【世界の自動車メディアに学ぶ表現学 vol. 01】3世代「ポルシェ 911 ターボ」比較試乗記の表現を紹介

“ギャラクシー級の進化” を遂げた993型ポルシェ 911 ターボって?【世界の自動車メディアに学ぶ表現学 vol. 01】

本誌『GENROQ』2025年4月号に掲載された「ポルシェ 911 ターボ」世代別の比較試乗記から、興味深い英語表現をピックアップした。
本誌『GENROQ』2025年4月号に掲載された「ポルシェ 911 ターボ」世代別の比較試乗記から、興味深い英語表現をピックアップした。
ワールドプレミア(世界初公開)の様子や日本未導入の新車試乗など、海外メディアならではの情報に簡単にアクセスできるようになった今日このごろ。外国語による表現の真意が果たしてどこにあるのか迷うことも多い。この連載では、月刊『GENROQ』本誌に掲載された海外ジャーナリストの記事をベースに、その自動車の世界観を紹介する。第1回は『GENROQ』2025年4月号から。

「ハイオクタンなダンス」を踊る911

「ポルシェ 911」の "ハイオクタンなダンス" は第1世代の「930」から。
「ポルシェ911」の “ハイオクタンなダンス” を第1世代の「930」から始めた(写真はすべてイメージ)。

第1回は、1989年まで生産された第1世代の「ポルシェ 911 ターボ (タイプ930)」と1995年に登場した「タイプ993」、および現行「911 ターボ S (タイプ992)」の比較試乗記を教材にした(独「Auto Zeitung (アウト ツァイトゥング)」などに寄稿するマルセル・キューラー氏が執筆)。

タイトルは “The Porsche 911 Turbo is considered the German super sports car par excellence. We asked three formative generations of the icon to a high-octane dance on the circuit.” とある。日本語に訳すと、「ポルシェ911ターボはドイツのスーパースポーツカーの最高峰である。」と始まり、「そのアイコンとなる3世代に、サーキットで “ハイオクタンなダンス” を踊ってもらった。」と続く。「サーキットでダンス」というのは高速走行の比喩だということがわかるが、その “ダンス” を “ハイオクタン” としているのが面白い。

言うまでもなくハイオクタンはオクタン価が高く燃焼効率の良いガソリンのことだが、そこから派生して、俗語では「エネルギッシュな」とか「精力的」「活動的」といった意味に用いられる。英英辞典には、 “vigorously energetic or forceful”、つまり「勢いが良く活動的または力強い」とある。「スーパースポーツカーの最高峰」でサーキットを攻めることを「ハイオクタンなダンス」というのはクルマ雑誌らしい表現だろう。

カラカラに乾いたサスペンション?

初代の911ターボ(930)の足まわりは “Bone-dry suspension” と表現されている。直訳すれば「骨まで乾いた」となり、カラカラの状態を意味する。ここでは恐らく、「まったく柔軟性がない」とか「極端に硬い」といったニュアンスで使われているのだろう。

「ドライバーに路面の砂1粒1粒まで伝える」(informing the driver of every little grain of sand on the road)とあることから、初代911ターボの足まわりが路面の非常に細かい凹凸までドライバーに伝えるほどダイレクトであることを強調する表現だろう。基本的にポジティブな印象はもたなかったようだ。

加速と切れ味が「銀河を超えた」993

一方のタイプ993に対しては、筆者のキューラー氏は大幅な進化を感じたようだ。ダッシュボードのレイアウトや直立気味のペダル類といったインテリアは初期の911を彷彿とさせるという。その一方で実際に走らせた感想を、「930の古さからは “galaxies away” だ」と言う。2台の間に存在する進化の度合いを「銀河と銀河の距離ほど離れている」と極端に表現しているのは面白い。

後編となる次回は、この第2世代(993)と現行モデル(992)の加速力について、そのインパクトを表現する文章を紹介する。

PHOTO/PORSCHE AG
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号

新型ポルシェ 911GT3の驚異の進化に注目!『GENROQ 2025年4月号』発売「永遠のポルシェ」特集【動画】

『GENROQ 4月号』は最新のポルシェを大特集。空力特性や走りが大幅な進化遂げた新型911GT3のサーキットインプレッション、911S/T国内初試乗、最新BEVのマカン4対タイカンターボ・クロスツーリスモなど盛りだくさんの第1特集となっています。第2特集は人気がますます高まっているプレミアムSUVの世界に迫ります。さらにモダンかつ上質になったロールス・ロイス・カリナン・シリーズⅡのインプレッションやオフロード最強と言われるディフェンダーOCTA海外試乗記を掲載。そのほかフェラーリ12チリンドリ・スパイダーの初インプレッションなど、見逃せないコンテンツが詰まった1冊です。

キーワードで検索する

著者プロフィール

石川 徹 近影

石川 徹

PRエージェンシーやエンジニアリング会社、自動車メーカー広報部を経てフリーランスに。”文系目線”でモビ…