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Zenvo Aurora Agil
共同で進められたオーロラの空力開発
ゼンヴォ・オートモーティブが開発を続けるハイブリッドスーパースポーツ「オーロラ」は、レーシングカーを思わせるスタイルを持つ「アジル(Agil)」と、美しくエレガントな「トゥール(Tur)」をラインナップし、各限定50台製造。6.6リッターV型12気筒クワッドターボエンジンに、202PSの出力を持つ電気モーターを組み合わせ、1875PSという強大な最高システム出力を実現した。
オーロラの開発において掲げられたコンセプトが、「究極の均衡(Equilibrium of extremes)」。最高速、パワー、スタイリングのいずれかを追求し、妥協するのではなく、それぞれのパラメーターをバランスよくブレンドすることで、各コンポーネントを最適化するよう開発が進められた。このプロセスにおける重要な課題が、アグレッシブかつエレガントなスタイリングを維持しながら、ハンドリングとドライビングの楽しさを損なわないようにすることだったという。
この難しい課題をゼンヴォと共に取り組んだのが、デンマークを拠点とするエアロダイナミクス専門企業「エアロタック」だ。エアロタックは2017年に設立され、「TS1 GT」「TSR」「TSR-S」プログラムにおいてゼンヴォに貴重な知見を提供。オーロラの開発では、シミュレーションモデル「エアロ・アーキテクチャー(aero-architecture)」を制作した。
エアロタックの高度なシミュレーション技術
エアロ・アーキテクチャーと、空力の性能ターゲットが決定すると、エアロタックはシミュレーションを実施。様々な設計変更に対する影響を調べ、ゼンヴォへとフィードバックした。これにより、アジルとトゥールという2つのモデルのエアロダイナミクスを最適化し、それぞれに個別のアップデートを行うことが可能になった。
詳細なシミュレーションプログラムの一環として、エアロタックは設計開発全体を通して、シミュレーションの完全なエアフローマップとX線画像処理も行った。オーロラの走行時に想定されるあらゆるシナリオにおいて、精度の高いレポートをゼンヴォへと提供。例えば、強風や雨、アップダウンや急カーブなどの環境下で、オーロラが想定されたパフォーマンスを発揮することを保証している。
エアロタックの共同創業者であり、数値流体力学のスペシャリストでもあるキャスパー・ダンケアは、ゼンヴォとの共同作業について次のように振り返った。
「エアロタックにとって、ゼンヴォのデザインチームとのコラボレーションは最高の経験になりました。私たちからのフィードバックに耳を傾けるだけでなく、彼らはエアロタック自体を深く理解しようとしてくれたのです。私たちがどのようなバックグラウンドを持ち、そのプロセスを理解しようとする姿勢は、私たちにとって大きなモチベーションとなりました」
「私たちが提供する様々なデータやフィードバックは、ゼンヴォが手がけたデザインを視覚的に検証するだけでなく、オーロラ・プロジェクトとその将来のオーナーに最高のパフォーマンスを保証することになったのです」
F1マシンをイメージしたエアロダイナミクス
ゼンヴォのデザイン部門は、オーロラ・プログラムに対して明確な野心を持っていた。それは、すでにマーケットに存在している平均的なハイパーカーをデザインするのではなく、伝統的な自動車デザインの「型」を打ち破り、「機能に従ったフォルム」という、デンマーク固有のデザイン哲学に根ざしたユニークな1台を作り出すということ。
ゼンヴォ・オートモーティブのデザインディレクターを務めるクリスチャン・ブランディットは、次のようにオーロラのデザイン過程を説明する。
「オーロラをデザインすることは非常に興味深く、また挑戦的なプロセスとなりました。特にサーキット走行向けに開発されたハイダウンフォース仕様の『アジル』は、新たな課題をデザインチームへと突きつけることになりました。今回、エアロタックと緊密に協力することで、このプロセスを合理化し、単純化することができました」
「F1マシンが、あのようなフォルムであるのには理由があります。ダウンフォースレベルを最適化したことで、あのような形状に行きついたのです。オーロラの開発を進めるなかで、私たちは美しさとエアロダイナミクスが、時として衝突することに気がつきました」
「完璧なバランスを得るために何度もトライ&エラーを繰り返しましたが、結果には心から満足しています。オーロラ アジルの美しいデザインは、F1マシンからインスパイアを受けました。それこそが、スーパースポーツに私たちが求めていた最高のバランスなのです」