Cayenne Electric

第一印象は意外とコンパクト

カイエンターボ エレクトリック
カイエンターボ エレクトリック

新型「カイエン エレクトリック」をポルシェの聖地、千葉・木更津のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)で試乗した。4代目でもSUV、クーペというボディタイプ2種が用意され、現時点ではそれぞれ動力性能が異なる3グレードがラインナップされる。「カイエン エレクトリック」(通常時408PS、ローンチコントロール時442PS、以下同)、「カイエンS エレクトリック」(544PS、666PS)、「カイエンターボ エレクトリック」(857PS、1156PS)の全3グレードで駆動方式はAWDを採用する。

新型カイエンの第一印象は意外とコンパクトだった。しかし実際のボディサイズ(SUV)は全長4990mm、全幅1980mm、全高1675(クーペ=1650)mmと先代と較べて60mm長く、25mm低い。ホイールベースも130mm延長されて3025mmとなっている。プラットフォームはBEVとなって生まれ変わったマカンと同じく、フル電動車(BEV)用のPPE改良版を採用している。アクスル位置の自由度が高いBEVのメリットを最大限活かして前後オーバーハングを短くしたのはマカンと同じ手法だが、ともあれ全長を5m以下に収めた。

モータースポーツで培った空力思想

コンパクトに感じたのはデザインの巧みさがあるかもしれない。エクステリアデザインのテーマはクリーン、ピュア、ワイドスタンスというだけあって、BEVという素地を活かしたミニマルな面構成と低重心を感じさせる雰囲気を纏う。

フロントエアフラップおよびリヤスポイラーなど可変エアロパーツが全車で標準されるが、ターボにはさらにリヤアクティブエアロブレードが採用される。リヤバンパー左右に縦に内蔵された可変エアロパーツは、55km/h以上になるとせり出し、35km/h以下で格納される。これはル・マンを制したレーシングカー、917のロングテールなどモータースポーツで培った空力思想を市販車へ応用したもので、高速安定性向上のほか航続距離延長、空気抵抗低減を実現するという。

ドアを開けると室内もまさに新世代を感じさせるインテリアが広がっていた。フローディスプレイと呼ばれる新開発の未来的なカーブドセンターディスプレイが印象的だ。その手前のセンターコンソールにはパームレストが配置される。右ハンドルの場合、ここに左手を置いて操作すると、走行中の揺れる車内でもタッチパネル内のインフォテインメントの操作がしやすいことが確認できた。

スピーカーから聞こえる勇ましいエンジン音

試乗車として用意されたのは最高グレードの「カイエンターボ エレクトリック」だった。まずはハンドリングトラックで、高速域のシャシー性能を確かめる。ニュルブルクリンクのカルーセルや、ラグナセカのコークスクリューなど、世界の有名サーキットの名物コーナーが堪能できる1周約2.1kmのショートコースだ。一般道とは異なる平滑路面の短時間試乗だったため、高性能と快適性を試すことはできるが、ユーザビリティやバーサティリティといった一般道試乗で評価することが重要な項目はまた別の機会に譲らねばならない。

ステアリング左脇のセレクタレバーをDレンジに入れて走り出す。5種類のドライビングモードは「オフロード」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」。ステアリング右スポーク下のダイヤルで変更するのは、「911」などと同じポルシェスタイルだ。ハンドリングトラックではオフロード以外の4種を試す。もちろんノーマルモードでも十分なパワーを発揮するのは、通常時857PSもあるのだから当然と言えば当然だ。スポーツモードに変更すると勇ましいエンジン音がスピーカーから聞こえ、足回りが引き締められる。全グレードでアダプティブエアサスペンションが装備されており車高も下がる。

エンジン音と言ってもBEVなので当然、擬似的な音をスピーカーから鳴らしているに過ぎないが、これまでさまざまな車種でこの手の効果音を聞いてきた経験から言えば、最新モデルだけあってもっとも違和感がなかった。

正直に言うと先導車含む4台のカルガモ走行によるハンドリングトラック試乗で試せることは少なかく、最高速の260km/hは試せなかった。260km/hというとポルシェにしては控えめと思われるかもしれないが、これは1速ギアのためだ。同じBEVでもタイカンターボGT(1108PS)は2速ギアを備え、最高速は305km/hに達する。ちなみにガソリン車の先代カイエンターボGTの最高速も305km/hである。

ワープといえる感覚の加速

カイエンターボ エレクトリック
カイエンターボ エレクトリック

ダイナミックエリアという大きなジムカーナ場のような広場で試したフル加速とフルブレーキ、そしてスラロームが私のカイエン エレクトリックに対する評価を決定づけた。まず、2.5tのボディを2.5秒で100km/hまで加速させる凄まじい加速を発揮するので不用意なアクセル操作は禁物だ。

1156PSを発揮するローンチコントロールに特別な操作は必要ない。いわゆるストール発進と呼ばれる方法で、ブレーキペダルを踏み込んだ停止状態でアクセルを床まで踏み込んだら発射準備完了だ。ブレーキペダルから素早く足を離せば2.5秒で100km/hまで加速する。0-100km/h加速はさしずめワープという言葉が相応しい。

BEVにとって重要な要素となる回生ブレーキでも600kWという強力な出力を示す。これはコンフォートモード時の630kW(857PS)に匹敵する大出力で、この数値は2019年から参戦するフォーミュラEマシン「99X」に匹敵するが、一般道においては約97%の減速を回生ブレーキのみでカバーするという。

ブレーキングは回生ブレーキオフのコンフォートとオンのスポーツプラスで制動力が明確に異なった。0-100-0km/hテストは、回数が4回と限られていたため断言はできないが、3モード試してスポーツプラスが最も制動距離が短かった。なお従来の摩擦ブレーキでも「911ターボS」級のフロント420mm、リヤ370mmの大径ブレーキローター(PCCBの場合フロント440mm、リヤ410mm)を装備する。

ロールをしない凄まじい違和感

カイエンターボ エレクトリック

前述のとおり全車アダプティブエアサスペンションが装備されるが、中位グレードのSと最高グレードのターボには、さらにアクティブサスペンションのポルシェアクティブライドが装備される。「パナメーラ」や「タイカン」にも装備されるポルシェアクティブライドは、積極的なピッチ・ロール制御を行い、可能な限りボディを水平に保つ装置だ。スポーツプラスモードではバイクのように内側にバンクするコーナリングが可能になる。

実際にスラロームをしてみると凄まじい違和感を感じる。スポーツモードあるいはスポーツプラスモードにすることで、サーキットもこなせるシャシー性能を発揮し、ブレーキング時にはノーズダイブも軽減される。一転してモードをコンフォートに切り替えると、フラットな乗り心地をもたらす。やはりロールは最小限だが、大きなスキール音と共に曲がらなくなる。

フロアにバッテリーを敷き詰めるBEVとなったことで重心高は83mm低下しており、スポーティな素地を持つが、アクティブライドを使うと俄然クルマの動きがイキイキとして活発になる。ハンドリング面では、ポルシェがこれまで培ってきたブランドの方向性が感じられた。

さらにリアアクスルステアリング(最大5度)を装備することで、最小回転半径は5.9mから5.4mに縮小し、狭い駐車場における取り回しが向上する。80km/h以上の高速走行時には安定性も増す。電子制御LSDのようなPTV Plusも装備される。

オフロードで発揮される緻密な制御

オフロードコースで試すカイエン エレクトリック
オフロードコースで試すカイエン エレクトリック

最後にオフロードコースでもカイエン エレクトリックの高性能を確認できた。インストラクターの運転ではあるが、バンク角22度の斜面を大きく傾きながら前進、あるいは3輪しか接地しないような状況でも各タイヤに駆動を伝える。22度の急な斜面をしっかりとタイヤのグリップを最大限に使ってゆっくり上り、下りる。そういったオフロードの基本も同乗で体験できた。

インストラクター曰く、電動アクスルの方が制御が緻密でオフロードでコントロールしやすいという。カイエンは舗装路だけでなくオフロードにおいてもポルシェらしいスポーツ性を有していると再確認させてくれた。

確かに動力性能は凄まじい。ポルシェ史上最高を謳うだけのことはある。この凄まじい性能を持つSUVが、一般道でどのような快適な移動をもたらすのか、充電の利便性も含めてチェックする日が待ち遠しい。

PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)、GENROQ、ポルシェジャパン

SPECIFICATIONS

ポルシェ カイエンターボ エレクトリック

ボディサイズ:全長4985 全幅1980 全高1674mm
ホイールベース:3023mm
車両重量:2645kg(DIN)
電気モータータイプ:永久磁石同期モーター
最高出力:850kW(1156PS※ローンチコントロール時)
最大トルク:1500Nm
バッテリー:113.0kWh
トランスミッション:1速AT
駆動方式:4WD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/45R21 後315/40R21
最高速度:260km/h
0→100km/h加速:2.5秒
航続距離(WLTP):564〜624km
車両本体価格:2101万円

問い合わせ
ポルシェ コンタクト
https://www.porsche.com/japan/jp/

カイエン エレクトリックのプレゼンテーションを行うポルシェジャパン イモー・ブッシュマン社長。

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