逡巡必至な悩ましき選択。アストンマーティン、シボレー、ポルシェを公道で測る

スーパースポーツバトル勃発! 美のヴァンテージ、剛のコルベット、柔の911が直接対決

アストンマーティン ヴァンテージ V8、シボレー コルベット、ポルシェ 911 GTSのサイドビュー
現代スーパースポーツモデルの激戦区で切磋琢磨する3台、アストンマーティン ヴァンテージ V8 ロードスター、シボレー コルベット、ポルシェ 911 GTSをストリートでインプレッション。
スーパースポーツカーの世界で、最も激戦区となっているのは1000万円中盤から2000万円前半の価格帯のモデルたちだ。速さと美しさ、そして日常での実用性も備える3台を比較してみよう。それぞれの国籍や駆動方式、そして何よりクルマ造りの哲学の違いは、どのように感じられるのか。

Aston Martin Vantage V8 Roadster×Chevrolet Corvette×Porsche 911 GTS

スポーツカーは様々な紆余曲折を経て各々の理想の走りを追求してきた

アストンマーティン ヴァンテージ V8、シボレー コルベット、ポルシェ 911 GTSの走行シーン
古典的なFRレイアウトのアストンマーティン ヴァンテージ V8 ロードスター、実利を目指しMRレイアウトを採用するシボレー コルベット、もはや唯一無二のRRレイアウトを固持するポルシェ 911 GTS。三者三様のスーパースポーツを比較検証する。

スポーツカーといえば後輪駆動。当然のように思われていることだが、そこにはロジカルな理由がある。

まず必須となる高出力を受け止めるには操舵と駆動の両方を前輪で担うには限界がある。未だに300psを超えるFF車が滅多に現れない。現れたとしてもシビック タイプRのような特殊な目的のクルマであるのはそのためだ。

加速時に駆動輪にトラクションが掛かりやすいFR車も、荷重変化ではカバーできないほどのパワーを与えられることが当たり前になってくると、何らかの策を講じなければならなくなる。そういう点では後ろにエンジンを搭載するRR車は盤石だ。が、一方で前後重量配分等のダイナミクス面での不利が生じ、それを克服するには、リヤミッドシップにエンジンを搭載するMR車が理想的ということになる。

と、スポーツカーはそういった紆余曲折を経て各々の理想を追求してきた。が、この先、電動化が当然という時代が来るならば、出力特性や重心の変化により、この前提も変わることになるかもしれない。

スポーツカーの基本、FRレイアウトを固持するヴァンテージ

アストンマーティン ヴァンテージ V8のコクピット
アストンマーティン ヴァンテージ V8 ロードスターは軽量なソフトトップを装備。スポーツカーにとって重要な低重心化を果たすとともに、スイッチひとつで瞬時に折り畳まれる利便性も備えている。

そうなると、我々が慣れ親しみ、楽しみ続けてきたスポーツカードライビングのニュアンスにも否応なしに変化が訪れるのだろう。そんなことを思いながらまず乗ったのは、スポーツカーの基本ともいえるFRのアストンマーティン・ヴァンテージ・ロードスターだった。

今でこそハイパーカー方面にも間口を広げるも、アストンマーティンは最大勢力であるFRスポーツカーの王道を歩み続けている。直4、直6、V8、V12と搭載してきたエンジンはいずれもスポーツカー造りのど真ん中にくるものだ。

21世紀、ブランドの新章の幕開けとしてリリースされたヴァンキッシュ以降、彼らのプロダクトを象徴するメカニズムとして挙げられるのがトランスアクスルだろう。トランスミッションを別体として後軸側に搭載することで、エンジンをZ軸側に近づけながら後輪の荷重を増やしてトラクションを高めるという、FRレイアウトにおいては最も理想的なパッケージとされるそれを、現行のヴァンテージも踏襲している。

古典的なスポーツカーの成り立ちを継承

メルセデスAMGから供給を受けるM177系V8ツインターボユニットは、4.0リッターのキャパシティから510ps/685Nmを発揮。これを後軸側に積まれるZFの8HPでドライブ、0-100km/h加速は3.8秒とされている。データだけでいえばこれを上回るモデルは幾つもあるが、それらはリヤにエンジンをマウントするか、四駆かというところだ。FRとしてはこの辺りが限界だろうという瞬発力を備えている。

実際にドライブしてみても、感心させられるのはそのトラクション能力だ。普通なら後輪が空転してもおかしくないような急加速時も、姿勢を大きく乱すこともなく、後輪はしっかりと路面を捉え続ける。コーナーを敢えて荒目のアクセルワークで走ってみても、トラクションコントロールのようなボディコントロールデバイスがやすやすと介入する素振りはない。500ps超の火力を抱えながら、シャシーとパッケージの素性そのものできちんと前に進めるという理想を追いかけていることが伝わってくる。

古典的なスポーツカーの成り立ちを今に受け継ぐヴァンテージは、流している時も踏んでいる時も、走っている自分を客観的にイメージしやすいところがある。性能的にも感覚的にも、もう少し踏み入ればクルマの側がこう応えてくるだろうという見通しが立てやすい。同じ後ろで蹴るクルマ同士であっても、最も動物的感覚で対話、対峙できるのがFRの美点ではないだろうか。

コルベットのミッドシップへの転換はレースに勝利するため

シボレー コルベットのコクピット
常にその時代の最先端を目指してきたコルベットは、8世代目に至っても独自性を誇示。上下フラットなステアリングホイール、各部に与えられた航空機のような造形など、他のスーパースポーツに迎合しないスタンスをもっている。

そんなヴァンテージと、パッケージ的には極めて似たところにあったのがコルベットだ。が、現行世代ではリヤミッドシップ=MR化に踏み切り、世界を驚かせた。もっとも、GMにしてみれば50年代からの願望を遂に成就させたかたちだ。

MR化の理由は至極シンプルで、コルベットにとって重要なマーケティングツールでもある、レースに勝つためということになる。ル・マンの常勝組として名を広めたC6やC5の世代とは異なり、現在のレースシーンでは求められるパワーに対してFRではどうにも前に進まない、そこに悩まされたC7世代からの飛躍のために決断が下されたわけだ。

それでも、搭載されるエンジンは伝統のスモールブロックV8というところが、コルベットの拘りだ。C8のベースグレードに載るLT2は自然吸気の6.2リッターOHVにして502psを6450rpmで発揮、レッドゾーンの6500rpmまできっちり回り切る。見た目にも明らかに小さなそのユニットが低くミッドマウントされるところにコルベットのMRとしての独自性がみてとれる。

今までの鬱憤を晴らすが如く際立つトラクション性能を発揮

代々のコルベットに設定されてきた高性能グレードのZ06はC8でも継承されるが、エンジンはがらりと変わり、自然吸気の5.5リッターDOHCのV8となる。クランクはフラットプレーンで679psを8400rpmで発揮と、さながらイタリアンスーパーカーのスペックを引っ提げて世界のスーパーカー市場に割って入ろうという構えだ。

コルベットのパフォーマンスにおいては、長年の鬱憤を晴らすかのようにトラクション能力が際立っている。急な下りだろうが多少のウェットだろうが、後輪はそうやすやすと路面を離さない。とにかく車体を前にもっていく、ちょっと執念めいたものさえ感じるほどだ。

C8の車検証上の重量配分は39対61ともはや911にほど近く、今日びのミッドシップとしては前側の荷重が乏しいように思える。が、操舵ゲインはしっかり立ち上がり、ワインディングを気持ちよく走る位のレベルなら荷重バランスを必要以上に気にすることもない。初出のMRシャシーながらピーキーなところはなく、ツーリングからスポーツドライビングまで幅広い守備範囲を備えている。理想的ではあるが扱いにくいというのは昔の話。今日びのミッドシップはツーリングからサーキットスピードまで、安心して踏んでいける柔軟性を当然のように備えている。

異色ながらスタンダード、伝統のRRレイアウトを採用するポルシェ 911

ポルシェ 911 GTSのコクピット
連綿と受け継がれてきた911シリーズは、最新の992型においても出自をアピール。ドライバーの目前に備わるメーター類は一見伝統の5メーターに見えるが、両脇4つはデジタル表示とするなど革新性も併せ持つ。

リヤエンジン・リヤドライブという動的にみれば最も癖の強いレイアウトを採り続けて80年以上となるポルシェは、356〜911と代を進めるごとに一歩ずつその癖を均して良さを際立てる熟成を重ねてきた。

水冷モデルをみても996世代では前軸の接地性を高め、997世代ではピッチングモーションを低減、そして991世代ではロングホイールベース化によるスタビリティ向上などを経て、この992世代ではもはやスポーツセダンのような感覚で扱えるおおらかささえ備わっている。

911 カレラ GTSは実に480psのハイパワーをRRで御する、想像するだにスリリングなスペックだが、そこは最上の多様性を備えたGTSグレードだけに、扱いに難しさはない。ドライバーの求めに応じジェントルにもワイルドにも振る舞える。

似たパワーの後輪駆動でもその動的質感はかくも異なる

それでもRRドライビングの真骨頂は強力な加速と減速にあることは間違いない。前後輪をグッと沈み込ませながらブレーキとタイヤの性能を出し切る減速の所作は、まさにリヤエンジンがゆえ。そこで荷重をしっかりと前側に載せて舵をしっかり効かせてタイトに回り込み、アペックスから早めにアクセルを踏み込んでいくと後輪にたっぷりと荷重が掛かり強力な蹴り出しが得られる、これまたリヤエンジンの妙味だ。

これを巧く繋げていくことで、他とは異質の速さを引き出す。911はRRドライビングの楽しさや難しさを長きに渡って伝えてきた唯一無二のクルマだ。幾らイージードライブへと進化してきたとはいえ、その本質は変わらない。運動性能の理想型を目指したコルベット、生物的本能に近いヴァンテージ、そして物理特性がもっとも明晰な911と、同様なパワーの後輪駆動でも、その動的質感はかくも異なるものとなる。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

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【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン ヴァンテージ V8 ロードスター
ボディサイズ:全長4465 全幅1942 全高1274mm
ホイールベース:2704mm
車両重量:1745kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3982cc
最高出力:375kW(510ps)/6000rpm
最大トルク:685Nm(69.9kgm)/2000-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40ZR20 後295/35ZR20
0-100km/h加速:3.8秒
最高速度:306km/h
車両本体価格(税込):2159万9000円

シボレー コルベット 3LT
ボディサイズ:全長4630 全幅1940 全高1225mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1670kg
エンジンタイプ:V型8気筒OHV
排気量:6156cc
最高出力:369kW(502ps)/6450rpm
最大トルク:637Nm(65.0kgm)/5150rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30ZR20
0-100km/h加速:2.9秒(0→97km/h)
最高速度:312km/h
車両本体価格(税込):1500万円

ポルシェ 911 GTS
ボディサイズ:全長4520 全幅1850 全高1303mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1500kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量:2981cc
最高出力:353kW(480ps)/6500rpm
最大トルク:570Nm(58.1kgm)/2300-5000rpm
トランスミッション:7速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR21
0-100km/h加速:4.1秒
最高速度:311km/h
車両本体価格(税込):1868万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911

アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281

GMジャパン・カスタマーセンター
TEL 0120-711-276

【関連リンク】
・ポルシェ 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/

・アストンマーティン 公式サイト
http://www.astonmartin.com/ja

・GM 公式サイト
http://www.gmjapan.co.jp/

著者プロフィール

渡辺敏史 近影

渡辺敏史