1,801ccの巨大エンジン、でも両足はべったり!BMW R18Bドイツ試乗|アウトバーン&アルプス越えも視野に!

BMW R18B First Edition
ドイツ・フランクフルトにて開催されたBMW Motorradのメディア向け試乗会で、ニューモデル『R18B(アール・エイティーン・ビー)』に乗ることができた。クルーザーセグメントへ猛攻仕掛ける同社の最新版は、スタイリッシュなバガーカスタムスタイルだ。

REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
PHOTO●BMW Motorrad
取材協力●BMW Motorrad JAPAN

BMW R18B First Edition……3,418,500円

 BMW Motorrad史上最大排気量となる1,801ccの“Big Boxer”を搭載したロー&ロングの車体に、大型フェアリングやパニアケースが備わり、堂々たる佇まい。全長は2,640mmに達し、車体重量は398kg。迫力のバガーカスタムスタイルとなっている。
 実車を見て感じるのは、この上ない上質感。深い光沢を持つ塗装が美しく、大きなフェアリングやラゲッジケースがあるから見せる面積が大きく、なおさらペイントの技術が際立つ。
 初回生産となるこのファーストエディションはピンストライプが施され、前後ホイールをコントラストカット、要所をクロームメッキ仕上げとし、この外装を見るだけでもう魅き込まれてしまう。そこには威厳と風格があり、BMWの伝統を感じてやまない。

シート高720mm、足つき性良好

 シート高は720mmと低く、身長175cmの筆者(青木タカオ)の場合、両足カカトまで地面にベッタリ届く。車体重量398kgとヘヴィな車体も、重心が低く両足で踏ん張りが効くため、引き起こしもさほど苦にならない。
 ハンドルは絞り込まれ、ライダーに近い位置にグリップがある。ステップはいわゆるミッドコントロールで、ライディングポジションはコンパクト。欧州仕様ではワイドペグが採用されるが、日本仕様ではフットボードを標準装備する。サイドスタンドの出し入れがしやすいことも報告しておきたい。

高級四輪車なみのインフォテインメントシステム

 コクピットには4つのアナログメーターと10.25インチものTFTカラーディスプレイが埋め込まれる。ライディングモードはROCK、ROLL、RAINの3種が用意され、設定は左グリップの付け根で回転するマルチコントローラーで直感的にできた。
 タンクコンソールにはスマートフォンを収めるストレージコンパートメントがあり、充電用のUSB端子ももちろん備わっている。試乗はフランクフルト近郊を約260km走るが、BMW Motorradのスタッフによって予めナビを設定したスマートフォンがリンケージされ、道に迷わないよう大型ディスプレイでナビ画面が表示されているからたいへん助かる。
 BMW Motorradコネクテッドアプリによって、電話発着や音楽再生などもディスプレイを見ながら容易にできる。欧州仕様ではエマージェンシーボタンがハンドル右に備わり、有事の際はGPSで測定した車両位置が緊急センターに自動連絡され、ロードサービスが駆けつけてくれるからなんとも心強い。日本へはまだ導入されていないサービスだが、目の当たりにすることができた。

軽快感と安定性を両立したツーリングシャシー

 キーレスイグニッションが採用され、スターターボタンを押すと同時に車体が左右へぐらり揺さぶられ、足もとでピストンが往復するボクサーツインが目覚めた。
 ギヤを1段に落とせば、クラッチレバーを握った状態からリリースしていくだけで巨体が前へと押し出され発進していく。乾式単板クラッチはラフなミートも許容し、ワイドなギヤ比設定のトランスミッションは無造作にシフトアップしても滑らかなトルクフィーリング。水平対向2気筒エンジンは最高出力67kW(91PS)/4750rpmを発揮するが、2000〜4000rpmで常に150Nm以上ものトルクを発生してくれる。

 石畳も多くスリッピーな欧州の旧市街地も、後輪のスリップを抑制するASC(オートマチックスタビリティコントロール)を備えるから安心してアクセルが開けられ、レバー操作で前後同時に制動するフルインテグラルABSのおかげで神経を尖らせずに済む。

 アウトバーンでのクルージング状態に入っても、余裕たっぷりだ。フェアリングのウインドプロテクション効果は絶大で、スクリーンがショート仕様となっていようとも整流効果が高く、乗り手に風圧を感じさせない。風の巻き込みもなく、ハイスピードでも車体は落ち着き払っている。

 速度域が上がってからの追い越しも、スロットルをひねればグワッと加速が力強い。アップライトな乗車姿勢と乗り心地の良さが相まって、ゆったりとした気分で高速巡航できる。もっともっと長い距離を、まだいくらでも走れそうだ。

 日本仕様で標準装備されるアクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、長距離を快適に走りたいクルーザーにこそ欠かせない装備であると、欧州の高速道路を走ればより強く実感できた。
 フェアリングに埋め込まれたレーダーセンサーが前車との車間距離を検知し、自動的に加減速してくれる。セット後も1km刻みあるいは10kmごとに車速の設定ができ、たいへん重宝する。

 『R18B』そして同時リリースとなった『R18トランスコンチネンタル』では、装備重量の増加に対応するため専用のツーリングシャシーが与えられ、メインフレームのバックボーン部やステアリングジオメトリーが『R18』および『R18クラシック』とは異なる。
 フレーム・バックボーンでは、鋼板を組み合わせることで高い剛性を確保。フロントフォークはライダー寄りに逆オフセットし、トレール量とキャスターアングルを最適化した。

 コーナーアプローチでの切れ込みや重さを解消しつつ、安定性も両立したハンドリングを実現しているから見事としか言いようがない。ワインディングも軽快にという、アルプス越えもする欧州のライダーの要望に応えている。
 なるほど、これがBMW流クルーザーだ。直進安定性やコンフォート性が高いのはもちろん、軽快感や旋回力も重量モデルながら疎かにしない。これまでクルーザーバイクに乗ってこなかったライダーも、きっと魅了されるに違いない。

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著者プロフィール

青木タカオ 近影

青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返…