【オートモビルカウンシル2025】ケータハムのフル電動スポーツカー「プロジェクトV」デザイナーにインタビュー

来年登場のフル電動スポーツカー「プロジェクトV」のデザイナーインタビュー「毎日乗れるケータハムに」

チーフデザイナー、アンソニー・ジャナレリ氏。自らも「ケータハム セブン」を所有している。
チーフデザイナー、アンソニー・ジャナレリ氏。自らも「ケータハム セブン」を所有している。
ケータハムは2026年にEVクーペ「プロジェクトV」の投入を予定している。そのチーフデザイナー、アンソニー・ジャナレリ氏が来日し、オートモビル・カウンシル2025を訪れたのでプロトタイプを前にインタビューした。

ANTHONY JANNARELLY
CHIEF DESIGNER

魅惑的で時代を超越したシルエットが自慢の「プロジェクトV」。
魅惑的で時代を超越したシルエットが自慢の「プロジェクトV」。

「ケータハム プロジェクトV」は、ケータハムらしいシンプルでミニマルなスポーツカー目指したフル電動スポーツカーだ。カーボンファイバーとアルミニウムの複合シャシーは、2+1仕様で車重1190kgを目標としている。200kW(272PS)を発揮するシングルモーターをリヤアクスルに搭載し、55kWhのリチウムイオンバッテリーが組み合わされ、0-100km/h加速4.5秒未満、最高速度230km/h、WLTP航続距離400kmを謳う。そんなプロジェクトVのチーフデザイナーを務めるアンソニー・ジャナレリ氏に、プロジェクトVに込めた思い、自身のデザイン哲学のことを訊いた。

──プロジェクトVのローンチが近づいてきました。

正式なローンチは2026年で、生産開始は2027年頃になるでしょう。軽量で楽しいクルマにするため、パッケージの選定に時間がかかっています。昨年発表したヤマハのeアクスルが非常に高いポテンシャルを持っています。バッテリーを車両中央に搭載して、これはハンドリングや重心も有利です。電気モーターの組み合わせや、ソフトウェア次第でクルマの挙動を細かく調整でき、楽しさを引き出せるでしょう。

──クラシカルでありながらとても美しいデザインです。心がけたことは?

ケータハム・セブンの基本はシンプルでミニマリズムにあり、軽量で運転が楽しいという本来の機能のためにデザインされます。このプロジェクトVでは、この哲学をスポーツクーペのアーキテクチャーに応用し、魅惑的で時代を超越したシルエットを生み出しました。ただしクルマの下部は非常に技術的です。そこに電気自動車だということが現れています。それ以外はとてもクラシカルです。EVの場合、空力的に優れたデザインができます。例えばホイールの位置を自由に決められます。エンジンを積むための大きなスペースが必要ないため、非常に丸みを帯びた、美しいプロポーションの自由度が高くなります。

──このスタイリングは新しい時代を感じさせるものですが、一方で古くからのケータハムのファンの中には、オープンホイールのフォーミュラカーのようなスタイリングを期待する人もいます。

「ケータハム セブン」は現在も生産されています。だからこそケータハムとして、セブンと競合しない新たなラインナップが必要でした。他の自動車メーカーも用途に合わせて複数のラインナップを持っていますよね。このプロジェクトVは、日常使いができるスポーツカーという位置付けです。例えば「ポルシェ 911」のように。セブンは用途が限られているので、もっと日常的にケータハムを楽しめるようにしたかったのです。

──近年のEVに対する逆風をどのように考えますか?

たしかに日本やイギリスで現在EVがあまり売れていませんが、これは技術がまだ十分成熟していないからでしょう。都市型コンパクトカーやスポーツカーには向いています。特にスポーツカーの場合、EVはトルクが豊富で楽しい走りを実現できます。長距離移動は難しいですが、スポーツカーのように楽しさを重視した用途ならば問題ありません。20分の充電も休憩なら許容できます。メンテナンスも安価で、サーキットでの使用にも向いていると思います。

──このプロジェクトのデザイン契約をしていますが、次のプロトタイプの製作予定はありますか?

私はケータハムのメインデザイナーとして活動していますが、自分のデザイン会社も持っています。次のデザインを考えるにはまだ早いですが、プロトタイプ段階でプロジェクトVの進化版を作っています。ただし基本的なスタイルは変わりません。まずはこのクルマを生産に乗せることが先決です。私はガソリンエンジン車も好きですが、選択肢としてEVもあるべきだと思います。現代の4気筒エンジン車は静かすぎて楽しさが減っていますから、電気でもそれほど差はないと思います。個人的には音楽を聴きながら走るのも好きですし、室内が広く実用的な点も魅力です。

──ドバイでケータハム セブンを所有しているそうですね。

はい。私がドバイに移って、初めて買った車が1996年型セブンでした。ドバイでは珍しく、10台ほどしかありません。雨が降らないので駐車も困りません。バイクのように楽しめ、運転そのものが楽しいですね。

──Wモーターズの「ライカン ハイパースポーツ」もデザインしました。

その通りです。私は個人的にケータハムのような軽量で楽しいクルマが好きなので、その発想から妻でも快適に乗れるクローズドキャビンのライカン・ハイパースポーツをデザインしました。それが現在のプロジェクトVにつながっています。他にもプロジェクトVの前にデザインしたのが、フェラーリ 360モデナをベースとした「アエラ60」があります。これはプロジェクトVとはまったく異なるコンセプトです。

プロジェクトVは、EVであってもケータハムらしく軽量でシンプルであることを趣旨として、最低価格帯は8万ポンド(約1500万円)未満を目標に開発中だという。

現在開催中の東京オートサロン 2025において、ケータハム・カーズは、フル電動スポーツ「V シリーズ」に台湾の「XING モビリティ」が開発した液浸冷却バッテリーパックを採用すると発表した。

ケータハムのEV「プロジェクト V」に「XING モビリティ」の液浸冷却バッテリーパックを搭載【東京オートサロン2025】

千葉の幕張メッセにおいて現在開催中の「東京オートサロン 2025」において、英国のケータハム・カーズは、開発中のフル電動スポーツ「プロジェクト V」に、台湾の「XING モビリティ」が開発した液浸冷却バッテリーパック「IMMERSIO CTP」を採用すると発表した。

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…