ギャランと一緒にNIPPONへ。
夢の続きを走り続けるVR-4オーナー!
8世代に渡って続いた三菱ギャランの歴史の中で、スポーツセダンとしてのイメージを強く印象付けたのが、6代目モデルに追加されたハイパフォーマンス4WDのVR-4だ。WRCで活躍し、後に登場するランサーエボリューションの礎にもなった名グレードである。
1996年に発売された最終モデルにもVR-4は設定され、6A13型V6ツインターボは280psを発揮。走りにこだわるセダン好きから高い支持を集めた。

そんなギャランVR-4のオーナーが、ニュージーランド出身で現在は神奈川県に住むアーロン・スチュワートさんだ。日本に来てから中古車を購入したのかと思いきや、なんとニュージーランドで手に入れた愛車を、わざわざ日本へ持ち込んだというから驚かされる。
「ニュージーランドでもランエボやGT-Rが人気なんですけど、私は人と違ったクルマが欲しかったんです。ギャランVR-4は4WDでターボ、しかもマニュアルと、求めていた条件をすべて満たしていました。数年働いて貯金をして、2003年にようやく個人売買で購入することができました」。

それからチューニングをスタートさせ、ニュージーランド屈指の歴史を持つメレメレ・ドラッグウェイに通っては、ドラッグレースにも参加していたというアーロンさん。そんな彼にとって悩みの種だったのが、パーツの入手だった。
当時はチューニングパーツのほとんどを日本から取り寄せていたため、高額な送料や税金に加え、長い納期も覚悟しなければならなかったのだ。

「2011年の夏に初めて旅行で日本を訪れたんですが、大黒PAなど、雑誌やYouTubeで見てきた場所を実際に自分の目で見ることができて感激しました。そして帰りの飛行機の中で、いつか自分のクルマで日本中を走り回ってみたいという突飛なアイデアが浮かんだんです。
考えれば考えるほど実現可能に思えてきて、そこから数年かけて計画を練りました。2016年に島根県の小学校と中学校で英語を教えるALT(外国語指導助手)の仕事を得て、いよいよ夢の実現に向けて動き出したのですが、クルマの輸送や登録は思ったほど順調には進みませんでした」。
大学で日本語を勉強していたアーロンさんだったが、輸入や登録に関する法律用語は難しく、必要とされる書類や手続きも非常に煩雑だった。しかも、すべてを一人で何とかしようとしていたため、心が折れかけたこともあったという。
そんな彼の救世主となったのが、広島県安芸高田市のチューニングショップ、タカタテクノサービスだった。

「私のギャランはニュージーランドにいた時から改造してありましたから、書類を揃えるだけでなく、車検に通る状態にする必要もありました。タカタテクノサービスの佐々木さんは、言葉の壁があったにもかかわらず親身になって対応してくれて、彼の助けがなければ私の夢は途中で崩れ去っていたと思います。本当に感謝してもしきれません」。

ニュージーランドを出てから約半年。数えきれないほどの調査とメールのやり取りを重ね、ついに日本の公道を走れる状態となったアーロンさんのギャラン。
久しぶりに味わう愛車の乗り味は、乗り降りしにくく、音もうるさい。クラッチもサスペンションも硬かった。それでも、そのすべてが最高の感触だったという。

ノーマルで最高出力280psを発揮する2.5L・V6ツインターボの6A13型エンジン。チューニングは、ニュージーランドでJDM系チューナーとして名の知られた「JTune(ジェイチューン)」に依頼している。
タービンはノーマルのまま、カスタムメイドでインタークーラーパイピングを製作。マインズのVX-ROMで燃調をリセッティングするとともに、ブーストアップも施している。駆動系にはOS技研のツインプレートクラッチとフライホイール、さらにプッシュ・プル変換キットを装備する。


インタークーラーにはR34用のARC製を流用。アペックスのエアフィルターを組み合わせたワンオフのコールドエアボックスも備えている。

トラストのランサーエボリューションVI用アルミラジエターとHKSのファンコントローラーは、日本に来てからタカタテクノサービスで装着。さらにトラストのブリーザータンクやオイルクーラーも追加し、熱対策も抜かりない。

ボルクレーシングTE37は、ギャランを購入した後、すぐに日本へ注文した思い出のパーツだ。将来的にブレンボブレーキを装着することを見越して、サイズは8.5J×19を選択した。
「カタログに小さく、確かガンメタルチタングレーのような表記だったと思いますが、特別注文色が載っているのを見つけてオーダーしました。ニュージーランドに届くまで数カ月は待たなければなりませんでしたが、イメージ通りで今でも気に入っています」。

ブレーキは、フロントにランエボX、リヤにランエボVIの純正ブレンボキャリパーを移植。プロジェクトμのSCR-PROローターは、フロント350φ、リヤ300φをセットする。パッドも同じくプロジェクトμのHC+を使用し、制動力を強化している。
ちなみにリヤのディスクは、日本を旅行した際に東京オートサロンで購入し、なんと機内持ち込み手荷物としてニュージーランドまで持ち帰ったものだ。


ナルディのステアリングやマインズのシフトノブを装着するインテリアも、走りへのこだわりが満載だ。
インパネ上部とピラーマウントされた追加メーターはデフィのアドバンスBFで、ブースト圧、燃圧、油圧、油温、水温、排気温を確認できる。センターコンソールにはデフィのコントロールユニットに加え、アペックスのAVC-Rブーストコントローラーも備えている。

シートにはブリッドのフルバケットシート、ZETAⅢを装着。これは日本に来てから取り付けたものだ。
実は当初、ブリッドのシートレールにレカロのシートを組み合わせていたため、車検対策としてブランドを揃える必要があった。
そこでアーロンさんは、「前から欲しかったブリッドのシートを買う正当な理由ができた」と前向きに捉え、Amazonで注文。送料無料でショップへ直接配送される便利さに、思わず涙が出たそうだ。

日本に来てからは、赤城山や箱根ターンパイク、首都高、湾岸線、富士スピードウェイ、筑波サーキットなど、思いつく限りの“聖地”を片っ端から巡礼しているアーロンさん。
走りに行った峠のステッカーも、まだまだ増えていく予定だ。


サイドスカートのエクステンションは、ニュージーランドにいた頃にR34用のニスモスタイルとして販売されていたものを加工して装着。日本に来てからは、車検に通すため、同世代のVR-4タイプSに装備されていたフェンダーフレアを見つけて取り付けている。マフラーはアペックスのチタン製だ。

「島根県での生活は本当に素晴らしいものでしたが、私がやりたいと願っていたことのほとんどは関東地方にありましたので、神奈川県に引っ越しました。ギャランで横浜ベイブリッジを渡り、水平線と大黒PAを見下ろしながら運転していたら、自然と笑顔がこぼれました(笑)。何年も前に思いついた、あの突拍子もないアイデアが、ついに実現したのです。でも、旅は終わっていません。まだまだ走らなければならない道、訪れなければならない場所がたくさんあるのですから」。

ニュージーランドで購入した一台を日本へ持ち込み、苦労の末に公道復帰させたギャランVR-4。アーロンさんにとってこのクルマは、単なる愛車ではない。日本を走りたいという長年の夢を乗せ、今もなお走り続ける“夢の続きを走るための相棒”なのだ。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI


