【プロが選んだ思い出の愛車・ベスト3】初代のAW11を3台、2代目のSW20を1台。トヨタ MR2のコーナリングは快感!

ときに舌鋒鋭く自動車をレビューするモータージャーナリストは、どのような愛車とともに人生を過ごしてきたのだろうか。フォーミュラマシンでのレース経験もお持ちの岡島裕二さんに、歴代のお気に入りの愛車・ベスト3を聞いてみた。

TEXT●岡島裕二(OKAJIMA Yuji)

3位:トヨタ・セラ

「ウケ狙いで購入した目的は見事に達成。加速は意外と軽快!」

今から25年ほど前、急にクルマを買い替えなくてはならなくなり、知り合いの中古車屋で長期在庫になっていたセラを7万円で買うことにした。ほかの車種を選ぶこともできたが、ウケ狙いでガルウイングドアのセラにした。

私の狙いは当たり、乗せた人はガルウイングドアを随分と面白がってくれたし、ガラス面がルーフまで回り込む開放感のあるキャビンも好評だった。

乗り味はいたってフツーのFFのコンパクトカーだが、この当時のトヨタの1.5リットルのハイメカツインカムは高回転域の伸びがよく、車重も930kgと軽かったので加速性能は意外に軽快だった。

壊れやすいと言われていたエアコンがキッチリと壊れていたため、冬の間だけ乗って春には購入した中古車屋に引き取ってもらったが、その直後に外国人のバイヤーが来て南アフリカに輸出されたそうだ。エアコンの壊れたセラが南アフリカで乗れたかどうかは疑問だが、海外でも注目を集めたに違いない。

トヨタ セラ
1995年に発売が開始されたトヨタ・セラ。グラスキャノピーとガルウイングドアの組み合わせが斬新だった。
トヨタ セラ
厳密にはガルウイングドアではなくバタフライドアというべきかもしれないが、いずれにせよ、オープンしたときのインパクトは絶大だ。
トヨタ セラ
独特なドア構造と比べると、インテリアはオーソドックス。

2位:メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(W124)

「魅力的なクルマが多いメルセデスだが、W124を超える名車なし」

私が30歳になったころ友達から「親が乗っていたベンツ買わない?」と連絡が来た。それまでは国産のスポーツカーばかり乗っていた私だったが、「俺もそろそろ外車だな」と思い20万円で即買いしたのが、メルセデス・ベンツの300E 4マチックだ。

W124と呼ばれるミディアムクラスは、発売当時からとても評判がよく、私も興味があったのだが、実際に乗ってみると本当にいいクルマだった。

適度な重さがあるステアリングを回せばクルマが忠実に反応してくれるし、重厚感のある乗り心地や硬めのブレーキタッチは、まさに質実剛健なドイツのクルマという感じだった。

最初に買った300E 4マチックはフロントのドライブシャフトがヤバそうだったので、すぐに手放したが、その後にもセダンの260Eと2ドアクーペの300CE-24を買い、W124は合計で3台乗り継いだ。

エンジンはどのクルマもモッサリとした印象だったが、300CE-24で全開加速を試みた時は快感だった。W124のエンジンとは思えぬ高回転型で、7000回転までキッチリと回ってシフトアップする瞬間は心地よかった。

メルセデス・ベンツには魅力的なクルマが多いが、やはりW124を超える名車はないだろう。

ミディアムクラスの写真は、すべて岡島さんからお借りした当時の愛車。
メルセデス ベンツ ミディアムクラス
ミディアムクラスは1985年にデビュー。1993年のマイナーチェンジ時に車名が「Eクラス」に改められた。
メルセデス ベンツ ミディアムクラス
セダンのW124、ワゴンのS124のほか、クーペ(写真:C124)やカブリオレ(A124)など多彩なボディバリエーションをラインナップしていた。

1位:トヨタ MR2(SW20)

「4台も乗り継いだ理由は爽快なコーナリング性能にあり!」

私が一番数多く購入した車種がトヨタ MR2。初代のAW11を3台、2代目のSW20を1台乗り継いだ。MR2の魅力は何と言ってもミッドシップレイアウトだ。FFを反転したようなミッドシップではあるが、やはり抜群に回頭性が良く、加速時には後輪にナチュラルにトラクションがかかるから、うまく荷重をコントロールすれば爽快なコーナリング性能を味わうことができた。

低いボンネットやリトラクタブルヘッドライトもスーパーカーブーム時代に幼少期を過ごした私にとってはハマるポイントだった。車内に乗り込めば運転席と助手席を隔てる大きなセンターコンソールがあり、ほかの国産スポーツカーにはない独特な雰囲気を感じることができた。

どちらかというとAW11のエッジの効いたスタイリングと軽さが好きだったが、SW20のGT-Sを買ってみると格段にレベルアップされたハンドリングと2.0リットルターボの豪快な加速性能に魅了されてしまった。

SW20も初期型はハンドリングに難があったが、私が買ったのは3型と呼ばれる中期モデルだったので、サーキットに持ち込んでも安心してスポーツ走行を楽しむことができた。

今でも中古車情報サイトのMR2のページをチェックしてしまうが、最近はタマ数が少なく、価格も高騰しているので、残念ながらもう一度手に入れることは難しそうだ。

トヨタ MR2
国産車初のミッドシップレイアウトとともに登場したトヨタMR2。初代は1984年に登場。第5回 1984 – 1985 日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
トヨタMR2
2代目のMR2は1989年にデビュー。ボディは大型化し、搭載エンジンも初代の1.5〜1.6Lから2代目は2.0Lへと排気量アップ。写真は岡島さんが所有されていた愛車。
トヨタMR2
発売当初は「ハンドリングに難あり」という評価が与えられたが、足周りに改良が重ねられて弱点を克服。1999年に後継のMR-Sにバトンを渡した。

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著者プロフィール

岡島裕二 近影

岡島裕二

大学卒業と同時にフォーミュラカーレースの参戦資金調達のために、自動車専門誌に勤務。その後、2003年よ…