THE WORLD OF BENTLEY Vol.03

ベントレーのフラッグシップ、フライングスパーが魅せる英国貴族の美意識 【ベントレー特集:03】

ベントレー フライングスパーとフライングスパー V8のツーショット
ベントレー フライングスパーとフライングスパー V8のツーショット
ベントレーのフラッグシップと呼べる存在がフライングスパーだ。5mを超える荘厳なボディを持つサルーンだが、その中にベントレーらしいスポーツ性も備える。ビジネスからプライベートまで、あらゆる場面で満足を得られる1台となるだろう。

Bentley Flying Spur×Flying Spur V8

ラグジュアリーサルーンの新時代を拓いたフライングスパー

ベントレー フライングスパーの走行シーン
ボディディメンションは全長5325×全幅1990×全高1490mmと、ハイエンドサルーンとして堂々たる体躯を誇るベントレー フライングスパー。3195mmのホイールベースは後席乗員の快適性に寄与している。

「天は二物を与え給うた」

ベントレー フライングスパーを初めて目にしたとき、私はそう直感した。モダンにしてクラシカル。エレガントにしてスポーティ。繊細にして大胆。そのいずれをも併せ持つフライングスパーのスタイリングは、ラグジュアリーサルーンの世界にまったく新しい時代が到来したことを高らかに告げていた。

ベントレーのデザイナーたちは、いかにしてこの二律背反を乗り越えたのだろうか?

クリスタルカットの輝きを内に秘めた大柄なヘッドライト、力強さのなかに繊細な作り込みが施されたフロントグリルのように、ベントレーらしい個性的なデザインモチーフが散りばめられているのは事実だが、それらを際立たせて、しかも常識的な価値観を打ち崩す新たなエネルギーをフライングスパーに与えたのは、上質さを徹底的に追求する職人気質であったり、美を生み出すためにただひたすら献身する芸術家のような審美眼であったように思う。

その結果としてフライングスパーは、スポーティ・ラグジュアリーサルーンとして完璧なプロポーションを手に入れるとともに、まるでジュエリーのような輝きとある種のオーラを身にまとうことに成功。自動車デザインの常識をはるかに越えて、あらゆる価値を包含したスタイリングがここに完成したのである。

贅を極めつつ快適性を最大限に考慮したインテリア

ベントレー フライングスパーのフロントシート
整然と配置されたスイッチや時計がベントレーらしい古典美も感じさせる。室内は厳選された素材を使って手作業によって仕上げられ、ドアを開けるとベントレーのエンブレムが路面に投影されてオーナーを迎える。アンビエント照明は好みのカラーを選択可能。

フライングスパーのキャビンもまた、既存の常識を打ち破ったデザイン性を備えている。

豪奢なインテリアはきらびやかなまでに美しいが、表面的な華やかさに陥ることもなければ、これ見よがしな浅ましさが透けて見えるわけでもない。ぜいたくさを極めながらも、ドライバーとパッセンジャーがゆったり寛げるスペースとすることにすべてを捧げたデザイナーや職人たちの思いが、このキャビンには濃密に詰まっている。さもなければ、ここまで美しく輝きながらも、しっとりと落ち着いた空間が出現することはなかっただろう。

走りの面でもフライングスパーは自動車界のあらゆる常識を超越している。

“コトリ”と音を立てることもなく動き出したかと思えば、ハイウェイをクルージングしているときでさえ小鳥のさえずりが聞こえてきそうな静寂さに包まれたキャビンは、一方でマルチシリンダー・エンジンの滑らかな鼓動をしっかりと伝え、時としてドライバーを心地よく高揚させる官能性を帯びている。これもまた、フライングスパーならではのマジックだろう。

フライングスパーがワインディングロードで見せる走りは芸術的

ベントレー フライングスパー V8の走行シーン
4.0リッターV8ツインターボを搭載するフライングスパー V8。最高出力550ps/最大トルク770Nmを発生し、最高速度318km/h、0-100km/h加速4.1秒を計上する。一方、W12エンジン搭載モデルは最高速度333km/h、0-100km/h加速3.8秒をカタログスペックに刻む。

足まわりの印象もまったく同様で、路面から振動として伝わる雑味成分がすべて遮断されているのに、4本のタイヤがいかに接地しているかは、ステアリングを通じてすべて克明にドライバーへと伝えられる。その振る舞いに荒れたところは一切なく、完璧なまでに洗練されていることは言うまでもない。

フライングスパーがワインディングロードで見せる走りは芸術的といっていい。ここでドライバーに求められるのは、コーナリングに対する明確なイメージだけといっても過言ではないほど。あとはステアリングやスロットルペダルを自然に操作するだけで、フライングスパーは一糸乱れることなく狙いどおりのラインをトレースしてくれるはずだ。

この、驚くほど自在なハンドリングは、エアサスペンション、4WDシステム、トルクベクタリング、4WSシステムなどを完璧に統合制御するエレクトロニクスによって下支えされているのだが、そうしたテクノロジーの存在を一切感じさせない点もまた、いかにもベントレーらしいといえる。

スムーズネスなW12か、シャープなV8か

ベントレー フライングスパーとフライングスパー V8のリヤスタイル
スムーズかつトルキーなW12ツインターボを採用したフライングスパーと、シャープかつリニアリティの高いV8ツインターボを積むフライングスパー V8。動力パフォーマンスは大差ないが、数値以上に性格は異なる。その価格差は400万円。

エンジンはW12とV8。W12はあくまでもスムーズで、荘厳なまでに豊潤なトルクを生み出してくれる。V8はスロットル操作に対する反応がいちだんとシャープで、ドライバーの要求に正確に応えるリニアリティの高さが持ち味。しかも、V8の車重はW12より60kgほど軽いので、ハンドリングの面でも良好なレスポンスが期待できそう。1回の給油で走行できる航続距離がW12より長く、ロングクルージングに余裕があることもV8の美点。これらに加え、V6にモーターを組み合わせたハイブリッドも最近発表された。もちろん、いずれのパワーユニットを選んでもパフォーマンスと静粛性にまったく不満を覚えないことは言うまでもない。

スポーティなだけでもなければ、エレガントなだけでもなく、両者を併せ持つことでまったく新しい価値を生み出したフライングスパーは、まさに唯一無二のラグジュアリーサルーン。それでいながら、まるでイギリス人貴族のように佇まいが控えめで上品なところも、私がベントレーに強く惹かれる理由のひとつといっていいだろう。

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REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 10月号(特別付録 小冊子「THE WORLD OF BENTLEY」より)

【SPECIFICATIONS】
ベントレー フライングスパー
ボディサイズ:全長5325 全幅1990 全高1490mm
ホイールベース:3195mm
車両重量:2540kg
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5945cc
最高出力:467kW(635ps)/5000-6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1350-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40ZR21 後305/35ZR21
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.8秒
車両本体価格:2750万円

ベントレー フライングスパー V8
ボディサイズ:全長5325 全幅1990 全高1490mm
ホイールベース:3195mm
車両重量:2480kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:404kW(550ps)/5750-6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/45ZR20 後295/40ZR20
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:4.1秒
車両本体価格:2350万円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797

【関連リンク】
・ベントレー 公式サイト
http://www.bentleymotors.jp/

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…