フェラーリV12なのに不人気モデル「612 スカリエッティ」が買いだ!

V12フェラーリなのに1000万円以下?の「612 スカリエッティ」【今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?31台目】

人気のシャンパンゴールドカラー、グリジオ・イングリッドの612。
人気のシャンパンゴールドカラー、グリジオ・イングリッドの612。
クルマの流行廃りにあわせて大きく動く中古車市場。もしも中古車ライフを送るなら、その波を正確に捉えてお得な買い物をしたいものだ。そんな時代の羅針盤たるべく、西川淳が「今」買いのクルマを紹介する。第31回は久々にフェラーリの最近狙い目車種、2+2モデルを紹介する。

612 SCAGLIETTI

12気筒狙いなら2+2など不人気モデルを

612スカリエッティのデザインは、ご存知ピニンファリーナの奥山清行とフランク・ステファンソンで、のちのマクラーレン12Cコンビである。
612スカリエッティのデザインは、ご存知ピニンファリーナの奥山清行とフランク・ステファンソンで、のちのマクラーレン12Cコンビである。

とりあえずフェラーリは12気筒を作り続けるようだ。ひと安心。これでV12に対する飢餓感も薄れる……と思った人はヨミが少々浅いかも。逆だ。フェラーリがそこまでこだわって作り続けるのだから、やっぱり一度は跳ね馬の12気筒に乗っておきたい、とその思いを改めて強くする人が増える。安心したから買わない、とはならない。かえって注目が集まると思う。

とはいえ新車は夢のまた夢。たとえ運よくオーダーの列に並べたとしても、乗り出しのお値段はオプション込みで1億円に近づく。新車価格が上がった、というよりも世界並みになった。そのせいでしばらくは年式の新しい12気筒モデルの中古車相場も強含みになるだろう。それでも欲しいとなれば、さらに年式を下るしかない。そして、2+2などの比較的不人気なモデルを狙う。

今なら断然「612 スカリエッティ」だ。筆者もしばらく乗ったことがあるけれど、シングルクラッチのフィールがマニュアルに近く、それゆえ乗り方にコツが必要だったとはいうものの、かなり実用性の高い跳ね馬だった。スタイリングも今見るとクラシックで美しい。

流通量は少ないが……

最新フェラーリのデザインにも通じる美しいコクピット。
最新フェラーリのデザインにも通じる美しいコクピット。

フロントミドに収まるのは同時代のV12 2シーターの「599」と同じ……ではない。エンツォ直系のF140ではなく、575M系の5.75リッター、つまりF133を搭載する。そこが、いざ買うとなると実に惜しい気分になってしまうのだけど、だからといってF133の12気筒フィールがダメかというとそうではない。れっきとした跳ね馬12発であった。

試しにカーセンサーで検索してみる。流通台数は14台。「456GT」系よりは多いが、「FF」「ルッソ」系よりかなり少ない。まずは順当な台数だが、注目すべきは価格相場だ。近頃じわじわ人気のFFに比べて500万円以上安い。つまり多くの個体が今時の中古跳ね馬としては珍しく、特に12気筒としては異例に1000万円を割っている。1000万円を割った跳ね馬12気筒など今では456のGTAか612しかない。

実用フェラーリだからこそ赤を選びたい

後席もスポーツカーらしくバケットタイプとなっていた。
後席もスポーツカーらしくバケットタイプとなっていた。

流通する個体を一つひとつチェックする。今回も気になる1台が見つかった。ボディカラーは鮮やかな赤、インテリアも赤という、ある意味“レア”な1台。612に限らず4シーターフェラーリというと、リヤミドシップなどスポーツモデルと共にガレージに収める傾向も強く、赤の多いスポーツモデルに対して地味な色合いが多い。実際、マーケットでよく見かける612は黒や紺、白、ガンメタといった“実用カラー”だ。赤や黄といったスポーツモデルに似合う色を見つけることは難しい。真っ赤な612スカリエッティ、欲しいなぁ。岐阜か〜、見に行きたい!

実用フェラーリだから地味目の色で──、新車オーダーする顧客がそう思うのもよくわかる。けれども、本当は実用フェラーリだからこそ赤を選ぶと面白い。逆にスポーツモデルは地味にキメる。大体からしてリヤミド2シーターなんてスタイルは見た目がすでに派手なので、赤や黄にしなくてもフェラーリだとわかってもらえる。そうではない612など4シーターモデルこそ、跳ね馬らしい色にして正解だ。ハズしの美学でもあった。

のちのマクラーレン12Cコンビが

ロボタイズドMTは実際にクラッチを踏んでいるような感覚で操作すると気持ちよくシフトできた。
ロボタイズドMTは実際にクラッチを踏んでいるような感覚で操作すると気持ちよくシフトできた。

612スカリエッティのデザインは、ご存知ピニンファリーナの奥山清行とフランク・ステファンソンで、のちのマクラーレン12Cコンビである。モチーフは名車「375MM」のワンオフモデルで、映画監督のロベルト・ロッセリーニが女優イングリッド・バーグマンに送った跳ね馬として有名だ。その時のカラーが、グリジオ・イングリッド。それゆえ612を好んでグリジオ・イングリッドでオーダーするオーナーが多かった。

確かに612にはシャンパンゴールドが似合う。似合うのだけど、どうも中古で安く買うというイメージと精神的に合わない。新車でパリッとキメる色だと思う。だからこそ逆をついて、ロッソの612。最高じゃないか。なんならFFだってロッソで乗ってみたいものだ。

2013年から11年間でEタイプ(13年間製造)を1.5万台上回る8.7万台を生産した「Fタイプ」。

ジャガー最後の純内燃機関スポーツカー「Fタイプ」【今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?30台目】

クルマの流行廃りにあわせて大きく動く中古車市場。もしも中古車ライフを送るなら、その波を正確に捉えてお得な買い物をしたいものだ。そんな時代の羅針盤たるべく、西川淳が「今」買いのクルマを紹介する。第30回はEVメーカー宣言したジャガーにとって最後の純内燃機関スポーツカーとなる「Fタイプ」だ。

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西川 淳