基本情報
WRXは、スバルが展開してきたAWDスポーツモデルである。車名は「World Rally eXperimental」に由来するとされ、水平対向ターボエンジンとAWDを組み合わせた高い走行性能を特徴とする。
日本向けのWRX S4は、4ドアセダンとしての実用性を備えながら、スポーツ走行を楽しめるモデルとして開発された。「S4」には、Sports performance、Safety performance、Smart driving、Sophisticated feelという4つの価値が込められている。
2021年に登場した2代目WRX S4は、2.4L水平対向4気筒直噴ターボエンジン「FA24」を搭載する。最高出力は202kW[275PS]、最大トルクは375N・m[38.2kgf・m]で、駆動方式にはAWDを採用した。
トランスミッションは、素早い変速応答を追求した「スバルパフォーマンストランスミッション」である。名称から有段式ATのように見えるが、機構上はマニュアルモードを備えたフル電子制御の自動無段変速機である。
なお、通常モデルのWRX S4は2026年に生産を終了している。以下のGT-H EXとSTI Sport R EXは、生産終了直前まで設定されていた代表的な量販グレードとして紹介する。
代表グレード例

GT-H EXは、2.4LターボエンジンやAWD、アイサイトXなどを備えた標準的なグレードである。
STI Sport R EXは、GT-H EXの装備に加え、ZF製電子制御ダンパーやドライブモードセレクト、ハーマンカードンサウンドシステムなどを採用しており、走行特性を細かく調整できる点が大きな違いだ。
2026年4月には、STIコンプリートカー「WRX STI Sport♯」も発表された。STI Sport R EXをベースに、バランスド仕様のFA24エンジンと6速MT、専用電子制御ダンパー、ブレンボ製ブレーキなどを採用した全国600台限定モデルである。
ただし、抽選受付期間は2026年4月9日から5月17日までであり、通常販売される量販グレードではない。
| 項目 | GT-H EX | STI Sport R EX | WRX STI Sport♯ |
| 車名・型式 | スバル・5BA-VBH | スバル・5BA-VBH | スバル・5BA-VBH改 |
| 駆動方式 | AWD(常時全輪駆動) | AWD(常時全輪駆動) | AWD(常時全輪駆動) |
| 乗車定員 | 5名 | 5名 | 5名 |
| 全長×全幅×全高 | 4,670 × 1,825 × 1,465 mm | 4,670 × 1,825 × 1,465 mm | 4,670 × 1,825 × 1,465 mm |
| ホイールベース | 2,675 mm | 2,675 mm | 2,675 mm |
| 最低地上高 | 135 mm | 135 mm | 135 mm |
| 車両重量 | 1,600 kg | 1,610 kg | 1,560 kg |
| エンジン型式 | FA24 水平対向4気筒 | FA24 水平対向4気筒 | FA24 水平対向4気筒 2.4L DOHC 直噴ターボ “DIT” |
| 総排気量 | 2,387 cc | 2,387 cc | 2,387 cc |
| 最高出力 | 202 kW [275 PS] / 5,600 rpm | 202 kW [275 PS] / 5,600 rpm | 202 kW [275 PS] / 5,600 rpm |
| 最大トルク | 375 N・m [38.2 kgf・m] / 2,000-4,800 rpm | 375 N・m [38.2 kgf・m] / 2,000-4,800 rpm | 350 N・m [35.7 kgf・m] / 2,000-5,200 rpm |
| トランスミッション | スバルパフォーマンストランスミッション | スバルパフォーマンストランスミッション | 6MT |
| WLTC燃費 | 10.8 km/L | 10.7 km/L | 未公表 |
WRX 変遷
WRXの歴史は、1992年に日本で発売された初代インプレッサWRXから始まった。水平対向ターボエンジンと4WDを組み合わせ、世界ラリー選手権を見据えた高性能モデルとして登場した。
2000年にインプレッサが2代目へ移行すると、WRXもボディやシャシーを刷新した。丸型ヘッドライトを採用した初期型をはじめ、複数回の改良を受けながら走行性能を高めていった。
2007年には3代目インプレッサをベースとするWRX STIが登場した。当初は5ドアハッチバックとして発売され、後に4ドアセダンも追加されている。
2014年には、WRXがインプレッサから独立した車種として登場した。日本では、2.0L直噴ターボエンジンとスポーツリニアトロニック、アイサイトを組み合わせたWRX S4と、2.0Lターボエンジンと6速MTを搭載したWRX STIが展開された。
WRX S4は、高性能な走りを比較的扱いやすく楽しめるモデルとして位置づけられた。一方のWRX STIは、マニュアルトランスミッションや専用のAWD制御、強化されたブレーキなどを備え、より走行性能を重視していた。
2019年には、EJ20型エンジンの生産終了に伴い、555台限定の「WRX STI EJ20 Final Edition」が設定された。日本向けWRX STIの注文受付も、同年12月23日をもって終了している。
2021年11月には、2代目WRX S4が発表された。エンジンは従来の2.0Lから2.4LのFA24型へ変更され、スバルパフォーマンストランスミッションやスバルグローバルプラットフォームを採用した。
その後も安全装備や内外装の改良、特別仕様車の追加が行われた。2024年12月には一部改良モデルと「STI Sport R-Black Limited」が発表され、2026年1月には「STI Sport R-Black Limited II」が追加されている。
2026年には通常モデルのWRX S4が生産を終了した。一方、同年4月には現行WRXの日本仕様で初めて6速MTを採用した「WRX STI Sport♯」が600台限定で設定された。
WRXは時代に応じて形や位置づけを変えながらも、水平対向ターボエンジンとAWDを中心としたスポーツモデルとして展開されてきたのである。
さらにSUBARUは、2027年までに新たなMTモデルを3車種導入する予定であることを明らかにしている。その中の1台として開発が進められているのが「WRX with TY85 Transmission」。
このモデルは、かつてのWRX STIにも採用された高耐久・高信頼性の「TY85」型トランスミッションを搭載するカタログモデルとして開発中とされている。限定車ではなく、通常のカタログモデルとして計画されている点が大きなポイントだ。
ただし、現時点で正式な発売日、価格、エンジン出力、グレード構成などの詳細は公表されていないため、続報を待ちたい。
WRXの魅力
WRXの魅力は、水平対向ターボエンジンとAWDによる走行性能を、4ドアセダンとしての実用性や安全性能と両立している点にある。
2.4L水平対向4気筒直噴ターボエンジンは、低回転域から最大トルクを発生し、日常走行でも力強い加速を得やすい。重心の低い水平対向エンジンとシンメトリカルAWDの組み合わせにより、高速道路やコーナー、滑りやすい路面でも安定した走りを実現する。
スバルパフォーマンストランスミッションも特徴の一つである。変速応答を高めた自動無段変速機で、通常走行時の扱いやすさを確保しながら、スポーツ走行時には段階的で素早い変速感覚を楽しめる。
また、スバルグローバルプラットフォームによる高剛性なボディと、前ストラット式、後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを組み合わせている。STI Sport R EXでは電子制御ダンパーによって、走行状況や選択したモードに応じた乗り味を選べる。
アイサイトやアイサイトXを搭載していることも、WRX S4ならではの要素である。スポーツ性能だけを追求するのではなく、渋滞時や高速道路での運転負荷軽減、衝突回避支援などにも配慮されている。
さらに、4ドアと5人乗りの室内を備えているため、日常の移動や長距離ドライブにも対応しやすい。高性能車でありながら、通勤や買い物、家族での移動にも使用できる点は、2ドアスポーツカーにはない強みだ。
一方、通常のWRX S4にはMTが設定されていなかった。MTで操る楽しさを求めるユーザーにとっては選択肢が限られていたが、2026年のWRX STI Sport♯では6速MTが復活している。
まとめ
WRXは、1992年に登場したインプレッサWRXを起点とし、モータースポーツを通じて水平対向ターボエンジンとAWDを磨いてきたスポーツモデルである。
2014年に独立した車種となった後、日本ではWRX S4とWRX STIが異なる性格のモデルとして展開された。2021年に登場した2代目WRX S4では、2.4Lターボエンジンやスバルパフォーマンストランスミッション、アイサイトXなどが採用されている。
2026年現在、通常モデルのWRX S4は生産を終了し、販売店の在庫車のみの取り扱いとなっている。また、STI Sportグレードも現行モデルをもって展開を終えた。
一方で、6速MTを搭載した600台限定のWRX STI Sport♯が設定されるなど、WRXが培ってきた走りの系譜は途切れていない。
また、2027年までにはTY85型トランスミッションを搭載する「WRX with TY85 Transmission」の導入も予定されており、日本向けWRXのMTモデル復活に向けた動きにも注目が集まる。
