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Porsche Macan
そのフォルムには“意味”がある
アウディと共同開発されたEV専用アーキテクチャー「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」をベースに開発された最初のモデルとしてデビューを飾った新型「ポルシェ マカン」。PPEはアウディとの開発シナジーの恩恵を受けるだけでなく、ポルシェが独自に掲げる技術的ターゲットや経営目標を実現するための高い柔軟性も備えている。ポルシェの屋台骨を支えてきたミドルサイズSUVの電動化は、2030年までに新車の80%以上をフル電動化しようとしているポルシェにとって、非常に大きな意味を持っている。
新型マカンのクーペのようなルーフライン、ポルシェらしいフォルムを持つ印象的なリヤセクションは、911のタイトなフライラインを思わせるものだ。しかし、新型マカンで採用されたエクステリアは、ただポルシェのアイコンへのオマージュではない。リヤスポイラーを含むこの形状は、フル電動SUVに革命を起こすレベルの新基軸なのである。
デザイン部門「スタイルポルシェ」と同じ建物内にあるヴァイザッハの風洞施設は、新型マカンのエクステリアに“意味”を与えることなった。ポルシェAGにおいて空力スペシャリストを務めるトーマス・ヴィーガンドは、マカンに導入されたアクティブ・エアロダイナミクスについて次のように説明した。
「自動的に展開するリヤスポイラー、フロントエアインテークのアクティブ冷却フラップ、アンダーボディのフレキシブルカバーなど、マカンに採用されたアクティブ・エアロダイナミクス・エレメントは、すべて航続距離に大きく貢献しています」
ポルシェSUV史上最高のCd値0.25
ヴィーガンドによる、マカンのエアロダイナミクスに関する説明を続けよう。
「フロントで目につくのは、中央のエアインテークです。冷却フラップは開閉可能となっており、温度調節ができるように設計しました。完全に開くと、充電中のバッテリーを冷却し、バッテリーを保護して寿命を延ばす効果があります」
「一方、走行中はフラップを閉じることで空気抵抗を減らし、航続距離を伸ばすことが可能になります。車両の温度センサーが冷気を求めると、この可変フラップは再び展開します。こうすることで、バッテリーとエンジンの最適な冷却、車内の空調、そしてあらゆる走行状況におけるブレーキ性能を確保することができるのです」
空気抵抗は航続距離に直接影響し、空気抵抗が10%減少すれば、航続距離は21kmも増加する。そのため、アンダーボディにもアクティブコンポーネント「フレキシブルカバー」が採用された。新型マカンはレーシングカーのようにアンダーボディがフラットボトム化されており、リヤホイール周囲でさえもクローズド化されている。
さらに流線型かつ、大部分がクローズド化されたホイールや、エアロダイナミクスに最適化されたタイヤと組み合わせられることで、より大きな空力的恩恵を受けることになった。例えば、田舎道をクルージングするとき、マカンは自動的に理想的なエアロダイナミクスのセットアップを行う。リヤスポイラーはエコポジションに展開され、可変フラップは閉じ、車高は低く保たれる。これらの様々なアイデアによって、マカンはCd値0.25という、ポルシェSUV史上最高の空気抵抗係数を実現した。
ポルシェに求められるドライブの楽しさ
航続距離を大きく伸ばした最新のアクティブ・エアロダイナミクス、コクピットに導入された画期的なオペレーティングコンセプト、新型EV専用アーキテクチャーに搭載されたモーターとバッテリー。そして、新型マカンは、ポルシェを名乗る以上、最終的にドライビングの楽しさを追求する必要があった。
「そうでなければ、マカンはポルシェではありませんからね」と、ドライビングダイナミクス担当マネージャーとして、マカンを含むSUVシリーズとパナメーラの責任者を務めるモーリス・ヴァン・デ・ウェールドは指摘する。彼のチームは、最高出力639PS、最大トルク1130Nmという驚異的なパフォーマンスを誇る新型マカンに、リヤ重視のキャラクターを与えた。
「私たちの開発目標は、走行安定性とトラクションを最大化し、これまでにない俊敏性と快適性を確保することでした」と、ヴァン・デ・ウェールド。正確な全輪駆動制御、わずかだがリヤに重点を置いた重量バランス、専用設計されたショックアブソーバーなどが、新型マカンにポルシェらしいドラビングプレジャーをもたらしている。