多様なパワートレインを有する「BMW X1」のMパフォーマンスモデルを試乗

「BMW X1 」のMパフォーマンスモデル「M35i xDrive」に試乗「秀逸なコンパクトSUVが目指すのは?」

今やBMWのラインナップで再量販車種の1台となった売れっ子のX1。今回追加されたM35iに早速試乗してみた。
今やBMWのラインナップで再量販車種の1台となった売れっ子のX1。今回追加されたM35iに早速試乗してみた。
その効率的なパッケージと多彩なパワートレインが評価され、昨年度のインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「BMW X1」に早くもMモデル「M35i」が追加された。その走りを佐野弘宗がリポートする。(GENROQ 2024年7月号より転載・再構成)

BMW X1 M35i xDrive

その走りはリトルモンスター

切れのある走りが魅力の高性能コンパクトSUV、BMW X1 M35i xドライブ。日常生活の使い勝手の良さに加え、ワインディングでは水を得た魚のような軽快感を披露する。
切れのある走りが魅力の高性能コンパクトSUV、BMW X1 M35i xドライブ。日常生活の使い勝手の良さに加え、ワインディングでは水を得た魚のような軽快感を披露する。

BMW X1に新しく登場した「M35i xドライブ」(以下、M35i)は、その「M+2〜3ケタ数字」という車名どおり、真正M=Mハイパフォーマンスモデルのちょっと下に位置づけられる、ハイのつかないMパフォーマンスモデルである。同種モデルは1や2のグランクーペ、X2など、X1と基本骨格を共有するFF系BMWに用意されてきたが、X1では意外にも今回が初。

先代は「高性能モデルはクーペのX2専用」という特化戦略だったのだろうか。しかし、X1は今や世界的に1、2を争うBMWの最量販モデルのひとつであり、「速いX1がほしい」との声が、多数届いていたことは想像にかたくない。

このクルマ自体のなりたちは、1や2グランクーペ、X2のそれとだいたい共通する。ただ、2.0リッターターボは最高出力こそ従来より高められたものの、最大トルクは逆にダウン。この高性能2.0リッターと組み合わせられる変速機が、従来のトルコン式8速ATから新たに7速DCTに切り替えられたためと思われる。

特筆すべきフィット感のスポーツシート

コクピットでは、ステアリングホイールの12時を示す赤い印に加えて、大型のカーボン製シフトパドルやMスポーツシートが、M35iならではのディテールだ。とくにシートはフィット感が素晴らしいうえに、スライドやリクライニングだけでなく、サイドサポートの幅も電動調整できて、実に具合がいい。

興味深いのは、通常のX1同様のパーソナルやエクスプレッション、エフィシェントといった気分で選ぶ走行モードの「マイモード」がそのまま残されるところだ。なかには一応スポーツモードもあって、同モード下でエンジンやパワステ、DSCなどのセッティングを好みで組み合わせることも可能ではある。しかし、そこにサスペンションの項目はなく、専用の電子制御アダプティブMダンパーのセッティングを好みで変えることはできないようだ。

また、クルマ全体のモードをいろいろ選択しても、サスペンションの味わいにほとんど変化はない。そのかわり、シフトパドルには電気自動車(EV)のiX1同様の「Mスポーツブースト」機能が備わっていて、ダウン側パドルを長引きすると、クルマ全体が最もスポーティなセッティングに10秒間だけ切り替わる。

こうしたモードやセッティングのメニュー、ブースト機能を、約2日間の試乗期間で使いこなせた気は、50代半ばの私はまったくしない(笑)。エンジンをかけた次の瞬間にスポーツ(あるいはさらに過激なスポーツプラス)モードにセットして走り回る……みたいな旧来の楽しみかたは、このX1のMパフォーマンスモデルは想定していないのだろう。

中低速トルクを活用するのがこのエンジンのコツだ

ただ、このパワートレインは、昔のように高回転で炸裂するようなタイプではないが、純粋に完成度は高い。マイルドハイブリッドの類が備わらないにもかかわらず、過給ラグもほとんど感じ取れないのだ。DCTの変速マナーも上品で、どのモードにしてもダウンシフト時に盛大なブリッピングをかますようなこともない。なので、エンジンをブン回してシフトしまくる……といった旧世代の運転スタイルはそもそも似合わない。山坂道でも高めのギヤに固定して、最新の直噴ターボならではの頼もしい中低速トルクを最大限に活用するのが、M35iを楽にスムーズに、そして速く走らせるコツだ。

フットワークは基本的に硬め。ロールは小さく、どこでも水平姿勢のまま走る。基本的に市街地では引き締まったミズスマシ系の乗り心地だが、そのわりに山道では柔らかめで穏やかな調律である。真正Mではないので、あくまで日常の領域で適度にスポーティな味わい醸すタイプといえばいいだろうか。

新しいMの味付けを模索しているのだろうか

まるでBMW製のEVに乗っているかのようなスムーズで静粛性の高いライド感は今までのMパフォーマンスモデルにはない個性だ。
まるでBMW製のEVに乗っているかのようなスムーズで静粛性の高いライド感は今までのMパフォーマンスモデルにはない個性だ。

スポーツモードに設定しても乗り心地やハンドリングに大きな変化はないのは前記のとおりだが、ディスプレイ内の「アイコニックサウンド」を作動させると、モードに合わせてエンジン音が派手になる。いかにも電気的な人工音だが、たしかに気分はアガるチューニングである。

そういえば、全域でトルクとレスポンスがみなぎる2.0リッターターボの特性も、どこかEVっぽい。もしかしたら、BMWはEVとエンジンに共通する、新しいMの味わいを模索しはじめているのかもしれない……最新のMパフォーマンスモデルに乗って、そんなことを思った。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 7月号

SPECIFICATIONS

BMW X1 M35i xDrive

ボディサイズ:全長4500 全幅1845 全高1625mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1680kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:233kW(317PS)/5700rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/45R19
車両本体価格:786万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

X1シリーズ最強のハイパフォーマンス仕様「X1 M35i xDrive」の走行シーン。

「ついに来た!」BMW X1シリーズ最強を誇るハイパフォーマンス仕様「X1 M35i xDrive」【動画】

BMWはコンパクトクロスオーバー「X1」シリーズに、パフォーマンスモデル「X1 M35i xDrive」を追加した。コンパクトなスポーツ・アクティビティ・ビークル(SAV)のキャラクターと使い勝手の良さはそのままに、シリーズの頂点に相応しいパフォーマンスと内外装が与えられている。

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