セローオーナーがリアルに考える。|ヤマハ・セロー250ファイナルエディションの良いトコロ5つ・悪いトコロ5つ

ヤマハセロー250ファイナルエディション
2020年7月31日にラインオフした最後の1台をもって、35年という長い歴史に幕を下ろしたマウンテントレールの祖であるヤマハ・セロー250。そのファイナルエディションのアクセサリーパッケージ「ツーリングセロー」を手に入れた筆者が、あらためてSTDのセロー250に試乗しつつ、入手から半年の間に気付いた長所と短所をズバリ紹介しよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

悪いトコロその1:絶対制動力の低さに最初は戸惑う

いずれパッドを交換して制動力がどう変化するのかを試してみたい。

マウンテントレールという性格上、オンロードモデルよりも絶対制動力は低い。ブレーキレバーを強く握ると勢い良くフロントフォークが沈むので、かなり利いているように錯覚するが、実際の減速レベルはそれなりだ。キャンプ道具を満載にするとその傾向が顕著になるので要注意。なお、ABSは採用されていないが、ドライの舗装路面では相当強くレバーを握り込む、またはペダルを踏み込まないとロックしないので必要性を感じない。


悪いトコロその2:たったこれだけ? メーターの情報量の少なさ

情報量としては50ccのスクーター並み。軽量化のためとはいえ……。

あるのは速度計、積算計、時計、ツイントリップのみ。タコメーター(かつては診断モードで電圧計とともに呼び出すことができたとか)やギヤポジションインジケーターがないため、未だに「幻の6速」へシフトペダルをかき上げてしまう。また、燃費がいいとはいえ、燃料残量警告灯が突然点灯するのはどうしても心臓に悪い。


悪いトコロその3:身長175cm以上では窮屈に感じるライディングポジション

身長175cmの筆者が跨がると膝の曲がりが窮屈になる。

セローが誕生した1980年代から現在までの間に、日本人の平均身長は年代や性別にかかわらずグングン伸びているが、セローのライディングポジションは初代からほぼ変わらず。これが間口を拡げる要因になっているわけだが、一方で成人男性の平均よりほんの少し身長が高い175cmの私が乗ると、特に膝の曲がりが窮屈であり、またスタンディングではハンドルが低いと感じる。


悪いトコロその4:30kmで苦痛、泣きが入るほどのお尻の痛み

筆者のセローはSPIRALというブランドのハイシートに張り替えるも、防水ビニールが挿入されておらず……。

納車後、自宅までの30kmの移動で早くも坐骨エリアに鈍痛が発生した。膝の曲がりが窮屈なこともあって自然とシートの後方へ座りがちなのだが、後ろへ行くほどウレタンが薄くなるので痛みが発生しやすいようだ。座面が30mm高くなるツーリングシートがワイズギアのラインナップにあるが、防水ビニールが挿入されていないとのことで却下。現在は社外品のハイシートに張り替えているが、膝の曲がりは緩くなったものの、座面が狭いことのデメリットを感じている。また、着座位置が上がったことで、ウインドスクリーンの優秀な防風エリアからヘルメット上部がほんの少しはみ出してしまい、風切り音が発生するようになってしまったのは盲点だった。


悪いトコロその5:頭を悩ませるパンク時の対応

パンクしないことを祈るばかり。

セローは225時代の1997年にリアタイヤがチューブレスになって以来、フロントはチューブタイプ、リアはチューブレスとなっている。もしフロントがパンクした場合、穴の大きさにもよるが、ホイールを外してチューブを交換するよりも、液剤を注入するタイプのパンク修理剤を使う方がスピーディだ。ただし、チューブレスであるリアにこのパンク修理剤を使うと事後処理が面倒なので、穴にプラグを詰め込むタイプの修理キットが必要に。リアの方がパンク率が高いとはいえ、以上の理由からツーリングの際は修理剤と修理キットの両方を携行している。


結論:明らかに行動範囲が広がった!

これぐらいのキャンプ用品は余裕で積めてしまう。セロー恐るべし!

NC750Sからセローに乗り換えたことで、フェリーによる輸送費が下がったことは私にとって見逃せないメリットであり、付け加えると伊豆諸島へのフェリーによる輸送は250cc未満までなので、それも叶えられることに。さらに車検がない、タイヤが安価などランニングコストの安さも大きなメリットだ。これを執筆している2021年8月現在、まだ新車を扱っているショップはあるが、すでに乗り出し価格90万円というところもあるので、検討されている方は早めに動いた方が吉だ。


SEROW FINAL EDITION主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 2BK-DG31J/G3J9E
全長/全幅/全高 2,100mm/805mm/1,160mm
シート高 830mm
軸間距離 1,360mm
最低地上高 285mm
車両重量 133kg
燃料消費率 国土交通省届出値定地燃費値 48.4km/L(60km/h)2名乗車時
      WMTCモード値 38.7km/L(クラス2、サブクラス2-1)1名乗車時
原動機種類 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 249cm3
内径×行程 74.0mm×58.0mm
圧縮比 9.7:1
最高出力 14kW(20PS)/7,500r/min
最大トルク 20N・m(2.1kgf・m)/6,000r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.40L
燃料タンク容量 9.3L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、6.0Ah(10HR)/YTZ7S
1次減速比/2次減速比 3.083/3.200
クラッチ形式 湿式、多板
変速装置/変速方式 常時噛合式5速/リターン式
変速比 1速:2.846 2速:1.812 3速:1.318 4速:1.035 5速:0.821
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター/トレール 26°40′/ 105mm
タイヤサイズ(前/後) 2.75-21 45P(チューブタイプ)/120/80-18M/C 62P(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ/12V, 60/55W×1
乗車定員 2名

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大屋雄一