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中国で評価される理由
もう少しで創業40周年を迎える株式会社テインが中国に進出したのは2008年、まず香港に販売拠点を設立し、既にそのころから中国工場の計画がスタートしたが、江蘇省宿遷市の中国工場(天御減振器制造[江蘇]有限公司)の開設は2015年だから、かなりの年数がかかったことになる。テイン中国工場は上海から北におよそ500km、ざっくりいうと上海と北京の中ほどの江蘇省宿遷市に位置する。
江蘇省は古くから運河が縦横に走り水運に恵まれた地域で、現在は高速道路だけでなくCRH(中国新幹線)も通っている(CRHで上海まで3時間ほど)。宿遷市に決定した理由は、主要部品の部材加工から最終仕上げまで内製するためである。ダンパーの要であるピストンロッドの品質確保のための硬質クロームメッキや超仕上げ研磨の工程を含めて一貫生産する場合、中国でも(特にメッキ処理の)認可を得るのは簡単ではないからだ。
進出企業に対する優遇措置などを含めて検討した結果が現在の立地というわけだ。もちろん中国の環境基準が緩いわけではなく(むしろ日本よりも厳しいほどだという)、工場は排出物管理が徹底されたスマート・ファクトリーである。敷地面積は約2万1000㎡(およそ国際規格のサッカーピッチ3面分、横浜本社工場の4倍)、従業員数は260名、建屋の屋根全面にソーラーパネルを備え(発電能力1万kWh/日)、工場の必要な電力の9割を賄えるほどだという。内部部品は徹底的に洗浄された後、最終組み立ては陽圧管理されたクリーンルームで行われ、画像検査による品質検査も導入されている。標準装着品とはレベルが違う高品質へのこだわりである。現在の年間生産量は30万本、これを2030年には100万本にする計画である。
最短3ヵ月という素早い開発
テインと言えば日本では“車高調”が当たり前だが、中国ではテスラ用の純正形状ダンパーの売れ行きが伸びているという。それほど走行性能にこだわりがあるとは思えないテスラ・オーナーに人気なのは不思議な感じがするが、そもそも中国は一部を除いて道路事情が悪く、過酷に扱われるのが普通であるためタイヤ交換の度にダンパーも交換するのが当たり前という。そんな環境で乗り心地と耐久性が評価されて、中国のみならずモンゴルやインド、パキスタンといったアジア諸国でも売り上げを増やしているのだという。既に海外市場の売り上げは6割を超えるという。
アフターマーケットのサスペンション専業メーカーであるテインは(自動車メーカーへのOE納入を手掛けていない)、それゆえに競技用や特殊なダンパーまで含めて素早く開発(最短3ヵ月という)、生産できるフレキシブルな体制が強みである(これまでの通算は4000車種という)。プレミアム・リプレースメントと称する高品質なアフターマーケット製品に特化し、迅速な開発体制を持つからこそ変化の激しい中国市場に対応できるというわけだ。
次回は中国で乗った様々なBEVの印象をお伝えしたい。