優雅な走りの裏に刺激を宿す「BMW Z4」【最新スポーツカー 車種別解説 BMW Z4】

正統派オープンスポーツカー、かつ「トヨタ・スープラ」と兄弟車という点も魅力の「BMW Z4」。高い剛性感やシャープな回転性と強力なトラクションで先代よりスポーティな傾向を打ち出してはいるものの、 ソフトトップルーフの利便性や静粛性の高さ、メーターパネルやペダル類にも上質なホスピタリティが展開されている。ラゲッジルームはルーフの開閉に関わらず容量を確保しセンタースルーにも対応するなど実用性も申し分ない。
REPORT:石井昌道(本文)/小林秀雄写真解説) PHOTO:宮門秀行 

新デザインのグリル採用で顔つきがますます精悍に

2019年に日本上陸したBMWの3代目Z4は、先代のリトラクタブルハードトップではなく、初代と同様のソフトトップに回帰。クーペとオープンの両方を味わえるお得感があるのがリトラクタブルハードトップだが、重量や重心などを考慮すればダイナミクス性能ではソフトトップが有利。BMWファンの多くは喜んで歓迎したはずだ。50㎞/hまでなら約10秒で開閉が可能で、気軽にオープンエアモータリングが楽しめる。また、現行型はトヨタ・スープラと兄弟車なのも知られている。

エクステリア

50㎞/h以下であれば走行時でも10秒で開閉できる電動ソフトトップを採用。2022年12月の一部改良でキドニーグリルの桟が垂直から水平方向のハニカムに変更、ヘッドライトまわりもブラック化され、より精悍な表情となった。
トヨタ・スープラとも共用される直噴ターボは、「sDrive20i M Sport」が2.0ℓ直列4気筒、「M40i」が3.0ℓ直列6気筒を搭載。いずれも無段階可変バルブタイミングのダブルVANOS、無段階可変バルブリフトのバルブトロニックを採用。写真の直4は197㎰と320Nmの動力性能、WLTCモード燃費14.1㎞/ℓを両立。
「sDrive20i M Sport」は本来18インチが標準装備となるが、撮影車はジェットブラック塗装が施されたオプションの19インチホイールを装着。タイヤはミシュランのパイロット スーパースポーツが組み合わせられる。
ラゲッジルームはソフトトップの開閉に影響を受けず、常に281ℓの容量を確保。フロアは幅が約940 ㎜、奥行きが約800㎜と意外に広く、バルクヘッド中央を貫通させるセンタースルーにも対応する。

縦型ヘッドライトと、最近のBMWとしては天地が薄いキドニーグリルがZ4の特徴。22年12月のマイナーチェンジでは、それまでメッシュ調だったグリルがハニカム状へとあらためられた。ボディサイズは先代に比べるとひとまわり大きくなった。全長は85㎜長く、全幅は75㎜広く、全高は15㎜高い。その一方でホイールベースは25㎜短くなっていて、ハンドリングの俊敏性を高めようという意図が感じられる。

インテリア

10.25インチのセンター・コントロール・ディスプレイなど、操作系をドライバー側に傾けたBMW伝統のレイアウトを採用。タイトな空間ではあるが、屋根を開ければ開放感たっぷりのドライブを楽しめるのがスープラとの大きな違いだ。
ヴァーネスカレザーのMスポーツシートを標準装備。狭いスペースの中で最大限のホールド性能を確保する。全部で4色のカラーが設定され、運転席メモリー機能、ランバーサポート、シートヒーターも標準で備わる。オプションのセレクト・パッケージでステアリングヒーターも追加可能。
多彩な機能に対応する10.25インチのマルチ・ディスプレイ・メーターを採用。トランスミッションは全車8速AT。
電子制御のシフトセレクターが備わる。
オルガン式のアクセルペダルのほか、大きめのフットレストも装備。

現在の日本仕様はsDrive20i M SportとM40iの2モデル。前者は2.0ℓ直列4気筒ターボ+8速ATで、Mスポーツ・サスペンションを装備。後者は3.0ℓ直列6気筒ターボ+8速ATで可変ダンパー付きのアダプティブMサスペンション、回頭性や安定性を高めるMスポーツ・ディファレンシャル、強力なストッピングパワーを誇るMスポーツ・ブレーキが装備される。

「これぞBMW」と喝采を叫びたくなるハンドリング

先代よりもスポーティ志向になったZ4だが、走り始めればスパルタンに過ぎることはなく、程良く上質感がある。高いボディ剛性に裏打ちされるオープン時のしっかり感、ハードトップにも引けを取らないクローズド時の静粛性の高さなど、動的質感にも高級感があるのだ。試乗したのはZ4 M40iだが、サスペンションは硬質で引き締まった印象だ。ゴツゴツ、ツンツンとするわけではなく、路面の細かな凹凸は巧みにいなしているが、大きな凹凸を通過するとビシッとダンピングが効いて上下動を後に残さない。ふんわりと優しいわけではないが、ボディの動きが抑えられているのでロングドライブでの疲れは少ないだろう。

うれしい装備

ファスト・トラック・パッケージ装着車と「M40i」はMスポーツ・ブレーキとアダプティブMサスペンションを装備。 
ドライブモードはSPORT、COMFORT、ECO PROから選択可能。 
SPORTモードは3パターンに細分化され、INDIVIDUALではダンパーやエンジン等の制御を個別に調整できる。 
「スポーツ表示」時はGセンサーやブーストをディスプレイ。

ハンドリングはZ4のハイライトだ。連続したコーナーを走らせるとロールやピッチングが抑えられたフラットな姿勢を維持しつつ濃厚な接地感が得られ、コーナー進入時のシャープな回頭性と立ち上がり時の強力なトラクションが同居している。直列6気筒エンジンは相変わらずスムーズな回転フィールで魅力的だが、Z4では燃料噴射圧が350気圧まで高められており、より濃密な力感があり、そのレスポンスの良さはターボとは思えないほど。8速ATの制御も見事でDレンジのままでもドライバーの意志が伝わりやすい。普段乗りでは上質さが際立つが、しかるべきステージでは一体感の高さに驚く。まさにBMWらしいモデルなのだ。

Country       Germany
Debut         2019年3月(マイナーチェンジ:22年12月)
車両本体価格      760万円~912万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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