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「ハイオクタンなダンス」を踊る911

第1回は、1989年まで生産された第1世代の「ポルシェ 911 ターボ (タイプ930)」と1995年に登場した「タイプ993」、および現行「911 ターボ S (タイプ992)」の比較試乗記を教材にした(独「Auto Zeitung (アウト ツァイトゥング)」などに寄稿するマルセル・キューラー氏が執筆)。
タイトルは “The Porsche 911 Turbo is considered the German super sports car par excellence. We asked three formative generations of the icon to a high-octane dance on the circuit.” とある。日本語に訳すと、「ポルシェ911ターボはドイツのスーパースポーツカーの最高峰である。」と始まり、「そのアイコンとなる3世代に、サーキットで “ハイオクタンなダンス” を踊ってもらった。」と続く。「サーキットでダンス」というのは高速走行の比喩だということがわかるが、その “ダンス” を “ハイオクタン” としているのが面白い。
言うまでもなくハイオクタンはオクタン価が高く燃焼効率の良いガソリンのことだが、そこから派生して、俗語では「エネルギッシュな」とか「精力的」「活動的」といった意味に用いられる。英英辞典には、 “vigorously energetic or forceful”、つまり「勢いが良く活動的または力強い」とある。「スーパースポーツカーの最高峰」でサーキットを攻めることを「ハイオクタンなダンス」というのはクルマ雑誌らしい表現だろう。
カラカラに乾いたサスペンション?


初代の911ターボ(930)の足まわりは “Bone-dry suspension” と表現されている。直訳すれば「骨まで乾いた」となり、カラカラの状態を意味する。ここでは恐らく、「まったく柔軟性がない」とか「極端に硬い」といったニュアンスで使われているのだろう。
「ドライバーに路面の砂1粒1粒まで伝える」(informing the driver of every little grain of sand on the road)とあることから、初代911ターボの足まわりが路面の非常に細かい凹凸までドライバーに伝えるほどダイレクトであることを強調する表現だろう。基本的にポジティブな印象はもたなかったようだ。
加速と切れ味が「銀河を超えた」993


一方のタイプ993に対しては、筆者のキューラー氏は大幅な進化を感じたようだ。ダッシュボードのレイアウトや直立気味のペダル類といったインテリアは初期の911を彷彿とさせるという。その一方で実際に走らせた感想を、「930の古さからは “galaxies away” だ」と言う。2台の間に存在する進化の度合いを「銀河と銀河の距離ほど離れている」と極端に表現しているのは面白い。
後編となる次回は、この第2世代(993)と現行モデル(992)の加速力について、そのインパクトを表現する文章を紹介する。
PHOTO/PORSCHE AG
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号