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M3(E36)
可変吸気システムVANOSを初採用

1993年、BMWはモータースポーツを統括する組織としてBMWモータースポーツ社を設立し、「マクラーレン F1」用の6.1リッターV12DOHC48バルブ・エンジンの開発、供給を行うようになる。一方でそれまで市販のMモデルの開発、生産を手掛けていた部門に関しては、BMW M社(BMW M GmbH)と改称することとなった。
その直前の1992年11月、BMWは1990年にデビューしたE36型「3シリーズ」をベースとした2代目「M3」を発表する。すでにグループA規定のツーリングカーレースの終焉が決まっていたこと、またドイツを中心に経済成長の鈍化にともない「見かけより中身」いう風潮が広まったこと、環境保護に対する意識が高まったことも相まって、2ドアクーペをベースとしているものの、エクステリアは専用のエアダム、サイドスカート、リヤスポイラーを備えただけの比較的大人しいものとなった。
またベースとなった3シリーズがエンジンの自由度を高めるためにロングノーズのデザインになったこともあり、286PSを発生する2990cc直列6気筒DOHC24バルブの“S50”型ユニットを搭載。このエンジンは外寸こそ325iのM50B25型ユニットに似ていたものの、シリンダー、ブロック、クランクシャフトなどそのほとんどの部分は専用設計となっており、VANOSと呼ばれる可変吸気システムがBMWとして初めて採用されているのもトピックであった。
マイナーチェンジでエンジン排気量が拡大


サスペンションはE36から変更となったフロント・ストラット、リヤ・マルチリンクの組み合わせだが、M3においてはコイルスプリング、ダンパー、スタビライザーなどを強化。加えてパワーアップに対応するため、リヤのドライブシャフトを850iから流用、前後のベンチレーテッド・ディスクブレーキの径を大型化するといった強化も行われている。
これらの改良により、2代目M3は0-100km/h加速5.7秒、最高速度250km/hを記録。さらに1994年モデルから2ドアカブリオレが追加されたほか、同年12月からは4ドアセダンも用意されるなど、先代でのスパルタンなホモロゲモデルという立ち位置から、3シリーズの上級スポーツモデルとしての色合いを濃くしていく。
そして1995年9月にはマイナーチェンジを実施。エンジンの排気量が3201ccに拡大され、最高出力321PS、最大トルク350Nmへとアップ。ギヤボックスも5速MTから6速MTへと変わり、0-100km/h加速は5.5秒へと向上している。
このマイナーチェンジは1995年11月にセダン、1996年2月にカブリオレにも適用。また1997年には2ペダル・セミATの6速SMG仕様も追加されている。
「M3 GTR」のロードバージョンも





そのほかの限定モデルとしては、1994年にFIA-GTクラス2、IMSA GT用のホモロゲモデルとして、295PSを発生するS50B30型ユニットを搭載し、ダブルリヤウイング、強化サスペンション、リム幅を広げた17インチホイールを採用した「M3 GT」を356台発売した。
またアメリカでは、エアコン&ラジオレスとし、アルミ製ボンネット、大型リヤウイングなどを装着したM3ライトウェイトを発売。面白いところではADACドイツGTカップ選手権用に、ワイドボディを纏うなど大規模な改造が加えられた「M3 GTR」のロードバージョンも1台だけ製造されている。
結局、2代目M3は卓越した動力性能とバランスのよいシャシーが評価され、1998年までにクーペが4万6525台、4ドアセダンが1万2603台、カブリオレが1万2114台製造される成功作となった。その成功を受け、1996年には3シリーズ・コンパクトをベースとしたM3のプロトタイプも作られたが、残念ながら実現にはいたらなかった。