最新ホットハッチ3台に試乗「フォルクスワーゲン ゴルフ R」「BMW M135 xドライブ」「メルセデスAMG A 45 S 4マティック+」

3台乗り比べ「フォルクスワーゲン ゴルフ R」「BMW M135 xドライブ」「メルセデスAMG A 45 S 4マティック+」の2.0リッターターボAWD対決

2.0リッターターボ、AWDという共通性を持つドイツ御三家のCセグメントホットハッチ。3台を比較したところで見えてきたものとは?
2.0リッターターボ、AWDという共通性を持つドイツ御三家のCセグメントホットハッチ。3台を比較したところで見えてきたものとは?
ドイツCセグメント・ホットハッチ3台のバトル。マイナーチェンジで出力を向上させた「ゴルフR」、フルモデルチェンジを遂げた「M135」、そして集大成となるファイナルエディションの「A 45 S」の豪華な3モデルたち。新時代の幕開けを予感させる豪華ホットハッチの対決を堪能してほしい。(GENROQ 2025年5月号より転載・再構成)

Volkswagen Golf R Advance
BMW M135 xDrive
Mercedes-AMG A 45 S 4Matic+ Final Edition

それぞれの個性の違いに驚く

フルモデルチェンジしたばかりのBMW 1シリーズ最強モデルM135 xドライブ、マイナーチェンジで改良されたVW ゴルフR、最終限定モデルのメルセデスAMG A 45 S 4マティック+の豪華3モデルで比較試乗をした。
フルモデルチェンジしたばかりのBMW 1シリーズ最強モデルM135 xドライブ、マイナーチェンジで改良されたVW ゴルフR、最終限定モデルのメルセデスAMG A 45 S 4マティック+の豪華3モデルで比較試乗をした。

2.0リッター以下の4気筒ターボを横置きし、駆動はAWD。ボディは5ドアのハッチバック。誰かがそんな規則を提唱しているのだろうか? そう思えるくらい、今回の3台は意図的に近寄って、つばぜり合いをしている。

今回はドイツメーカーによるコンパクトハッチの頂上対決となる。「BMW M135xドライブ」は昨年末にフルモデルチェンジを果たした1シリーズの最速モデルだ。車名からもわかる通りMパフォーマンスモデルであり、300PSを発生する直列4気筒ターボを搭載する。

一方、AMGグリーンヘルマグノというカラーリングやストライプ等々とにかく賑やかな1台が「メルセデス AMG A 45 S 4マティック+ファイナルエディション」だ。その名の通りシリーズ最終の限定車となる。当代最強と言われるM139型ユニットは2.0リッターの排気量から実に421PSを絞り出す。

13PS出力が向上したゴルフR

最新のBMWと最終限定のメルセデスAMGの挑戦を受けて立つのはフォルクスワーゲンの「ゴルフR」だ。2022年にデビューしたモデルだが、先頃マイナーチェンジを施されたばかり。特筆すべきは前期型で320PSだった最高出力が333PSまで引き上げられていること。ボディカラーは今回も「ゴルフRといえば!」のラピスブルーだった。

3台を並べて観察してみると、アルピンホワイトのM135のオーラのなさが気になった。BMW Mと白いボディは相性が良いはずだが、異彩を放つAMGと、ボディカラーだけで「速いゴルフ」を印象付けることに成功しているフォルクスワーゲンと並ぶと分が悪い。まるでベーシックグレードのように見えてしまうのだ。ホイールのデザインも他の2台と比べると攻め切れていない感じ。ともあれ完全初物のM135から乗ってみることにした。

室内はMスポーツシートのおかげでスペシャリティ感が備わっていた。ステアリングリムの頂点やパドルシフトに赤いアクセントが入っているのもMっぽい意匠といえる。

ドライバビリティに優れたM135 xドライブ

事前に聞いていたのは、M135は乗り心地がいまいちということ。ところが走りはじめてみるとむしろ逆で、路面の凹凸を感じさせないフラットで静かな走りをする。と思ったのだが、それは滑らかな路面を低速で走っているからだとわかった。路面が変わると急にザラザラとし出すことがあるし、凹凸はスッと吸収することもあれば、バスンッとボディブローが入るときもある。けっこう気まぐれな感じなのだ。

とはいえ硬くて軽いボディは最新世代のBMWならでは。300PSのエンジンも必要にして十分なパワーが感じられる。走行モードもモニターの中で選ぶ今どきのタイプなのだが、スポーティな走りを期待している人にとってはうれしくないだろう。エンジンやアシが今どういう状態かという説明が足りないのだ。グッドイヤー製のイーグルF1タイヤもショルダーが丸い感じがステアリング越しに伝わってきて、期待したほどのガシッと路面を掴む感じが伝わってこなかった。M135は想像していたよりもバランス型?(乗り心地は除く)という印象である。

次はメルセデスAMG A 45 Sに乗ってみた。先代では365PSだったがフルモデルチェンジにより421PSに到達。だが時代を席巻した恐竜もついに最終期を迎えている。

3台の中で最も獰猛なA 45 S 4マティック+

ファイナル限定のエナジードリンクのようなエクステリアは好みが分かれるところかもしれないが、室内は黄色いアクセントやバックスキン調の素材がほどよくスポーティな雰囲気を主張している。スタートボタンを押すと、そこからはもう音も加速も、とてもCセグメントとは思えないAMG劇場のはじまりだ。

A 45 Sの走りで印象的なのはキレの良さに尽きる。ステアリングのダイレクト感もそうだし、エンジンと8速DCTの掛け合いも見事としか言いようがない。またステアリング上のダイヤルで操るドライビングモードも変化がわかりやすい。

クルマの不意を突くようにスロットルを踏み込んでも、瞬間的に鋭い加速が繰り出されるし、まるでパワースーツを着ているような感覚で、自分が無敵になった気になれる。もしカーチェイスが競技としてあったらA 45 Sが最強に違いない。

ゴルフRの最新インフォテインメントシステムは使い勝手◎

盤石のA 45 Sと比べると、M135は曖昧な部分が多くてどうにも分が悪い。といってもMパフォーマンスモデルとAMGのトップモデルを比べること自体がナンセンスなのだが。そんな2台に対し後期型となったゴルフRはどうなのか?

これがしっとりして、奇をてらった感じもなく実に良かった。乗り心地がしっとりというよりも、クルマ全体が熟成され角が取られている感じなのだ。加速はA 45 Sのような暴力的な感じはしないが、それでもスピードの伸びは恐ろしくいい。前期型のゴルフRを試乗したのがずいぶん前だったので比較はできないが、古い感じは一切しなかった。

ゴルフRの走りで印象的だったのはパワートレインとアシのバランスの良さだった。まるでライトウエイトスポーツカーをドライブしているときのようにロールスピードやコーナリングの挙動をスロットルでコントロールできる。

特徴的なカーブドディスプレイが魅力のM135 xドライブ

それがゴルフRの美点だと気が付いたのは、A 45 Sにその感覚がなかったからでもある。加減速とコーナリングを別個にコントロールしているような感じで軽快感のようなものはあまり感じられなかった。

ゴルフRでさらにペースを上げてみると興味深いハンドリング特性がわかってきた。スロットルオンの方が明らかに曲がり、スロットルオフではアンダーステア方向になってしまう。つまり一般的な感覚と逆なのだ。これはリヤデフの左右に仕込まれたRパフォーマンストルクベクタリングの効果で、ターンインを終えたあとはスロットルを積極的に入れ驚速コーナリングが楽しめる。

同じような走りをA 45 Sで試してみたのだが、うまくいかなかった。パワーがオーバシュートしがちで、ブレーキも効きはじめが少し唐突。すぐにスタビリティコントロールが介入する感じも気になった。

ファイナルエディションの装備が豪華なA 45 S 4マティック+

しかもペースを上げてもオンザレールを保つゴルフRに比べ、A 45 Sはあっさりとアンダーステアが顔を出す。A 45 SもリヤにAMGトルクコントロール(トルクベクタリング)が付いているはずだが、タイヤのグリップに余裕がないのか、ゴルフRのような効果は感じられなかった。マジメに走り比べると、迫力こそあれA 45 Sのそれはオールドファッションに感じられたのである。

M135はペースに関係なくエンジンとアシの関連性がよかったが、それでもゴルフRの敵ではないように感じた。まだデビューしたばかりということもあるので今後に期待したいが、それでもBMWがこの争いで成果をあげるのであれば本物のMを用意しなければならないだろう。

バトルの勝者はゴルフR!

自動車ジャーナリスト吉田拓生が勝者に挙げたのはバランスに優れたゴルフRだった。死角もなく、誰でもその速さを享受できるモデルに仕上がっている。
自動車ジャーナリスト吉田拓生が勝者に挙げたのはバランスに優れたゴルフRだった。死角もなく、誰でもその速さを享受できるモデルに仕上がっている。

刺激や個性を求めるのであればA 45 SやM135もありだが、バランスの良さ、死角のなさでは後期型のゴルフRが抜きんでている。Cセグハッチの世界を創ってきたメーカーらしい横綱相撲である。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年5月号

SPECIFICATIONS

フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス

ボディサイズ:全長4295 全幅1790 全高1460mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1520kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:245kW(333PS)/5600-6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2100-5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/35R19235/35R19
車両本体価格:749万9000円

BMW M135 xドライブ


ボディサイズ:全長4370 全幅1800 全高1450mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1570kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:221kW(300PS)/5750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/45R18
車両本体価格:698万

メルセデスAMG A 45 S 4マティック+ファイナルエディション


ボディサイズ:全長4455 全幅1850 全高1410mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1670kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:310kW(421PS)/6750rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/5000-5250rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/35ZR19
車両本体価格:1150万

【問い合わせ】

フォルクスワーゲン カスタマーセンター
TEL 0120-993-199
https://www.volkswagen.co.jp/

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

新型1シリーズのトップモデルに君臨するM135。新型1シリーズの出来はいかに?

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「メルセデス AMG A 45 S 4MATIC+ Final Edition」のエクステリア。

個性的な3色を採用した限定300台モデル「メルセデス AMG A 45 S 4MATIC+ Final Edition」が登場

メルセデス・ベンツ日本は、スポーツコンパクトモデル「Aクラス」の特別仕様車「メルセデス AMG A 45 S 4MATIC+ Final Edition」を発表。全国のメルセデス・ベンツ正規販売店ネットワークを通じて、限定300台のオーダー受け付けをスタートした。カスタマーへのデリバリーは2024年11月下旬を予定している。

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…