シリーズ全車に共通する魅力

2026年型Z900RSに設定されたBlack Ball Editionは、構成的にはスタンダードという位置づけ。

いいところを突いているなあ……。2017年末のデビュー直後にスタンダードを初めて乗ったときと同じく、 Black Ball Edition、SE、CAFEの3台を乗り比べた今回の試乗で、僕はカワサキZ900RSシリーズに対してそんな印象を抱いた。

従来は派手さを強調していたCAFEだが、2026年型は1970年代初頭のマッハシリーズをモチーフとする、シックなカラーを採用。

このシリーズの何がいいって、一番の魅力は、1970~1980年代の空冷Z系との共通部品は皆無なのに、1970~1980年代の空冷Z系に通じる重厚にして爽快なフィーリングが味わえることだろう。

誤解を恐れずに表現するなら、頑張って高回転域を使ったり峠道を攻めたりしなくても、普通にアクセルを開けて普通に走っているだけで、このシリーズはかなりの充実感が得られるのだ。

上級仕様となるSEのボディカラーは、伝統のファイヤーボール。

それに加えて、現代的でありながら往年の空冷Z系の特徴を取り入れたデザイン、今となっては貴重な指針式2連メーター、フレンドリーで日常域を重視したハンドリング、荷物の積載時に重宝する片側2点ずつのフックなども、Z900RSシリーズならではの魅力である。

2026年型で大幅刷新が行われた水冷並列4気筒エンジンは、シリーズ全車に共通。最高出力は116PS/9300rpmで、最大トルクは10kgf・m/7700rpm。

そんなZ900RSシリーズを購入するとなったら、多くの人の悩みの種になるのがどのモデルを選択するか。

もっとも世の中のZ900RSシリーズのオーナーは、ボディカラーで選んだ人が少なくないという説があるけれど、それはさておくとして、以下の文章では完全な同条件、ストリートとサーキットで比較した3車の印象を記してみたい。

Z900RS Black Ball Edition……1,529,000円

オーナーが読んだら気を悪くしそうなので、先にスミマセンとあやまっておくが、2025年型以前のスタンダードとSEの差は歴然としていた。

どんなライダーがどんな場面で乗っても、オーリンズ製リアショックと専用セッティングのフロントフォーク、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー+ディスクを装備するSEのほうに好感を抱くだろうし、 スタンダード+22万円でこの性能が手に入るなら安いものだと個人的には思っていた。

ところが2026年型の Black Ball Editionに乗った僕は、エンジン特性とライポジを改善した効果なのか、これでいいじゃないか?という印象を抱いたのだ。もっとも、エンジン特性とライポジの改善は2026年型SEも同様だが、2台の乗り味の差異は2025年型以前より縮んでいる気がしないでもない。

しかもSEがGPS対応型ドライブレコーダーとUSB電源ソケットを導入したため、2026年型の2台の価格差は30万8000円に広がったのである。

となれば、無理をしてSEを買う必要はない……のかもしれない。もちろん、アフターマーケットパーツを使って足まわりを自分好みに仕上げたいDIY派や、黒に統一されたの質感に魅力を感じる人にとっては、 Black Ball Editionがベストチョイスになるだろう。

Z900RS CAFE……1,540,000円

他2機種とは異なるCAFEの特徴は、ビキニカウル、低くてワイドなハンドル、シングル風のシート(820mmのシート高は2026年型SEと同じだが、乗車中の着座位置はカフェのほうがやや高い)、前後ショックのセッティング(フロントフォークのダンパーは専用設計)、他の兄弟車とは方向性が異なるボディカラーなど。

ストリートの走行写真で着用したジャケットは、カワサキプラザとIXONのコラボモデルであるM-NIGHT WP A。

ではそんなCAFEがどんなライダーに向いているのかと言うと、それはもちろんカフェレーサーと呼ばれた1970年代以前のカスタムバイクに興味を抱いている人、あるいは、高速巡航での快適性を重視する人だろう。

ただし Black Ball Edition(スタンダード)と比較するなら、このモデルは1ランク上のスポーツライディングが楽しめるのだ。具体的な話をすると、スポーティなライディングポジションや前後ショックのセッティングの効果で、コーナーへの進入ではフロントまわりの接地感が得やすいし、コーナーの中盤~後半ではなかなかの旋回性が実感できる。

もっとも、攻めるような走りをした際に感じる懐の深さはSEに及ばないのだけれど、ネオクラシック系でありながらスポーツ性を盛り込んだCAFEのライディングフィールに、惹かれるライダーは少なくないはずだ。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

あくまでも他2機種と比較しての話だが、乗車中の着座位置が高めでハンドルが低いCAFEのライディングポジションは、ちょっと戦闘的な雰囲気。ライダーによっては、ステップを後方/上方に移設したくなりそうだ。

ディティール解説

万全ではないものの、適度な防風効果が実感できるビキニカウルはCAFEならではの装備。
専用設計のハンドルバーは、 他2機種と比較すると低くてワイド。なお2026年型Z900RSシリーズのスイッチボックスは、従来型とは別物で、左側にはクルーズコントロール用のボタンが備わる。
シートは往年のカフェレーサーを思わせる雰囲気。シングル然とした構造だが、タンデムライディングは可能。
前後ブレーキは Black Ball Editionと共通。フロントはφ300mmディスク+トキコ対向式4ピストンキャリパーで、リアはΦ250mmディスク+ニッシン片押し式シングルピストンキャリパー
ほぼ水平配置のリアショックはBlack Ball Editionと同じ部品。ただし、プリロードとダンパーの標準設定は異なる。φ41mm倒立フォークも多くの部品を共有しているが、ダンパーは専用設計で、セッティングも別物。

Z900RS SE……1,837,000円

前述したように、2026年型Z900RSのBlack Ball EditionとSEの乗り味の差異は、従来型より縮んだような気がする。とはいえ、それでもSEに乗ると、やっぱりZ900RSシリーズのベストはこの仕様じゃないかと思う。

ちなみに世の中には、“自分の技量ではオーリンズやブレンボの美点が察知できない”と言う人がいるものの、同条件で比較したら誰もがSEの上質さ、安定感の高さや乗り心地の良さに感心することになるに違いない。

だから予算に余裕があるなら、SEを購入すれば間違いないのだが……。Z900RSシリーズには、オーナーが自分好みのカスタムを楽しむ“素材”としての資質も備わっているのだ。そういう視点で見るなら、カスタムの余地はあるものの、ノーマル状態でひとつの完成形に到達しているSEは、少々面白みに欠けるのかもしれない。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

諸元表に記されたシート高は820mmだが、SEの乗車感と足つき性は810mmのBlack Ball Editionとほとんど同じ。なお2026年型のBlack Ball EditionとSEは、従来型に対してグリップ位置が38mm低く、50mm狭くなる、新設計のハンドルバーを採用。

ディティール解説

シリーズ全車に共通のLEDヘッドライトは6室構造。SEはアンダーブラケット前部とリアフェンダー後部に、GPS対応型ドライブレコーダーのカメラを設置。
ブラックアウトを徹底したBlack Ball Editionとは異なり、SEは2026年型でも各部にメッキ仕上げ・アルミ地のパーツを採用。ハンドル右側に備わるUSB電源は、SEならではの装備。
タックロール部にウレタンを充填したシートはBlack Ball Editionと共通。
フロントブレーキを構成する、φ300mmディスクと対向式4ピストンキャリパーはブレンボ製。KYB製φ41mm倒立式フォークは一部のパーツと寸法を他2機種と共有しているが、スプリングとダンパー、ボトムピースは専用設計。
リモート式プリロードアジャスターを装備するリアショックは、オーリンズS46。この写真では見えないが、同社のロゴが入ったガードプレートもSEならではの装備だ。
Φ250mmディスク+ニッシン片押し式シングルピストンキャリパーのリアブレーキは、シリーズ全車に共通。

主要諸元

車名:Z900RS(Z900RS SE)【Z900RS CAFE】
型式:8BL-ZR902A【8BL-ZR902E】
全長×全幅×全高:2100mm×815mm×1135mm  【2100mm×845mm×1190mm】
軸間距離:1465mm 
最低地上高:135mm (140mm)【135mm】
シート高:810mm(820mm)【820mm】 
キャスター/トレール:25°/98mm 
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒 
弁形式:DOHC4バルブ 
総排気量:948cc 
内径×行程:73.4mm×56mm 
圧縮比:11.8 
最高出力:116ps/9300rpm 
最大トルク:10kgf・m/7700rpm 
始動方式:セルフスターター 
点火方式:フルトランジスタ 
潤滑方式:ウェットサンプ 
燃料供給方式:フューエルインジェクション 
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン 
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング 
ギアレシオ 
 1速:2.600 
 2速:1.950 
 3速:1.600 
 4速:1.389 
 5速:1.217 
 6速:1.069 
1・2次減速比:1.627・2.867 
フレーム形式:ダイヤモンド 
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm 
懸架方式後:ホリゾンタルバックリンク式モノショック 
タイヤサイズ前:120/70ZR17 
タイヤサイズ後:180/55ZR17 
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク 
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク 
車両重量:216kg(217kg)【218kg】 
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 
燃料タンク容量:17L 
乗車定員:2名 
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:20.5km/L