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2022年4月、私は、BMW Z4を購入した。
世間では、新車や新しめのクルマならば”高級車”というジャンルに含まれるが、選んだのは18年落ちの立派な(?)中古車である。もちろん、お値段も現実的。
しかし、少しだけカッコつけさせてもらえば、長年の夢をひとつ叶えたことできた瞬間でもあった。
輸入車ファンに愛されるE46とE90のBMW3シリーズ
私がBMWに初めて乗ったのは、20年ほど前のこと。当時、私は大学生であり、とある自動車雑誌でアルバイトをしていた。その仕事には、広報車の貸出やロケの手伝いなども含まれていた。その頃、新車だったクルマたちといえば、今も輸入車ファンに愛されるものが多い。BMWでいえば、3シリーズだとE46後期型からE90の前期型が当てはまる。
そして、今回の主役である初代Z4が、新登場したタイミングでもある。そんな頃だ。
電動化シフトの今とは異なるが、ちょっとした自動車の変革期でもあり、国産車はハイブリッドに注力するようになり、一方で輸入車がダウンサイズターボ車に力を入れ出していた。
「いつかはGT-R!」の日産党、BMW320i Mスポーツに出会う
BMWに興味を持つきっかけとなったのは、後期型の320i Mスポーツとの出会いだった。
2.2L直列6気筒DOHCエンジンは、最高出力170psに過ぎなかったが、エンジンサウンドと回転フィールが抜群。馬力ではない走りの愉しさを知り、「BMWは直6だ!」と言われる理由を分かったような気でいた。
しかし、学生の私には、高級車のBMWは、全く縁のないもの。そもそも日産党だったこともあり、180SXとのカーライフを楽しんでいた。心の中では、いつか、スカイラインのターボ車。できれば、GT-Rを手にしたいと考えていたものである。
それから数年後、私は、自動車雑誌とは全く縁のないサラリーマンの道を選んだが、クルマ好きには変わりなく、社会人として安定した収入が得られるようになったことから、愛車の乗り換えを検討する。もちろん、大本命はGT-Rだった。
そうなると、予算もそれなりに必要となる。余談だが、その頃は、国産スポーツカーの価格上昇は始まっていたものの、R32やR33の良さそうなクルマでも、300万円前後で入手できた。その時の選択が、私の愛車人生を大きく変えることになったが、それはまた別のお話だ。
さて話を戻そう。その予算であれば、先代となったばかりのE46の購入も見えてくる。私は興味本位で、BMWの認定中古車センターを尋ねた。
そこで私は、一つの問題を知ることになる。愛車の180SXから想像できるように、根っからのMT派だったのだ。そうなると選べる車種も絞られ、同時に流通台数も限られる。Mモデルなんて”夢のまた夢”であるため、狙いは、318iと318Tiの5速MTの2択となった。流通が少ない中、数台の売り物をチェックできたが、価格の高さからBMWの購入を見送った。
それからの10数年、BMWとは、全く縁のない生活を送ることになるのだった。
古典的パワーユニットを楽しむなら今しかない!
さて、時間を現代に戻そう。なぜ私がBMWを購入したのか。それは取材を通じて、近年のBMWのクルマ作りに大きな変化を感じたことも大きい。3シリーズを例に挙げると、先代のF30までは、様々な進化の中にも伝統の味わいが残されているように思えたが、現行型となるG20は、乗用車としての機能が向上した一方で、大型化により持ち味の軽快さも薄まった感は否めない。
そして、BMW自慢のパワーユニット自体も、電動化へと大きく舵を切り始めた。古典的なBMWを楽しむならば、今が最後ではなだろうかと……。
その気持ちを燻ぶらせつつ、軽い気持ちで自動車検索サイトを眺めていた。検索の狙いは、もちろん、直6モデルだ。セダンを所有していたことから、E46のクーペ「330Ci」か、オープンの「330Ciカブリオーレ」だ。セダンならば、「330i」のMTも選べるが、数が少なく、価格も高いことから、候補からは外していた。
遊び半分で始めた検索だが、そういう時に限って、心に刺さる一台が出現するものである。見つけたのは、エクステリアは前期型に近いが、内装とパワートレインなどが後期型と同じ中期の「330Ci」だ。珍しいグリーンのボディカラーで、内装がグレーレザーシートという初代オーナーの拘りに溢れた仕様だった。
しかし、クルマは遠い中国地方の中古車屋さんであり、即、見に行くことは不可能。お店に連絡を取ってみようかと悩んでいるうちに売れてしまった。全くもって中古車探しでは、良くある話である。逃がした魚は大きいと思ってしまう。正直、このクルマを見つけたことで、冷やかし半分だった私のBMW探しが本格化することになるのだった……。