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MICHELIN SUSTAINABLE TEST DRIVE
サステナブルと高性能を両立させた脅威の実力
すでに周知の事実だが、ハイブリッドやPHV、そしてBEVといった電動車が日本でも増加傾向だ。ミシュランによると新車販売台数に占める電動車の割合は、2018年が40%だったのに対し、2022年には52%に増加しているという。ICE車が主流だった時代とは異なり、電動車(特にBEV)に求められるタイヤ性能はよりシビアなものとなった。
航続距離を伸長させるために、低転がり抵抗はもちろんのこと、タイヤ重量や空気抵抗の低減も開発時の重要なファクターになってきているという。タイヤ使用時のCO2排出量を削減しつつ、そのうえでウエットグリップ、ドライグリップ、ハンドリングなど走りに関わる根幹の部分をいかに底上げしていくか……。2024年において、各タイヤメーカーが抱える一番の課題はこの「サステナブル化」と「パフォーマンス」の両立にあると言えよう。
だがミシュランの考えるサステナブル化とは、さらに時代の一歩先を見据えたものだ。従来、低燃費タイヤといえば低転がり抵抗や耐摩耗性には優れているが、ドライ&ウエットグリップやハンドリングは標準タイヤに劣るというイメージがあった。逆もしかり、高性能タイヤはハンドリングやグリップ性能は高いが、乗り心地や低転がり抵抗は物足りないというのが一般ユーザーおよび、マスメディアの常識だったはずだ。
ミシュランは市井の人に根付いた、これらのイメージを覆す革命を起こそうとしている。それがミシュランの考えるサステナブル化「ミシュラントータルパフォーマンス」という哲学だ。彼らの設計思想において、「低燃費タイヤだから……高性能タイヤだから……」といったエクスキューズは一切ない。高レベルのハンドリングやドライ&ウエットグリップ性能、静粛性、耐摩耗性、低燃費性は当たり前。その上ですべての性能を底上げしていく。それがミシュランが目指し、実現している新時代のサステナブル性能なのである。
あらゆる性能を実現するために、ミシュランはトレッドゴムの新開発、マルチトレッド化、強度を確保しつつ軽量化された部材や構造の採用、摩耗時にも溝やサイプが機能するパターンの採用など、新しいテクノロジーをすべてのタイヤに注ぎ込んでいる。
高いハンドリング性能とウエット性能を両立したPILOT SPORT 5
と、前置きが長くなってしまったが彼らが掲げるサステナブル性能を確かめるため、クローズドコースでミシュランの主力タイヤを試乗する僥倖を得た。主に試乗したのはミシュラン史上最高の低燃費性能を誇る「e・プライマシー」と快適なSUVの走りを支える「プライマシーSUV+」、そして本誌でもお馴染みのハイパフォーマンスタイヤ「パイロットスポーツ5」だ。
当日は生憎のウエットコンディション。試乗コースは外周路(パイロンスラローム有り)、ハンドリング路、フルブレーキングというシチュエーションだった。
まずはパイロットスポーツ5を装着したテスラ・モデル3で外周路にコースイン。雨脚が強く、高速パイロンスラロームを試みるのにやや躊躇したが、そんな私の不安をよそにダブルレーンチェンジテストに近いスラロームをモデル3は難なくこなしていく。リヤタイヤはテスラの大トルクをしっかりと受け止め、次のパイロンに向かって高いグリップ力でクルマをぐいぐい加速させていく。ドライグリップの高さは既に認知していたので、パイロットスポーツ5のウエット性能の高さに本タイヤの真の実力を見た気がした。
SUVの走りを支える横剛性としなやかな乗り心地のPRIMACY SUV+
用したことで転がり抵抗「A」を達成。車重のあるSUVを支える高速安定性とハンドリング性能を実現した。プライマシーSUV+の試乗車は日産エクストレイルだったが、しなやかな乗り心地が印象的だった。
プライマシーSUV+は今回が初試乗だった。235/60R18を履いた日産エクストレイルeパワーでハンドリングコースを試す。やや腰高感のあるエクストレイルだが、操舵に対して実に素直にコーナーをトレースしていく。乗り心地もすこぶるよく、車重のあるSUVに対し、快適な乗り心地と高レベルなハンドリングを両立させたタイヤだと感じた。
従来のコンフォートタイヤの概念を覆すe・PRIMACY
最も衝撃を受けたのがe・プライマシーだ。e・プライマシーといえば転がり抵抗性能「AAA」を達成した最高の低燃費性能を有するコンフォートタイヤだ。軽自動車からSUV、BEVまであらゆる車種に対応してるのが特徴である。そのe・プライマシーをBEVではなく、あえてICEのメルセデス・ベンツA180に装着して外周路とハンドリング路を走ることができた。
「環境性能型タイヤでしょ……」、ミシュランの事前プレゼンをすっかり失念してコースインした私は、ハンドリング路での走りにショックを受けた。速度を上げていってもタイヤはしっかりと路面を捉えてアンダーステアが発生する兆候すらない。タイヤの横剛性も素晴らしく、やや激しいコーナリングを試みたが、何事もなくコーナーの曲率に合わせて一定舵でクルマが曲がっていく。前言撤回。これは環境型タイヤではなく、スポーツ性能も十分な万能型タイヤだ。
耐摩耗性、転がり抵抗性能はもちろんのことすべての性能に妥協しないという「ミシュラントータルパフォーマンス」の哲学が実感できた瞬間であった。タイヤの性能は当たり前、その上でさらなる環境性能を向上させるという強い信念を持つミシュランのアイデンティティを垣間見た試乗会であった。
REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/日本ミシュランタイヤ
MAGAZINE/GENROQ 2024年9月号
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