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V8 Vantage(2005-2017)
3年分のオーダーが殺到
ウルリッヒ・ベッツ体制下でV8ミッドシップの開発をキャンセルしたアストンマーティンは、それに代わるコンパクトなV8 FRスポーツの開発に着手する。こうして2003年のデトロイト・ショーで発表されたのが、2シーターの「AMV8ヴァンテージ コンセプト」だ。
兄貴分となる「DB9」と同様、VHプラットフォームのフロントミッドに新開発の4.3リッターエンジンを搭載。アルミ製のボディはイアン・カラムのデザインにヘンドリック・フィスカーが手を加えたものであった。
発表されるや否やショーの主役となり、ディーラーに3年分のオーダーが殺到したと言われる「AMV8ヴァンテージ コンセプト」は、2年後2005年のジュネーブ・ショーでほぼそのままの姿で「V8ヴァンテージ」としてデビューすることとなる。
“911イーター”の最右翼として
シャシーは前述したようにDB9にも用いられるVHプラットフォームだが、V8の2シーターということもあり、そのボディサイズは全長4382mm、全幅1866mm、全高1255mm、ホイールベース2600mmと、ひとまわりコンパクトなものとなっている。
エンジンはジャガー製V8のブロックをベースに、ほぼすべての部分をアストンマーティンが新設計した4.3リッターV8 DOHC32バルブで、最高出力385PS、最大トルク410Nmを発生。またエンジン単体重量を200kg(ちなみにDB9のV12は320kg)に抑えているうえ、ドライサンプ化したことで搭載位置を低くすることができた。さらにグラジーノ製6速MTをリヤアクスルに搭載するトランスアクスル・レイアウトを採用することにより、前後重量配分49:51を実現しているのも大きな特徴である。
そのほかアルミキャスト製トルクチューブ、カーボンファイバー製プロペラシャフトなど各部の軽量化を徹底した結果、0-100km/h加速5.0秒、最高速度281km/hというパフォーマンスと、FRレイアウトを活かした素晴らしいハンドリングを実現。“911イーター”の最右翼として名乗りをあげた。
電動ソフトトップを持つロードスターを追加
発売から1年後の2006年には、プラットフォームのアルミ材をわずかに強化することで重量増を70kgに抑えた電動ソフトトップを持つV8ヴァンテージ・ロードスターをラインナップに追加。また2007年モデルからは幅の広がった新デザインのシートが採用されたほか、プロドライブが開発したパドルシフト式の2ペダル・セミAT“スポーツシフト”がオプションに加わっている。
続く2008年にはニュルブルクリンク24時間でのN24の活躍を記念して、4.3リッターV8を400PS&420NmへとチューンしたN400をクーペ、ロードスターに用意。
そして2009年モデルからは、V8エンジンを大幅に改良して排気量を4.7リッターへと拡大。最高出力が426PSに、最大トルクが470Nmへとアップした。あわせてクラッチやフライホイールが軽量化されたほか、ギヤボックスも6速MT、セミATともに強化、改良されている。またインテリアにも改良が加えられ、キーの代わりにガラス製ECUと新しいナビゲーションシステムが装備されるなど、DB9、DBSに準じた装備、デザインとなった。
様々なバリエーションを追加しつつ2016年まで製造
さらにこの年のジュネーブ・ショーではエンジンコンパートメントに5.9リッターV12を押し込んだ「V12ヴァンテージ」が登場。2011年のジュネーブ・ショーではV12ヴァンテージとV8ヴァンテージとの間を埋めるモデルとして、436PS、490Nmの4.7リッターV8にV12ヴァンテージ譲りの強化スプリングとダンパー、6ポットキャリパーのブレーキ、エアロパーツ、そして新開発の7速セミATスポーツシフトIIを搭載した「V8ヴァンテージS」がデビューする。
ここで使われた7速セミATや6ポットキャリパーは、2012年モデルのV8ヴァンテージにも採用。2014年には1959年のル・マン優勝車、DBR1をモチーフとしたカラーにSと同じエンジンスペックをもつ限定車、N430も発売されるなど、様々なバリエーションを追加しながら2016年まで製造された。