革新と伝統の調和。フェラーリ 296 GTBを国内初撮影!

フェラーリ 296 GTB、本邦初上陸! 現代版ディーノのディティールに迫る

フェラーリ 296 GTBのフロントスタイル
フェラーリ 296 GTBのフロントスタイル。
フェラーリブランドとしては初めてのV6、そしてプラグインハイブリッド。次世代を担うブランニューのスーパースポーツとして登場した296 GTBが日本上陸を果たした。実車を目の当たりにした印象とその詳細をお伝えしよう。

Ferrari 296 GTB

完全新設計のV6エンジンを搭載する、21世紀のディーノ

フェラーリ 296GTBのリヤスタイル
全長4565mm、全幅1958mmというボディは非常にワイドに見える。リヤ周りのデザインは鍛え抜かれたアスリートのようだ。

以前からファンの間で噂されていたV6フェラーリ。巷では現代版ディーノと呼ばれていたが、その最大の理由はもちろんディーノ以来のV6エンジン搭載による。果たして2021年6月に発表されたそのクルマは2992ccのV6ツインターボを搭載して296 GTBと命名された。フェラーリ自身は「ディーノの後継車ではない」とコメントするが、ディーノが2.0リッターV6と2.4リッターV6でそれぞれ206、246と呼ばれていたルールをそのまま継承したことを考えても、296 GTBがディーノから繋がるヒストリーを意識していることは確実だろう。

そのディーノがついに日本に上陸した。コロナ禍によって海外渡航が難しくなっている今、ニューモデルに触れるのは日本に入ってくるのを待つしかない。発表から約4ヵ月、296 GTBの日本お披露目は我々にとって待ちに待った瞬間だった。

より高度な空力性能を発揮するエアロアイテムを採用

フェラーリ 296GTBのフロントビュー
フロントナンバー下にあるのがティートレイ。F1マシンのテクノロジーを応用したもので、アンダーボディの負圧を高める。

実際に目にした296 GTBは、想像以上にマッシブで力強く、そして繊細な美しさを持っていた。SF90よりも145mm、F8トリブートよりも46mm短いそのボディはリヤフェンダーの大きな盛り上がりがクラシックフェラーリの雰囲気も漂わす。フェラーリ自身、250LMへのオマージュを込めたと語るこのデザインは、296 GTB最大の魅力と言っていいだろう。個人的には久しぶりに復活したトンネルバックスタイルに惹かれた。これによってボディ全体に軽快感と躍動感が生まれている。360モデナ以降、トンネルバックスタイルがなくなってしまったのは、おそらく空力面で不利な要素があるからだと思われる。しかし296 GTBはルーフ後端に設置したスポイラーとそこからリヤに向かって伸びるサイドフィンの形状を工夫することでその問題を解決した。ひょっとすると今後のフェラーリにはまたトンネルバックスタイルが復活するのかも、という期待も感じさせる。

エアロダイナミクスについては、新たな試みとしてフロントノーズ中央に設けられたティートレイがある。これはバンパーとの相互作用で正圧を生み出してアンダーボディに負圧を発生、高いダウンフォースを得ることができるという。最近のミッドシップフェラーリに必須だったSダクトは装備されないが、それが却ってクラシカルな雰囲気を高めている。またリヤにはテールライトの間に必要に応じて迫り上がるアクティブスポイラーを装備。これが上昇するとダウンフォースは100kg上乗せされるという。

完全新設計のV6ツインターボ+ハイブリッドシステム

フェラーリ 296GTBのエンジン
120度のバンク角はエンジンの高さも低く抑えられる。350barのインジェクションを採用し、ターボエンジンながら最高回転数は8500rpmだ。

パワーユニットは前述の通りV6ツインターボだが、さらにバッテリーとモーターを搭載したプラグイン・ハイブリッドであることが新時代のスーパースポーツらしい。すでにSF90でPHVモデルを市販するフェラーリだが、296 GTBはフェラーリの電動化を一気に押し進める役割を担う存在となるのだろう。

エンジンは完全な新開発で、バンク角120度、IHI製の2基のターボはバンクの間に設置される。フェラーリがこのホットV方式を採用するのは初めてのことだ(F1用では前例がある)。120度V6はクランクピンにオフセットを設けずに等間隔爆発にできるが、排気系のレイアウトが厳しくなる。しかしそれも排気をバンク内側にすることで解決できる。だがエンジン幅が広くなるためか、296GTBの全幅は1958mmとそれなりの広さだ。ターボチャージャーはV8エンジン用よりもコンプレッサー側の直径を5%、タービン側の直径を11%それぞれ縮小し、回転質量を11%低減、これにより低回転から瞬時にブーストが立ち上がるようになり、また新たな合金を採用することで最高回転数は18万rpmを実現している。

296 GTBは電動化時代に対しフェラーリから示された回答だ

フェラーリ 296GTBのリヤビュー
リヤフェンダーの盛り上がりは250LMを彷彿とさせる。エアインテークの形状もクラシックフェラーリを思わせるデザインだ。充電口は左リヤフェンダーに位置する。急速充電はできない。

8速DCTとの間に設置されたモーターはエネルギー回生も行うF1由来のMGU-K(モーター・ジェネレーター・ユニット キネティック)で、167ps/315Nmを発揮する。バッテリーは7.45‌kWhとそれほど大容量ではないが、フル充電で距離25km、速度135km/hまでのEV走行が可能。走行モード切り替えのeマネッティーノは、EV走行モードの「eドライブ」、エンジンとモーターが協調するデフォルトモードの「ハイブリッド」、エンジンを常に可動する「パフォーマンス」、バッテリーの再充電を抑えて最大パフォーマンスを発揮する「クオリファイ」の4モードが選択可能だ。

V8よりも30kg軽量なV6エンジンの採用もあり、プラグインハイブリッドながら乾燥重量は1470kgと1.5トン以下を実現。これはSF90よりも100kg軽い数字だ。前後重量配分はフロント40.5対リヤ59.5、F8トリブートよりも50mm短いホイールベースとワイドトレッドも相まって、ワインディングでは軽快なハンドリングを楽しむことができるだろう。

スーパースポーツカーにも電動化が必須となった時代、296 GTBはそれに対するフェラーリの回答だ。先進のテクノロジーとヘリテージを感じさせるデザインの融合も、フェラーリというブランドだからこそ成せる技だろう。この新時代フェラーリが見せる走りはどのような世界なのか。実際にステアリングを握って走る日を心待ちにしたい。

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REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
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MAGAZINE/GENROQ 2021年 12月号

【SPECIFICATIONS】
フェラーリ 296 GTB
ボディサイズ:全長4565 全幅1958 全高1187mm
ホイールベース:2600mm
乾燥重量:1470kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:487.6kW(663ps)/8000rpm
最大トルク:740Nm(75.5kgm)/6250rpm
モーター最高出力:122kW(167ps)
モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20 後305/35ZR20(11J)
0-100km/h加速:2.9秒
最高速度:330km/h
車両本体価格(税込):3678万円

【関連リンク】
・フェラーリ・ジャパン 公式サイト
http://www.ferrari.com/ja_jp/

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。