メルセデスAMG版EQEを海外初試乗! アファルターバッハが放つBEV第2弾を検証する

AMG EQEには「○○」がない? メルセデス・ベンツの最新高性能サルーンを渡辺慎太郎が斬る!

メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+のフロントビュー
メルセデスAMGが2022年2月に発表したEQEベースのハイパフォーマンスモデルがいよいよ欧州で公道デビュー。自動車ジャーナリスト・渡辺慎太郎がフランス・コルマールで実施された国際試乗会でその走りを確かめた。
メルセデス・ベンツの高性能車部門であるAMGは、2022年2月に新型車「EQE 43 4MATIC」「EQE 53 4MATIC+」を発表した。戦うエンジニア集団が手掛けた最新BEVはいかなる走りを与えられているのか。その実力を、フランスの公道で自動車ジャーナリスト・渡辺慎太郎が探った。

Mercedes-AMG EQE 53 4MATIC+

AMG EQEは「小さいAMG EQS」

世の中には、原稿がスラスラ書けるクルマと頭を抱えてひねり出すクルマの2種類がある。前者は運転していて良くも悪くもなんらかの気付きがたくさんあるクルマ、後者は騒ぎ立てるほどの短所が見つからない良くも悪くもそつなく仕上がっているクルマである。メルセデスAMGのEQE 53 4MATIC+は、どちらかといえば後者に近いクルマだった。

このクルマの印象を浮き彫りにするために、すでに試乗経験のあるノーマルのEQEやAMG EQS 53 4MATIC+と(頭の中で)比べてみたりするのだけれど、あまりにもその差が少なすぎて、驚きやワクワクした感情に乏しかった。特にEQSとEQEは基本的にプラットフォーム/サスペンション/パワートレインを共有していて、違いはボディタイプ(EQSは2ボックス、EQEは3ボックス)、ボディサイズ(EQEのほうがホイールベースが約100mm短い)、車両重量、モーターのパワースペックくらいである。それでも普通なら、これだけ違えば乗り味が大きく異なってもおかしくないし、むしろそういうクルマのほうが多い傾向にある。ところがAMG EQEはまさしく小さいAMG EQSであり、それ以上も以下でもなかった。

“上屋”を問わない優秀なプラットフォーム

この印象は決してネガばかりではない。ボディタイプやサイズが異なるにもかかわらず、ほぼ同じような乗り味を出せるということは、プラットフォームのポテンシャルが高いからだ。

EVA2はメルセデスがBEV専用として開発したプラットフォームで、現時点ではEQSとEQE、そして発表されたばかりのEQS SUVが共有している。全長が5mを超える5ドアハッチバックとミディアムセダンとラージSUVに対応するプラットフォームの設計要件はかなり厳しいものであったに違いない。それを克服したメルセデスの技術力はやはりさすがである。

50%〜110%まで変化するパワースペック

EQEのAMG版には“AMG EQE 43 4MATIC”と“AMG EQE 53 4MATIC+”の2モデルが用意されている。AMG EQSは「53」のみだったので、「43」はAMG-EQとして初めてだが、今回の試乗車は「53」のみだった。

AMG EQE 53 4MATIC+のパワートレインは基本的にはAMG EQSのそれを流用している。ただし、ソフトウェアはAMG EQE専用に書き換えられており、パワースペックはAMG EQSの761ps/1020Nmに対してAMG EQEは687ps/1000Nm(いずれもオプションのAMGダイナミックパッケージ装着時)となっている。

実はこのパワースペックが少々トリッキーなのだ。AMGは今回、AMGダイナミックセレクトのモードごとのアウトプットを公表した。それによると、“スリッパリー”では50%、“コンフォート”では80%、“スポーツ”では90%のパワーしか使っておらず、“スポーツ+”でようやく100%、そしてAMGダイナミックパーッケージ装着車のみに設定される“レーススタート”ではブースト機能が働くので瞬間的に110%となり、これが前述の687ps/1000Nmという数値なのである。

ウルトラスムーズなV12エンジンのよう

したがって、どのモードを選んでいようと、いま自分はいったいどれくらいの出力とトルクをコントロール下に置いているのかがよく分からないのだ。よって444〜518kmと公表されている航続距離も、モードや走り方や道路状況によって大きく異なってくると想像できる。こういう場合は最小値で見積もっておいたほうが安全なので、実際の航続距離はだいたい400kmぐらいと思っておいたほうがよさそうだ。

スポーツ+の100%で実質的なパワーは626ps/950Nm。ということはスリッパリーでも300ps/450Nm以上あるわけで、AMG EQEの動力性能そのものに不満はまったくない。アクセルペダルの動きに対して線形なカーブを描くように出力/トルクが湧き出る加速感は、ウルトラスムーズなV12エンジンのようでもある。潤沢なトルクは4輪に無駄なく伝えられしっかりとしたトラクションも得られるから、直進時はもちろん旋回時でもスタビリティが高い。2525kgの車両重量が起因の重さも、このパワーによってほぼ相殺されている。

パワートレインの“差”が見えづらい

メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+のリヤビュー
エグゼクティブサルーンカテゴリーに属するEQEだが、AMGであればサーキットでの走りも見込んだダイナミズムが求められる。そこで、AMG EQEはローンチコントロール機構はもちろん、“バーチャル・レース・エンジニア”とも称される「AMG TRACK PACE」もオプションに設定している。

サスペンションもAMG EQSと同じエアサスペンションが標準で、乗り心地と操縦性をいずれも高いレベルで両立させている。回頭性のよさには後輪操舵もひと役買っている。航続距離を伸ばすにはバッテリーをできるだけたくさん積みたい。となると、ホイールベースが長くなる。それでもよく曲がるようにするには、後輪操舵が不可欠なのだ。

内外装のお化粧は、AMG仕様の通例にしたがったものである。内燃機搭載モデルとの外装における違いは、EQEやEQSのほうがより空力を重視した仕様になっていることくらい。内装の赤いステッチなどはパワートレインを問わず、いまやそれがAMGであることの証となった。試乗車には、MBUXハイパースクリーンが装着されていたが、これはノーマルのEQE同様、オプション扱いとなる。AMGになってもフリート客を狙った“ビジネスサルーン”であることに変わりないそうだ。

とりあえずここまでインプレッションのようなものを書いてきたけれど、おそらくEQEやAMG EQSと大差ないと思う。自分の力量不足ももちろんあるけれど、原因のひとつはやはりBEVだからだ。EクラスとAMGのEクラスには明確な差があったし、それぞれに人を惹き付ける魅力も存在した。その大きな要因を占めていたのはエンジンの違いだったのである。“味のあるモーター”なんてものが存在しない現時点で、BEVのスポーツモデルがパワートレインで差別化を図るのはなかなか難しいと再認識した。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+

ボディサイズ:全長4964×全幅1906×全高1492mm
ホイールベース:3120mm
車両重量:2525kg
モーター:永久磁石式同期モーター×2
最高出力:460KW(626ps) ※AMGダイナミックプラスパッケージ装着車=505kw(687ps)
最大トルク:950Nm ※AMGダイナミックプラスパッケージ装着車=1000Nm
駆動用種電池:リチウムイオン電池
電池容量:90.6kWh
駆動方式:AWD
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
航続距離:444-518km(WLTPモード)
0-100km/h加速:3.5秒 ※AMGダイナミックプラスパッケージ装着車=3.3秒
最高速度:220km/h(リミッター制御) ※AMGダイナミックプラスパッケージ装着車=240km/h

メルセデスAMG EQS 53 4マティック+。フロントビュー

AMG初のEVはスーパーカー並の761ps! EQS 53 4MATIC+を渡辺慎太郎が最速試乗

メルセデス・ベンツのフラッグシップEV、EQSのハイパフォーマンス仕様「EQS 53 4MA…

著者プロフィール

渡辺慎太郎 近影

渡辺慎太郎

1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、1989年に『ルボラン』の編集者として自動車メディアの世界へ。199…