新型「メルセデスAMG GT」試乗で感じた2+2レイアウトとAWDの効果

2+2レイアウトとAWDを採用した新型「メルセデスAMG GT」の進化を試乗で確かめた

車両コンセプトを大幅に変更しての登場となった新型「AMG GT」。何より大きいのが2+2レイアウトとAWDの採用である。
車両コンセプトを大幅に変更しての登場となった新型「AMG GT」。何より大きいのが2+2レイアウトとAWDの採用である。
スーパーカーの走りとGTの快適性を併せ持つAMG GTがフルモデルチェンジを遂げた。2代目となる新型はSLと同様に2+2シートを採用し、快適性を高めつつも、走りのパフォーマンスをさらなる高みへと昇華させたという。国試試乗会で感じた第一印象をお届けする。(GENROQ 2024年2月号より転載・再構成)

Mercedes-AMG GT 63 4Matic+ Coupe

世界中のGTレースで活躍

ラインナップされるGT63 4マティック+クーペとGT55 4マティック+クーペはいずれも、4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンにAMGパフォーマンス4マティック+が組み合わされる。
ラインナップされるGT63 4マティック+クーペとGT55 4マティック+クーペはいずれも、4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンにAMGパフォーマンス4マティック+が組み合わされる。

メルセデス・ベンツSLS AMGに続くメルセデスAMG自社開発スポーツカー第2弾として2014年にデビューしたメルセデスAMG GTは、ポルシェ911という絶対王者が君臨する超激戦市場で一代にしてしっかり独自の立ち位置を築いたと言っていいだろう。特にモータースポーツシーンでの活躍は目覚ましく、世界中のGTレースにおいて主役のうちの1台となっているのは、皆さんもご存知の通りだ。

しかしながらアファルターバッハの面々は、それでは物足りなかったようである。生まれ変わって登場した新型GTは車両コンセプトを大幅に変更しての登場となった。何より大きいのが2+2レイアウトの採用である。これはユーザーの要望に応えたものだということで、実用性を大幅に高めているが、一方で全長は約180mm伸びて4728mmにまで達している。

もうひとつのハイライトが4WD化だ。ラインナップされる2つのモデル、GT63 4マティック+クーペとGT55 4マティック+クーペはいずれも、お馴染みの4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンを搭載するが、従来のトランスアクスルレイアウトに代わって新たにAMGスピードシフトMCT 9G、そしてAMGパフォーマンス4マティック+が組み合わされている。訊けば4WD化もユーザーからの要望が非常に多かったのだという。

幅広い層に訴求したいという意図

先代GTはAMGの100%自社開発としてスポーツカーとしての資質をとことん追求したパッケージングとされていた。それに対して新型は、より幅広い層に訴求したいという意図が透けて見える。残念に思う人も少なくないだろうが、それを上回る賛同が得られるはず。メルセデスAMGはそう判断したのだろう。

アルミスペースフレームにスチール、マグネシウム、CFRPなどを組み合わせたマルチマテリアルボディは、見た目には派手なエアロルックではない。しかし実際にはフロントエプロン開口部の後方の開閉式ルーバー、床下に配置され高速域で自動的に40mm下降してベンチュリー効果を高めるフラップ、可変式リヤスポイラーからなるアクティブエアロシステムが搭載されている。

シャシーにはアンチロールバーの代わりに4輪を油圧で連関させるアクティブロールスタビリゼーションシステムを組み込んだ前後マルチリンクサスペンションを採用。これはアーム類、ナックル、ハブキャリアなどがすべて鍛造アルミニウム製とされている。最大操舵角2.5度のリヤアクスルステアリング、電子制御式LSDも標準装備である。

今回試すことができたのは、最高出力585PS、最大トルク800NmというスペックのGT63 4マティック+クーペ。すべて一般道でのテストドライブとなった。この辺りにも、新しいGTが目指すところが表れていたのかもしれない。

高まったパフォーマンスと増えた安心感

走り出してまず感心したのがボディの凄まじいほどの剛性感だ。サスペンションはそれなりに硬いが、強固なボディが入力をガッチリ受け止める。ステアリングフィールもダイレクトかつ繊細。GT……と言ってもここではグランツーリスモとしての完成度は格段に向上している。

正直、ここまではスペックから想像した通りだったが、期待を遥かに超えていたのがワインディングロードでの走りだ。パフォーマンスが高まり、安心感も増しているだけでなく、しっかりGTだったのである。

“SPORT+”モードで鞭を入れてまず頬を緩ませたのが、鋭いターンインだ。ステアリングを切り込むと同時にノーズが平行移動するかのようにインを抉る挙動はとても刺激的。ロールをほとんど感じさせず、右に左に連続するコーナーをソリッドな感触で駆け抜ける。

旋回スピードも速く、どこまで攻めても限界が見えてこない。実は2tに迫る車両重量のことを、完全に忘れさせてしまう。そして立ち上がりでは、明確にリヤ寄りとされた駆動力配分によって、背後から蹴飛ばされるような豪快な加速を楽しむことができるのだ。

この一連の挙動からは、先代GTに似た匂いが濃密に感じられる。しかしながら新型はそこに4WDを含む各種デバイスの恩恵である圧倒的な安心感が加わるのが大きな違いだと言っていいだろう。

クーペ版のSLにあらず

ロールをほとんど感じさせず、右に左に連続するコーナーをソリッドな感触で駆け抜ける。

ここまで敢えて触れずに来たが、新しいGTは、メルセデスAMG開発となった新型SLとハードウェアの多くの部分を共有している。しかしながら開発は、素材の多くを共有しつつもそれぞれ別に進められていたのだという。結果、GTはタイヤサイズがさらに太く、駆動力配分はリヤ寄りとされ、電子制御LSDもロック率の高い別部品になったという。もちろん制御の内容も別物。結果として0-100km/h加速もコンマ4秒速い3.2秒を達成した。

そしてこうして走らせた印象としても、SLに似ているというよりは、紛れもないGTの進化した姿だという印象の方が圧倒的に強かった。SLのクーペ版ではないかという先入観、私も無かったわけではないが、それはいい意味で裏切られた。

間口を確実に広げながら、らしさもしっかりと尖らせた新しいGTが、メルセデスAMGが思い描く一層の成功に繋がるかどうかは興味深い。さらに言うと、モータースポーツを視野に入れれば、それがSかRかは分からないが今後より硬派なモデルも用意されるのは間違いない。この完成度からすれば、そちらのパフォーマンスが一体どこまで突き抜けたものになるのかも楽しみだ。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/Mercedes-Benz AG
MAGAZINE/GENROQ 2024年 2月号

SPECIFICATIONS

メルセデスAMG GT63 4マティック+クーペ

ボディサイズ:全長4728 全幅1984 全高1354mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1970kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:430kW(585PS)/5500-6500rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2500-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前295/35ZR20 後305/35ZR20
0-100km/h加速:3.2秒
最高速度:315km/h

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

新型「メルセデスAMG GT クーペ」の走行シーン。

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著者プロフィール

島下 泰久 近影

島下 泰久

1972年神奈川県生まれ。走行性能だけでなく先進環境安全技術、ブランド論、運転など、クルマ周辺のあらゆ…