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Mercedes-Benz EQS SUV
懐かしのフランクフルト・メッセに用意されていたのは・・・
実はフランクフルトで開催されたメルセデス EQEの国際試乗会の際に、シークレットイベントが用意されていた。ホテルからEQVに乗せられて向かった先は、懐かしのフランクフルト・メッセ。2021年からは場所をミュンヘンに移してしまったが、それまでは2年に1度、通称フランクフルトショーと呼ばれるIAAが開かれていた場所である。端から端まで、歩くだけで20分以上はかかるであろうその広大な敷地内にはいくつもの展示会場が点在していて、フランクフルトショーの取材では毎度精根尽き果てた。
そんなメッセの中の展示場のひとつに到着すると、中には大きな暗幕が貼られた簡易版のスタジオがあって、暗幕をめくって中に入ると、そこにはきれいにライティングされたSUVが置かれていた。その時点ではまだ発表前のEQS SUVだった。
車名に「SUV」を冠するナゾ
EQS SUVは、EQSで初採用となったBEV専用のプラットフォームであるEVA2を共有するモデルで、EQS、EQEに続く第3弾となる。目の前に置かれた実車にも興味はあるのだけれど、個人的にどうしても知りたかったのはその車名の由来である。EQSのSUV版も用意されているというのはEQSの試乗会の時に聞いていたけれど、その車名がまさかの“EQS SUV”とは「そのままじゃん!」と思わず突っ込みたくなるような安易さである。
その理由を聞いても「EQSのSUVなので・・・」という曖昧な答えしか返ってこなかった。メルセデスは過去にもネーミングで右往左往したことが何度もある。数字の後に付いていたアルファベットを頭に持ってきたり(500E→E500)、MLクラスがMクラスになっていまではGLEになったりと、ラインナップが拡充されるとそれまでの名付けの法則が破綻をきたしてしまうのだ。
現在、EQを名乗るモデルはEQAからEQSまであるけれど、EQAとEQBとEQCはSUVだがEQS SUVのように“SUV”とは付いていない。一方で、もし今後CクラスサイズのBEVのセダンが登場した場合は、EQC SEDANと名乗るのだろうか。ちなみにEVA2を共有する車種はもう1台予定されていて、その車名は“EQE SUV”だそうである。いまのところ、BMWは“i”の記号を使って車名をうまいこと整理しているが、今後車種が増えてくると整合性が取れなくなるかもしれない。BEVの拡充によるネーミング問題は、おそらくどのメーカーも今後直面することになるだろう。
2列シート/3列シートの2タイプを用意
で、EQS SUVである。全長は5125mm、全幅は1959mm、全高は1718mm。ホイールベースはEQSと同じ3210mmである。シートは2/3の5人乗りが標準、2列目シートを独立式2脚とした4人乗りも用意されている。さらにふたり掛けの3列目シートをオプションとした。1列目と2列目シートのヘッドクリアランスはいずれも1000mmを超え(1035mm/1030mm)、3列目でも900mmを確保。メルセデスは安全性を考慮してGLBやEQBの3列目シートに身長制限を設けているが、このクルマでは制限なし。「とはいっても大柄の大人には少し窮屈だと思います」とのことだった。
2列目シートには電動調整機構が標準装備され、前後に最大130mmまで移動可能。3列目シート装着時にはショルダー部にあるスイッチを押せば、自動的にシートが前方へ動いてバックレストも倒れ、3列目シートへのアクセスルートを確保するようになっている。ラゲッジルーム容量は、2列目シートを1番後ろまで下げて645リットル、1番前の状態で880リットル。さらに2列目を倒せば最大2100リットルまで拡大できる(3列目シート装着時は最大2020リットル)。
航続距離は最長660km
パワートレインの構成は同じプラットフォームを使うEQSやEQEと基本的に変わらない。eATSと呼ばれるモーターと補機類をひとつのハウジングに収めたユニットをリヤのみ、あるいは前後に置く。現時点では後輪駆動のEQS 450+と4輪駆動のEQS 580 4MATICの存在が明らかにされている。リヤに置くモーターは車重の増加を考慮してEQSよりも出力の高いものを採用しており、450+では360ps(EQS 450+は333ps)を発生し、580では544psに達する。
航続距離の詳細は公表されていないが、後輪駆動の車重がもっとも軽いモデルで最大660kmと言われている(バッテリー容量はEQSと同じ107.8kWh)。各種条件が揃うと、前車を追尾してクルマが完全に停車するまでドライバーはペダル操作をすることなく、回生ブレーキを使用してエネルギー回収率の最適化を図ったブレーキングが可能となる。DYNAMIC SELECTはECO、COMFORT、SPORT、INDIVIDUALに加え、4MATIC仕様にはOFFROADが追加設定された。
EQSにあってEQS SUVにはないもの
フロントが4リンク、リヤがマルチリンクで、電制ダンパーと空気ばねを組み合わせたエアサスペンション(AIRMATIC)を標準装備する点はEQSと同じである。エアサスは乗員や荷物の量を問わず常に路面に対してボディを水平に保つだけでなく、110km/h以上の速度ではモードによって10mm/15mm車高を下げ、80km/hまで減速すると元の車高に戻る仕組みである。また。OFFROADを選ぶと自動的に25mm上がり、70km/hを超えると標準に戻るが70km/h以下になるとまた25mm上がるようになっている。さらに最大舵角4.5度の後軸操舵もEQS同様に標準装備。オプションには最大10度の操舵角を持つバージョンも用意されており、OTAアップデートを通じて設定できる。最小回転半径は4.5度で5.9m、10度で5.5mとなる。
ザックリと言えば、EQS SUVの中身はまったくその名の通り、ほぼEQSである。一方で、個人的に少しガッカリしたのはそのスタイリングだ。暗幕の中に隠れたEQS SUVと対面した瞬間、実は思わず言葉を失ってしまった。あまりにもコンサバティブで、大きなEQCにしか見えなかったからである。
EQSを初めてみたときには、なんだか新しい種類のクルマというか、BEVがデザインに与える影響やアイデアを感じ取ることができて感心したのだけれど、今回はそういう気持ちがまったくわいてこなかった。数を売るために保守的になったのか、あるいはさまざまな制約を考慮するとこうならざるを得なかったのかは定かではないけれど、いささか残念ではある。
REPORT:渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ EQS SUV 450+
ボディサイズ:全長5125 全幅1959 全高1718mm
ホイールベース:3210mm
車両重量:-kg
モーター:永久同期式
最高出力:265KW(360ps)
最大トルク:568Nm
駆動用種電池:リチウムイオン電池
電池容量:107.8kWh
駆動方式:RWD
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
航続可能距離:-
メルセデス・ベンツ EQS SUV 580 4MATIC
ボディサイズ:全長5125 全幅1959 全高1718mm
ホイールベース:3210mmmm
車両重量:-kg
モーター:永久同期式
最高出力:400kW(544ps)
最大トルク:858Nm
駆動用種電池:リチウムイオン電池
電池容量:107.8kWh
駆動方式:AWD
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
航続距離:-