ちゃんと覚えてる?「制限速度」と「法定速度」の違い【クルマごとの法定速度一覧表付き】

政府は2026年9月から生活道路の法定速度を30km/hに規制すると発表した。また、近年は一般道でも制限速度が70km/hに引き上げられた区間が増えている。制限速度と法定速度は同じようなものと捉えられがちだが、このふたつは厳密にはまったく異なるものだ。改めて制限速度と法定速度の違いについて知っておこう。

知ってる? 「制限速度」と「法定速度」の違いと関係

スピードメーター
「制限速度(指示標識)」は道路ごとに定められ、「法定速度(法定最高速度)」は車両ごとに定められる。ただし例外もあるためややこしい。

実を言えば、道路交通法には「制限速度」「法定速度」のどちらの単語も出てこない。道路交通法では「最高速度」の文言しか用いられておらず、その条文は以下のように記されている。

道路交通法 第22条
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で進行してはならない。

つまり、道路標識などによって定められる最高速度が「制限速度(指定速度)」で、政令によって定められる最高速度が「法定速度(法定最高速度)」と通称で呼ばれているだけのようだ。

もちろん「最高速度」以外の言葉を使うのが間違いではない。実際に警察関係の資料などでも「制限速度」や「法定速度」という言葉が用いられている。

道路交通法で指し示されている「政令」とは「道路交通法施行令」のことで、第11条および第12条、第27条では各条件での最高速度がより細かく指定されている。

しかし、一般道の70km/h/80km/h区間や、高速道路の110km/h/120km/h区間については道路交通法施行令にも記述がない。またセンターラインがない道路では、標識などがなくとも制限速度が50km/hだという話も聞くが、それについての文言も法令のなかでは発見できなかった。

制限速度が70km/hや110km/hの道路では、法定速度を超えてしまうややこしい事態に。この場合は制限速度の方が優先されるようだ。

速度が引き上げられた区間については、法定速度が引き上げられたのではなく、あくまで制限速度が引き上げられたとみるのが妥当だろう。実際に速度が引き上げられた区間には70km/hや110km/hなどと書かれた速度標識が建てられている。

どうやら制限速度のほうは「指定速度」とも呼ばれる通り、下方/上方を問わず最高速度を指定できる仕組みのようだ。しかもそれは法定速度を強制的に上書きする効力を持つ。

しかし、原付一種は制限速度が40km/hになっている道路でも法定速度の30km/h以上は出せない。また、緊急車両も標識等の速度制限よりも法定速度が優先されるようだ。

つまり、制限速度と法定速度の関係を端的に表すと「法定速度よりも制限速度が優先される。ただし一部例外あり」という、なんとも曖昧な表現になってしまう。

法定速度と制限速度はどうやって決まる?【法定速度一覧】

これまで高速道路で80km/hしか出せなかった大型トラックは、法定速度の改定により2024年4月1日から90km/hに引き上げられた。このように法定速度は変更されることもある。

道路交通法施行令には、車両や条件に応じた法定速度が細かく記載されている。また制限速度についても、定めるための基準と事細かな手順があるようだ。それぞれをまとめてみよう。

車両ごとの法定速度

一般道(km/h)高速道路(km/h)
普通自動車60100
路線バス等60100
普通自動二輪車(125cc以上)60100
貨物自動車(車両総重量8t未満)60100
貨物自動車(車両総重量8t以上)6090
牽引自動車・大型特殊自動車(牽引装置付車両等)6080
牽引自動車(故障車両)3030
緊急車両80100
ミニカー60通行不可
原付二種60通行不可
原付一種30通行不可
原付一種・原付二種(リヤカーなどの牽引時)25通行不可
一般原付(ペダル付電動自転車等)30通行不可
特定小型原付(電動キックボード等)20通行不可
軽車両なし通行不可

車両ごとの法定速度について、めぼしいものを抜粋して解説していこう。

車両総重量8t以上の貨物車両は、2024年4月1日から高速道路の法定速度が90kmに引き上げられている。

緊急車両の高速道路での法定速度は乗用車と同じく100km/hだ。ただし、速度取り締まりに際しては一般道/高速道路問わず速度無制限となることが道路交通法第41条「緊急自動車等の特例」で定められている。

牽引装置が備わらない車両が故障車両の牽引する場合の法定速度は30kmだ。ただし、車両の総重量が2000kg以下のクルマを、その3倍以上の車両総重量があるクルマで牽引する場合は40km/hとなる。

ただし、高速道路の最低速度は50km/hとなっているため、いずれの場合でも高速道路でロープ等を用いた故障車の牽引はできない。

自転車や馬などが該当する軽車両は法定速度が定められていないため実質的に速度無制限と言える。しかし制限速度は適用されるため、標識などで速度が指定されている場所ではその制限速度を守らなければならない。

ペダル付原動機付自転車(モペッド)は、原動機出力や車体サイズによって「電動アシスト自転車」「特定小型原動機付自転車」「一般原動機付自転車」に分類され、それぞれ法定速度も異なる。

では「モペッド」とも呼ばれる「ペダル付原動機付自転車」はどうだろう。人力だけで進むのなら30km/h以上出しても問題ないと思われがちだが、走行中は常に一般原動機付自転車に該当するため法定速度は30km/hのままだ。

ただし、電動バイクと自転車の区分切替えが認可された車両は、ナンバープレートを掲示せず人力のみで走行する場合に限り軽車両扱いとなる。

道路ごとの制限速度

一般道の70km/h/80km/h区間や、高速道路の110km/h/120km/h区間は特定の条件を満たせる環境の道路にのみ適用される。

制限速度については、道路の幅や周囲の環境に応じて警察が定めている。

一般道では車線数や中央分離帯の有無に加え、歩行者の交通量なども加味されて「基準速度」が設定される。さらに周辺の交通事情や生活環境などに応じて補正が加えられ、最終的な制限速度が決定されるようだ。一般道の規制速度値は、原則として30〜80km/hまで10km/h刻みでの設定となる。

高速道路の場合もおおむね同じで、車線/路肩の幅や曲線半径、道路の勾配や見通しなどから「個別構造適合速度」が設定され、交通事故発生状況や渋滞状況を踏まえて最終的な制限速度が決定される。天候や工事によって制限速度が変化する点も高速道路ならではの特徴といえるだろう。

状況に応じた安全な速度で走行することが大原則

生活道路の法定速度を30km/hに引き下げることで、標識などで規制しきれていない場所の速度を一括して抑制できる。その反面、実勢速度40〜60km/h程度の見通しのよい道路も規制対象となる懸念がある。「生活道路」の定義づけが課題となるだろう。

以上のように、制限速度と法定速度は似ているようだが明確に違うものだ。しかもその関係は非常にややこしい。

これに加え、2026年9月からは生活道路の法定速度が30km/hへと引き下げられることが決まり、制限速度と法定速度の関係は余計に曖昧になってしまった。また「生活道路」の基準も人によって曖昧だったりする。

警察は現段階で生活道路の定義を、センターラインや中央分離帯がない1車線の道路かつ、道幅5.5m未満の道路としているようだ。現状こうした道路の多くは、すでにゾーン30として30km/hの制限速度が敷かれている。

もちろん、制限速度や法定速度の上限ギリギリで走行する必要はない。いかなる道路/乗り物であっても、状況に応じた安全な速度で走行することが大切だ。

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