1/1000mm単位の加工が、高圧縮RB26を生み出す
耐久性もレスポンスも、この加工精度から始まる!
前回は、松田次生選手のBCNR33からRB26DETTを降ろして分解し、長年悩まされてきた白煙トラブルの原因を検証した。

ボディの走行距離は20万kmを超え、途中で載せ替えられたBNR34ニュル用ベースのRB26も10万km以上を走破。さらに数多くのサーキット走行を重ねてきただけに、エンジン内部の疲労は想像以上に深刻なものだった。

白煙を発生させていた最大の原因は、エキゾースト側バルブガイドの摩耗だ。バルブの傘を手で持って左右に揺すると、「カタカタ」と音を立てながら1mm以上も動くほどのガタが発生していた。
ここまでクリアランスが広がると、バルブステムシールが正常に機能せず、エンジンオイルがバルブを伝って燃焼室へ侵入する。そのオイルが燃焼することで、サーキットでの全開走行時に白煙を吹いていたと考えられる。


ピストンとシリンダーも限界に近い状態だった。ピストンスカートは大きく摩耗し、表面に残るはずの切削痕がほとんど消失。シリンダー壁面もホーニング痕が失われ、一部は変色するほど使い込まれていた。
さらに、クランクメタルの偏摩耗や、インテークバルブ1本のコッターが正しく組み付けられていなかったことも判明。重大なエンジントラブルが起きる前に分解できたのは、不幸中の幸いだったと言えるだろう。
こうして現状確認を終えたRB26のシリンダーヘッドとブロックは、精密な内燃機加工を行うJUNマシンショップへ持ち込まれた。今回の目的は、白煙の原因を根本から解消するだけでなく、HKS製2.8Lキットを組み込んだ高圧縮仕様へアップデートし、街乗りでの扱いやすさとサーキットでの速さを両立させることにある。
まずシリンダーヘッドでは、摩耗した純正バルブガイドを耐久性に優れる鋳鉄製へ打ち替えた。バルブは深い傷が入っていた1本のみを新品へ交換し、状態に問題のないものは、予算とのバランスを考慮して再使用する。

取材時にはバルブガイドの交換が完了し、バルブシートカットとバルブステムエンドの研磨が進められていた。

バルブシートとは、バルブヘッドが接触して燃焼室を密閉する部分だ。この接触面を専用のバルブシートカッターで3段階の角度に切削し、滑らかな曲面を形成していく。加工後のシートは、施工前と比べて段差が整えられ、指で触れても滑らかな形状になっていることが分かる。
1カ所あたりの作業時間は約5分だが、RB26は吸排気合わせて24バルブ。すべてを同じ精度で仕上げるため、見た目以上に時間と集中力を要する工程となる。



再使用するバルブについても、そのまま組み付けるわけではない。専用のバルブ研磨機を使い、バルブステムエンドの当たり面を研磨して面出しを実施。加工前は荒れていた接触面も、研磨後は新品のように均一な状態へと回復する。
その後、加工したバルブシートとバルブを1本ずつ摺り合わせ、密着状態を確認していく。バルブを再使用することでコストを抑えながらも、密閉性や耐久性に妥協しない仕上げが施されるわけだ。

ヘッド加工の大半を担うのが、「フライス」と呼ばれる工作機械である。プログラム制御によって1/1000mm単位の精密な切削が可能。今後はこの機械を使い、ウォーターラインや燃焼室、ヘッド上面の加工を進めていく。
水回りでは、燃焼室周辺の温度を下げるためにウォーターラインを加工。さらに、ウォータージャケット内にエア抜き穴を設けることで、ヘッド内部に気泡が滞留するキャビテーションを抑え、オーバーヒートのリスクを低減させる。
続いて、燃焼室の形状と容積を6気筒すべて均一に整える。気筒ごとの容積差は圧縮比や燃焼状態のバラつきにつながるため、高圧縮仕様では特に重要な工程だ。最後にヘッド面研を行い、燃焼室容積を調整して目標とする圧縮比へ近付けていく。


一方、シリンダーブロックは専用台座に固定し、各シリンダーの位置を正確に計測してからボーリング加工を行う。
ここで基準となるのは、カタログ上のピストン寸法ではなく、実際に組み込むHKS製鍛造ピストンの実測値だ。ピストンは製造公差によってわずかに寸法が異なるため、1個ずつ測定した上で、指定されたピストンクリアランスになるようシリンダーを精密に削っていく。

ボーリング後は、ホーニングマシンによる仕上げ工程へ移る。シリンダー壁面にクロスハッチと呼ばれる細かな交差溝を形成し、エンジンオイルを保持できる表面状態を作り上げる。
加工時にはダミーヘッドをヘッドボルトで締め付け、実際にシリンダーヘッドを組み付けたときと同じ応力をブロックに与える。ヘッド締結時に生じるシリンダーのわずかな変形まで再現した状態でホーニングすることで、完成後の真円度やピストンクリアランスを高精度に保てるのだ。

シリンダーの加工が終わった後は、ブロック上面の面研を行い、JUNマシンショップでの工程は完了となる。こうしてヘッドとブロックの精度を徹底的に整えた上で、再びカーショップポルシェへ戻され、HKS製RB26改2.8L STEP2 BCDキットを組み込んでいく。

最終目標は、松田選手自身のドライブによる筑波サーキット1分切り。JUNマシンショップの精密加工が、その挑戦を支える土台となる。次回はいよいよカーショップポルシェでのエンジン組み立てへと舞台を移し、新たなRB26の全貌が明らかになっていく。
●取材協力:カーショップポルシェ 山梨県南アルプス市東南湖952-2 TEL:055-284-0813/エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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