ポルシェ 911の同門対決! 911ターボ/GT3/スポーツクラシックを比較検証する

ポルシェ 911の「推し」を検証。買うべきはターボかGT3か、旬なスポーツクラシックか

ポルシェ911 ターボ、911 GT3、911 スポーツクラシックの比較画像
ポルシェは2022年4月28日に、1250台の限定モデル「911 スポーツクラシック」を発表した。911ターボ並みのパワースペックに、MT+後輪駆動を組み合わせた注目のモデルだ。フラッグシップの911 ターボ、自然吸気の911 GT3を比較対象に、その中身を検証する。
ポルシェは2022年4月28日に、992型をベースにした限定車「911 スポーツクラシック」を発表した。1250台のみの取り扱いとなるスペシャルモデルだが、911ファンにとっては見逃すことのできない好事家垂涎の仕上がりとなっている。911 GT3と911 ターボを比較対象にしながら、その魅力的な“レシピ”に迫ってみよう。

Porsche 911 Sport Classic
× 911 Turbo × 911 GT3

パワーのツインターボか、官能の自然吸気か

ポルシェが先ごろ発表した限定車「911 スポーツクラシック」は、911ファンの食指をくすぐる要素のオンパレードで構成されている。現時点(2022年5月)では国内導入についてのアナウンスはないものの、世界1250台の限定販売となれば、一定数の日本市場への割り当てが期待できる。

その仕様から鑑みるに、もしも911 スポーツクラシックを購入検討の俎上にのせるならば、もう片方の天秤にあげるべきは911 GT3か911 ターボとなりそうだ。911 スポーツクラシックと911 GT3と911 ターボ、果たしてどの1台が911の「推し」になるのか。3モデルを比較検証する。

3車3様のキャラクター

911 スポーツクラシックは、911 ターボ同様、VTG(可変タービンジオメトリー)を採用した2基のターボチャージャーを備える3.7リッター水平対向ユニットを搭載。一方、自然吸気ユニットを信条とする911 GT3は、高回転までシャープに吹け上がる4.0リッター水平対向6気筒を採用している。出力/トルクを比較すると以下の通り。

■エンジンスペック■
911 スポーツクラシック=550ps/6750rpm、600Nm/2000〜6000rpm
911 ターボ=580ps/6500rpm、750Nm/2250〜4500rpm
911 GT3=510ps/8400rpm、470Nm/6100rpm

上記のように、911 スポーツクラシックは“ターボとGT3の隙間”を埋める絶妙なパワースペックを与えられていることが分かる。

マニュアルで操りたいならスポーツクラシックかGT3

911 スポーツクラシックの特筆すべきポイントのひとつが、911 ターボに迫る550psを発揮するにも関わらず、7速MTを組み合わせているという点。かたや911 ターボは8速PDKオンリー。つまり911 スポーツクラシックは、「3ペダルMTで操ることができる史上最もパワフルな911」なのだ。

もちろん、“純粋主義”を掲げる911 GT3でもマニュアルギヤボックスの選択肢が用意されている。GT3に組み合わせるのは6速MTで、PDK仕様車よりも軽量でパワーウェイトレシオの向上にも貢献している。なんといっても、自然吸気エンジンの旨味を自分の手で引き出していく作業はこの上なく楽しい。この独特の感覚を味わわせてくれるクルマは、いまや極めて貴重な存在といえる。

しかもスポーツクラシックとGT3は後輪駆動であり、腕に覚えのあるポルシェユーザーは食指を動かされること請け合いだ。とはいえ4WD+ターボが面白味に欠けるということは決してなく、911のポテンシャルを最大限解放させるための最高の“武装”といえる。レジェンドドライバーのヴァルター・ロール氏もその出来を絶賛。「992 ターボはスーパースポーツと呼べるだけのパフォーマンスを持ちながら、誰もが怖がらずにドライブすることができます。オーバーステアもアンダーステアもありません。ただ、信じられないほど速いのです。開発部門には脱帽です」と語っている。

加速性能はターボが圧勝

車重はスポーツクラシックが1570kg、ターボが1640kgと1.5トンを上回るのに対し、MTのGT3は1418kgと圧倒的に軽量。2.78kg/psという優れたパワーウェイトレシオを実現している(スポーツクラシック=2.854kg/ps、ターボ=2.827kg/ps)。軽さは加速性能にも直結する。

■0-100km/h加速■
911 スポーツクラシック=4.1秒
911 ターボ=2.8秒
911 GT3=3.9秒(PDKは3.4秒)

■0-200km/h加速■
911 スポーツクラシック=12秒
911 ターボ=9.7秒
911 GT3=11.9秒(PDKは10.8秒)

0-100km/h、0-200km/h、いずれの数値も911 ターボが圧勝。アスファルトを4輪で掴みあげるようにして猛然と発進するその圧倒的な加速は、4WDのターボだからこそ実現する。

参考までに付け加えると、最高速度は以下のとおり。3台とも300km/h超の設定となっている。日本でその実力を思う存分解放するには、サーキットなどのクローズドコースに出掛けるしかない。

■最高速度■
911 スポーツクラシック=315km/h
911 ターボ=320km/h
911 GT3=320km/h(PDKは318km/h)

ツボを抑えたスポーツクラシックの装備

スポーツクラシックのシャシーは基本的にターボのそれがベース。さらに、専用のチューニングが施された後輪操舵システムや、ポルシェ セラミック コンポジット ブレーキ(PCCB)も標準装備となる。かようにスポーツクラシックには、フラッグシップモデル並みの装備品が惜しみなく与えられている。

外観もノーマルの911とは一線を画す。いわゆる“ナナサンカレラ”風のダックテールをモチーフにしたCFRP製固定式リヤスポイラーを装備。356の面影を色濃く感じさせるグレーのボディカラーも用意している。「スポーツグレーメタリック」と名付けられたこの塗料が911に採用されたのは今回が初めてだ。そこに、レーシーなダブルストライプをハンドペイントで施している。

他にも、1963年当時のポルシェエンブレムをあえて採用したり、356のメーターをイメージしたグリーン基調の回転計、千鳥格子柄のトリム材など、クラシカルなエッセンスをバランス良く散りばめている。

スポーツクラシックはまさしく911ファンのツボを全方位で抑えこんだモデルだが、琴線をくすぐるという点ではGT3の“ツーリングパッケージ”も負けていない。

「性能を誇示せず、控えめな表現を好む高性能アスリート」を標榜するツーリングパッケージ最大の特徴は、大型の固定式リヤウイングを無くしたリヤスタイル。まさしく「能ある鷹は爪を隠す」を地でいくような1台だ。GT3には惹かれるけれど、あの派手なアピアランスは普段づかいにちょっと・・・と躊躇していた向きには、自動展開式スポイラーを備えたツーリングパッケージは絶好の選択肢といえるだろう。

先代スポーツクラシックの価格は2750万円

絶対王者のフラッグシップ、911 ターボは、ポルシェの料理長が自信をもってオススメする看板メニューだ。そのレシピを受け継ぎつつ、MT+後輪駆動という絶妙な塩梅で操る歓びを際立たせた911 スポーツクラシック。そして老舗の自然吸気の味をストイックに守り続けるロードゴーイングレーサー、911 GT3。この3台から1台だけを選ぶのは至難の業だ。野暮は承知のうえで価格を比較すると以下の通り。

■車両本体価格(税込)■
911 スポーツクラシック=国内販売価格未定
911 ターボ=2500万円〜
911 GT3=2296万円〜

現時点でスポーツクラシックの日本導入仕様や時期、価格などは発表されていない。参考までに、欧州での販売価格は27万2714ユーロ(約3750万円)〜とアナウンスされている。ちなみに12台のみが割り当てられた997型のスポーツクラシックの日本販売価格は2750万円だった。新型スポーツクラシックの贅沢な仕様や、手仕上げのストライプ塗装、本物のゴールドを使ったレタリングなど、そのこだわりの作りに鑑みると3000万円レベルのプライスタグがついているのも不思議ではない。

ところで、2009年に発表された“初代”911 スポーツクラシック(タイプ997)は発売後48時間で完売したという伝説をもち、瞬く間にカルト的な人気を博しコレクターズアイテムとして羨望のモデルになった。2019年1月のサザビーズオークションでは、シリアルナンバー「002」の997型スポーツクラシックが65万4000ドル(約8418万円)で落札されたという逸話(この個体は、稀少な初期生産ロット、かつほぼ未使用車であったということは留意しておきたい)もある。

1250台に生産枠が拡大されたとはいえ、今回のスポーツクラシックも相当の人気が集まることは必至だろう。今最も旬な911という意味では、スポーツクラシックがもっとも「推せる」1台といえるかもしれない。

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三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…