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周囲の音が聞こえて軽快かつ爽快な装着感
ソニーのLinkBudsは、そのハードウェアだけに着目すると「何がいいの?」と少し戸惑うかもしれない。しかしコンセプトを聞けば「あ、それ欲しい!」と納得できるユニークな製品だ。スペック的な部分を説明すると、周囲の音が聞こえる、軽快かつ爽快な装着感の完全ワイヤレスイヤホン。その秘密は真ん中に穴が空いた“リング型ドライバーユニット”による通気性と、片側わずか4gという軽さにある。5.5時間のバッテリー持続時間を誇り、充電ケースとセットで使うと1回の充電で17.5時間と実はスタミナも十分。
しかし、本当の魅力はこうした一般的なワイヤレスイヤホンの評価基準とは異なる部分にある。LinkBudsはネットサービスの世界と人間を聴覚で繋ぐインターフェイスとして練り込まれた製品なのだ。近年、現実世界の情報に対して、聴覚で重畳するデバイスやサービスが登場し始めている。ごく初歩的な例を挙げると、AppleのiPhoneとAirPods、Googleのアシスタント機能が実現している通知情報の読み上げ機能などがある。スマートフォンに情報が集まってくる時代、スマートフォンを手から離さず、常に画面を見て生活するスタイルから、もっと自然なライフスタイルに。そんな想いを実現させる手法として、様々なトライアルが行われていると考えるとピンとくる読者も多いだろう。
蒸れずに快適な装着感を実現
鍵となっているのは立体音響技術。ソニーは360 Reality Audioという技術を使い、立体音響の音楽を配信しているが、音の方向を明瞭に感じることができるこの技術を応用して、聴覚のARともいうべきサービスを提供している。ソニーの「Locatone」は、場所に紐づいたコンテンツを再生するサービス。観光地で撮影ポイントまで音で誘導。向かうべき方向に誘導音が聞こえる仕組みだ。目的地に到着すると、音声で撮影時のちょっとしたノウハウや良い写真を撮るための構図をアドバイス。街を散策するコースを選ぶと、案内した上で解説を加えてくれるなんて機能もある。
これまでの“読み上げ”も便利だったが、あくまでも受け身の通知機能がメイン。しかし、そこにもっとアクティブに使いこなせる機能が加わってきたことで、聴覚を用いたARは発展の気配を見せている。しかし、ここで問題となるのが「長時間のイヤホン装着は不快」ということ。ここで冒頭で紹介したLinkBudsの特徴が活きてくる。丸いリング形状のドライバーユニットを新開発し、蒸れずに快適な装着感を実現。音楽への没入ではなく、さらりとBGMとして聴きこなせる音に仕上がっている。もちろん、耳を塞いでいないから、周りの状況を把握しやすく、装着したまま違和感なく生活できる。
スマートフォンの世界を拡張
内蔵されているマイクもビームフォーミングという技術を使い、周囲の騒音を抑え込んで相手に自分の声だけを届けてくれるから、装着したまま電話に応対したり、オンライン会議に参加することもできる。音楽を楽しむためだけではなく、生活に欠かせない道具としてのスマートフォンの世界を拡張する。LinkBudsはそんな新しいライフスタイルのための、新しいイヤホンなのだ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 5月号
PRICE
オープン価格
評価
日常的に音に触れるにはちょうどいい感覚。カフェに漂う音楽のように聴ける。立体音響の精度は高く方向を耳で示すというアイデアは使えば納得。対応サービスの増加に期待したい。
コストパフォーマンス:3
音質:3
装着感:5
バッテリー:4
未来感:4
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