4WD(パートタイム式4WD)
最高出力:163ps(120kW)
最大トルク:246Nm
ホイールサイズから見える「理想」と「現実」
もう一見して、ランドクルーザー”FJ”のデザインの元ネタがCompact Cruiser EVであることがわかる。
並べて見よう。
ホイールサイズから両車のサイズを比べてると……。

Compact Cruiser EVは諸元が発表されていないし、タイヤサイズも公式未発表だが、各種推定では18インチ、おそらく245/70R18くらいだろう。対するランドクルーザー”FJ”は、265/60R18。タイヤ外径で比較すると
Compact Cruiser EV:約800mm
ランドクルーザー”FJ”:約775mm
となる。
ここから推測するとCompact Cruiser EVの全長はランドクルーザー”FJ”より少し短い4350mmくらいだろう。


Compact Cruiser EVは「小さいボディに大きなタイヤ」なわけだ。これが、玩具感、道具感、塊感、コンセプトカーらしい誇張な感じ……ある意味チョロQ感が生んでいたわけだ。
一方の量販モデルとなるランドクルーザー”FJ”は、それでもタイヤは十分に大きいが、室内空間と荷室、オフロード性能、法規、乗降性、そしてコストなどを成立させるために、若干プロポーションが常識的になっている。
つまり、Compact Cruiser EVは「小型ランクルの理想」を追い求め、ランドクルーザー”FJ”は、それを「現実に売れるサイズへ着地させた量産版」と言える。コンセプトカーであるCompact Cruiser EVの方が漫画的でカッコいいのだが、ランドクルーザー”FJ”はその良さを十分に生かして量産化に漕ぎ着けたと評価できる。
ランクルブランドを若返らせる存在

興味深いのは、Compact Cruiser EVがBEVコンセプトだったのに対し、ランドクルーザー”FJ”はエンジン車として登場した点だ。トヨタはCompact Cruiser EVで“デザインと世界観”への反応を確認し、それをよりグローバルに成立しやすいパッケージへ翻訳したとも考えられる。
大きくなり、高級・高価になったランドクルーザー300/250、本格オフローダーとしての高い評価をキープするランドクルーザー70もサイズは大きい(全長4890mm)。ここにランドクルーザー”FJ”を投入して、ランクルブランドをカジュアルでポップ、そしてアフォーダブルへと引き戻そうとしているのではないだろうか。ランクルブランドを若返らせる……ここに、Compact Cruiser EVの軽快な冒険感がランドクルーザー”FJ”に引き継がれている。
