340ps級リアモーターを搭載、GTIの伝統は「FF」から「走る楽しさ」へ進化する
フォルクスワーゲン(以下VW)が開発を進める次世代GTIが、従来の常識を覆すモデルとなる可能性が高まってきた。

ドイツで目撃された開発車両は、一見すると改良型「ID.3」に見える。しかし詳細を見ると、大径ホイールや専用バンパー、スポーティなサイドスカートなど、通常モデルとは異なる専用装備を備えていることが確認できる。

最大の注目は、その中身である。これまでGTIは1976年の初代ゴルフGTI以来、一貫して前輪駆動を採用してきた。しかし次世代EVでは、その伝統を大きく転換し、後輪駆動レイアウトが採用される見込みだ。
ベースとなるのは現行「ID.3 GTX」で、リアアクスルに高出力モーターを搭載するレイアウトを採用。開発中のGTIはさらに出力を引き上げ、最高出力は約340psに達する可能性がある。
これまでGTIと言えば、軽快なFFハンドリングと鋭いターンイン性能が最大の魅力だった。一方、新型ではリアモーターならではの強力なトラクションを武器に、ドリフトを含めた新しい走りを実現する可能性がある。まさにGTI史上最大の転換点と言えるだろう。
エクステリアは、改良型ID.3をベースとしながら、専用デザインへ変更される見込みだ。フロントバンパーは開口部を拡大し、専用エアロパーツを装着。GTI伝統の赤いアクセントラインも採用されるとみられるが、テスト車両ではカモフラージュによって隠されている。
インテリアにもGTI専用装備が与えられる見込みで、スポーツシートや専用ステアリング、GTI専用表示を備えたデジタルメーター、スポーツモード専用UIなどが採用される可能性が高い。
興味深いのは、リアブレーキにドラムブレーキを採用するとみられる点だ。スポーツモデルにドラムブレーキという組み合わせは意外に映るが、EVでは回生ブレーキの使用頻度が高く、リアブレーキへの負荷は小さい。耐久性やコスト、空力性能の面でもメリットがあり、近年のEVでは採用例が増えている。つまり、単純なコストダウンではなく、EVならではの合理的な選択というわけだ。
GTIという名称は本来「Grand Touring Injection」を意味する。しかしEV時代となった今、「Injection」は存在しない。それでもVWはGTIというブランドを残そうとしている。
これは単に名前を受け継ぐだけではない。GTIが40年以上築いてきた「軽快で楽しいホットハッチ」という価値を、電動化時代にも継承するという強い意思表示とも受け取れる。
近年、ホットハッチ市場では電動化が急速に進みつつある。ルノーは「5 Turbo 3E」、アルピーヌは「A290」、プジョーは「e-208 GTI」の投入が噂されるなど、新世代EVホットハッチが続々と登場する見込みだ。
そうした中で、VWの次世代GTIは単なるEVではなく、「GTI」の名にふさわしいドライビングプレジャーを実現できるかが最大の焦点となる。
正式発表は2026年後半にも行なわれる可能性が高い。もしこのモデルがGTIらしい軽快なハンドリングと走る楽しさをEVでも再現できれば、ホットハッチというカテゴリーそのものの新たな基準を打ち立てる一台となるだろう。










