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Lamborghini Urus × Aston Martin DBX707
ランボルギーニのベストセラー vs アストンマーティンの新アスリート
ランボルギーニ ウルスは、同社初のSUVとして2017年4月に登場。SUVセグメントの常識を塗り替える圧倒的なパフォーマンスとデザインが評判を呼び、販売台数/売上高/収益において、ランボルギーニ史上最大の成功作となった。2018年から2021年末までに、全世界に向けて1万6000台のウルスがデリバリーされている。
サンタアガタが放つスーパーSUVの競合として、今注目すべき1台がアストンマーティン DBX707。フロント側にミッドマウントする4.0リッターV型8気筒ツインターボユニットは、最高出力707ps、最大トルク900Nmを発生というハイパフォーマーである。
ウルス vs DBX707。2台の実力を比較検証してみたい。
加速性能ではDBXが“やや”優勢
ウルスは最高出力650hp・最大トルク850Nmを発揮する4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンを搭載。0-100km/h加速は3.6秒、最高速度305km/hと、SUVながら並みのオンロードスポーツカーを凌ぐパフォーマンスを実現する。ランボルギーニでは、この性能を有するウルスを単なるSUVではなく、「SSUV=スーパー・スポーツ・ユーティリティ・ビークル」と称している。プラットフォームは、ポルシェ カイエンやベントレー ベンテイガ、アウディ Q8などと共通のフォルクスワーゲン・グループ自慢のMLB Evoがベースだ。
一方のDBX707は、アストンマーティン初のSUVとして2019年にデビューしたDBXの高性能仕様。SUV専用として白紙から開発したプラットフォームに、接着アルミニウム構造の軽量・堅牢なボディを組み合わせるという点はベース車と変わらない。注目は、フロント側にミッドマウントする4.0リッターV型8気筒ツインターボユニットの“強化”ぶりで、車名に冠するように最高出力は707psを発生。さらに、2600〜4500rpmの回転域で900Nmの最大トルクを発揮する。0-100km/h加速の公称値はウルスを0.3秒上回る3.3秒。最高速度も310km/hに達している。
ボディはウルスの方が長く広く、そして低い
続いて車体構成を検証してみよう。公開されているボディディメンション、パワースペックは以下の通りだ。
ランボルギーニ ウルス
ボディサイズ:全長5112×全幅2016×全高1638mm
ホイールベース:3003mm
車両重量:2200kg
パワートレイン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:478kW(650ps)/6000rpm
最大トルク:850Nm/2250-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク(エアサス)
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
0-100km/h加速:3.6秒
最高速度:305km/h
アストンマーティン DBX707
ボディサイズ:全長5039×全幅1998×全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
パワートレイン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:520kW(707ps)/6000rpm
最大トルク:900Nm/2600-4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク(エアサス)
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
0-100km/h加速:3.3秒
最高速度:310km/h
ボディディメンションは、ウルスの方がわずかに長く幅広く、そして背が低いものの、数字上では大きな差は見られない。しかしデザインの方向性は明確に分かれており、直線基調のウルスはどこからみても「まごうことなきランボルギーニ」然としたアバンギャルドなスタイルを採用。かたやDBX707は流れるようなラインと量感的なボリュームをもち、どこかエレガンスを感じさせる様はやはりアストンマーティン流儀といえる。
ウルスが搭載するV8ツインターボエンジンは、基本部分をカイエンやベンテイガと共有するものの、グループ内のエンジンの中では最も力強い。インテークまわりやカムシャフト、エキゾースト、ターボユニットなどはすべて新たに設計されている。トランスミッションは8速トルコンATを組み合わせる。
DBX707はノーマルのDBX同様、AMGから供給を受けてアストンマーティンが改良したV8ツインターボを採用。このターボを大径化し制御プログラムを改良することで+157ps/+200Nmを上乗せしている。なお、トランスミッションは従来のトルコン付きAT(メルセデスでいう9G-TRONIC)から、湿式多板クラッチを使った9速AT(AMGスピードシフトMCT)に置き換えられている。
いずれもアクティブ4WD+48Vシステム+エアサスペンションを採用
ウルス、DBX707ともに、その屈強なエンジンパワーを余すことなく路面に伝えるべく、アクティブ4WDを採用している。
ウルスはトルセン式のセンターデフを使用し、基本的には前後40:60の比率でトルクを配分。最大でフロント70%、リヤ87%まで可変配分する。複筒式のエアサスを用いた足まわりは最低地上高158〜248mmと最大で90mmの車高調整が可能。
DBX707もやはり、(同社ではアクティブトランスファーケースと呼ぶ)センターデフを搭載し、ここから前後にカーボン製プロペラシャフトを伸ばして前/後輪を駆動する形式。電子制御油圧式でクラッチの圧着率により前後の駆動力配分を可変し、通常は前後47:53、状況によってはリヤに最大100%の駆動力を配分する。こちらの最低地上高は190〜235mmの範囲で調整することができる。
両車ともにリヤデフを経由するアクティブトルクベクタリングを採用。アクティブアンチロールバーやアダプティブエアサスペンションと合わせて、48Vシステムにより制御する仕組みとなっている。
オン/オフ両方に“キャラ変”可能
ウルスはランボルギーニ車にお馴染みのANIMAセレクターを設置。オンロードモードに「STRADA」「SPORT」「CORSA」、オフロードモードに「NEVE(滑りやすい路面)」「TERRA(砂利道など)」「SABBIA(砂地など)」、そして任意のセッティングにできる「EGO」を用意している。
DBX707は、オンロード用に「GT」「SPORT」「SPORT+」、オフロード用に「TERRAIN」「TERRAIN+」、そして個別に設定できる「INDIVIDUAL」を装備。ノーマルには無い機能として、発進加速でパフォーマンスをフルに発揮できる「Race Start」モードを追加している。
ウルスのブレーキはフロント10ピストン、リヤシングルピストン、さらにカーボンセラミックディスクを組み合わせる鉄壁の構成。タイヤはピレリPゼロを採用し、前245/45ZR21、後315/40ZR21が標準装備となる(オプションで22/23インチを用意)。
DBX707はフロント6ピストン、リヤシングルピストン、そしてウルス同様カーボンセラミックディスクを標準搭載。タイヤもやはりピレリPゼロで、サイズは前285/40YR22、後325/35YR22という設定。
SUVらしいオプションも豊富にラインナップ
この2台で本格的なオフロード走行をしようというオーナーは多くないかもしれないが、レジャーユースも見据えて、両車ともにSUVならではの多彩なオプションを取り揃えている。
ウルスはルーフボックスやスキーバッグ、全天候型マット、ペット用ベルト&カバー、スノーチェーンなどをラインナップ。
しかしオプションで世界観が広がるという点では、DBX707に軍配が上がるだろう。バイクパッケージやゴルフパッケージ、スノーパッケージなどと銘打ち、それぞれのシーンに必要なアクセサリーをセット方式で用意。さらにピクニックセットなど、イギリス車らしい優雅なメニューもリストに入れられている。
リーズナブルなのはどっち?
両車の税込国内販売価格は、ウルスが3068万1070円、DBX707が3119万円。パフォーマンスでもプライスタグの面でも拮抗しているスーパーSUV2台だが、両車ともあまりに強烈なキャラクターを有しているという点では、最終的には「相性」「好み」が勝負を分けるポイントとなるのかもしれない。