連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

V12 VANTAGE(2009-2013)
V12 VANTAGE S(2013-2018)

重量増はわずか50kg

517PS、570Nmを発生する5.9リッターV12を搭載した「V12ヴァンテージ」。
517PS、570Nmを発生する5.9リッターV12を搭載した「V12ヴァンテージ」。

ベイビーアストンとして「V8ヴァンテージ」が登場して以来、ハンドリングのいい2シーターのシャシーにパワフルなV12を積んだら……という妄想を抱いていた人々は多かったはずだ。その妄想が形になって現れたのは、2007年12月のゲイドン・デザインセンターのオープニングでのこと。

LMPやLM-GTEの開発でアストンマーティンと強いつながりがあり、WRCやツーリングカーでの実績も豊富なプロドライブの手で600PSにチューンされた5.9リッターV12を搭載した上で、カーボンファイバーを多用し、V8と同じ重量に収めた「V12ヴァンテージRSコンセプト」が発表されたのだ。

結果的にV12ヴァンテージRSコンセプトがどのまま販売されることはなかったが、アストンマーティンはそのコンセプトを引き継ぎ、カーボンファイバー製フロントエアダム、ボンネットルーバー、リヤディフューザーそして大型テールスポイラーで武装し、重量増をわずか50kgにとどめたシャシーに、517PS、570Nmを発生する5.9リッターV12を搭載した「V12ヴァンテージ」を2009年のジュネーブ・ショーで発表する。

スペースの都合でギヤボックスは6速MTのみの設定となったものの、最高速305km/h、0-100km/h加速4.2秒と、V8の281km/h、5.0秒を大きく上回るパフォーマンスを獲得。発売当初はクラッシュテストの問題で北米への輸出ができなかったが、その後改良を施すことで2011年モデルから北米輸出もスタートし、2013年までに1199台が製造された。

新開発の7速MT搭載モデルも

このV12ヴァンテージと入れ替わるモデルとして2013年に投入されたのが「V12ヴァンテージS」である。ノーズに収まるAM28型5.9リッターV12エンジンはボッシュ製のマネジメントシステムを改良することで、従来比56PS、70Nmアップの573PS、620Nmを発生した。

V12を搭載するにあたり、前後重量配分の最適化が図られたシャシーは、コンセプトカーの「CC100」をモチーフとした縦型スパーを備えたカーボンファイバー製フロントグリルなどの改良を施すことで、冷却効率とエアロダイナミクスの向上も実現。これらの効果により、V12ヴァンテージSは最高速度328km/h、0-100km/h加速3.9秒という途方もないパフォーマンスを発揮し、史上最強のGTスポーツカーの名をほしいままにした。

そして2016年には、要望に応えて新開発の7速MT搭載車を追加。その際にクラッチ、ギヤポジション、プロップシャフトセンサー、エンジンマネージメントシステムなどを統合制御して、ドライバーに代わってヒール&トーを再現するAMSHIFTも採用されている。

サブブランドのAMRからも100台限定モデルが登場

翌2017年にはサブブランドのAMRから、最後を飾るモデルとして「V12ヴァンテージAMR」が登場。V12ユニットは588PS、630Nmへとチューンされ、車体側にもカーボンファイバー製エアロダイナミクスパッケージ、AMRエアロキット、鍛造アルミニウムAMRヴァンテージホイール、14kgの軽量化を達成したAMRチタニウムエキゾーストといった専用装備が奢られ、世界限定100台で販売されている。

一方、クーペから4年ほど遅れた2013年にオープンモデルの「V12ヴァンテージ ロードスター」もデビュー。シャシーはV8ヴァンテージ ロードスターをベースとしたもので、重量もクーペに比べ80kg増に抑えられていたものの、V12ヴァンテージSのデビューが迫っていたこともあり、わずか101台で生産を終了。改めて2014年に573PSユニットを搭載した「V12ヴァンテージS ロードスター」が発表され、クーペと同じ変遷をたどりながら、2017年まで製造されている。

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