1人で作り上げたってホント!? 日産アリア・クロスカントリースタイルの大胆カスタムが凄い!【東京オートサロン2025】

日本が世界に誇るカスタムカー文化を支えるメーカーやショップのプロたちがしのぎを削る舞台である『東京オートサロン』には、次世代を担う若者たちも集う。それが自動車専門学校によるカスタムカーの出展だ。正直、粗削りな面もあるものの、若さと情熱が生む独自の発想で作り上げられるクルマたちには、来場者を惹き付ける魅力にあふれている。『東京オートサロン2025』の会場に花を添えてくれた若きカスタムビルダーたちの作品に注目してみた。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

シティSUVが本格オフローダーに変身!?

埼玉県鴻巣市にある自動車専門学校である関東工業自動車大学校が出品したカスタマイズカーは、なんと日産の最新EVである「アリア」だ。EVのカスタムカーである点も珍しいが、アリアとなれば、なおさらだ。その点にも興味をひかれた。

関東工業自動車大学校ブースに展示された日産アリアのクロスカントリースタイルのカスタム車。

同作品は、日産アリアがSUVであることに注目し、クロスカントリースタイルに仕上げたもの。エクステリアは、アリアのデザインを活かしながら、フロント部に流麗なフロントマスクを保護するグリルガードを装着し、クロカン風味とした。

テールゲートは取り外され、ロールバーを組み込んだ。タイヤラックの機能も備える。

最も驚かされたのは、リヤテールの処理だ。大胆にもテールゲートを取り外した上に、フロアの一部もカット。その内部にロールバー兼スペアタイヤラックが設けられている。ノーマルのデザインを活かしながら、大胆なアイデアで都市型SUVをワイルドなクロカンに変身させてしまったのだ。

フロアもカットされ、ロールバーによるパイプフレームになっている。ロールバーの下部には、リヤフェンダーアーチに沿うリヤフェンダーモールを組み込んだ。

なんと学生である大野祥聖さんが一人で製作したと聞き、また驚かされた。大野さんによると、同校では、過去に日産リーフのレーシングカーを製作したことがあり、その作品に興味を惹かれ、自身でもEVをベースにカスタムカーに挑戦したいと思ったそう。丁度、課題を決めるタイミングで、同校へ日産自動車から寄贈されたアリア(プロトタイプ)をみて、自身が好きなクロカンにアリアを仕上げたいと決意し、学校に相談した。学校側と日産自動車からの許可を得て、大胆なボディカットを含むクロカンづくりに着手した。

鉄パイプを手曲げで作り上げたこだわりのロールバー&グリルガード

拘りのポイントは、グリルガードやロールバー、フェンダーモールなどを丸い鉄パイプから手曲げで作り上げたこと。大野さんは、自らの技術でどこまでできるかに挑戦したかったと話す。専門の職人からアドバイスを受けながら、ひとつずつ作り上げたというから凄い。

アリア・クロスカントリーを一人で作り上げた関東工業自動車大学校の大野祥聖さん。

難しかったのは、グリルガードだという。当初、製作するのはリヤのロールバーのみだったが、それではフロントのインパクトが弱いということで、グリルガードも製作することに。ただ市場にあるグリルガードは四角いデザインが中心で、参考になるのがなかったそう。しかし、アリアの流麗なフロントデザインには相応しいデザインのものにしたいと試行錯誤を続け、奥行きのあるデザインに仕上げていった。

グリルガードの装着によりアリアの流麗なフロントマスクがクロスカントリーらしい力強さも手に入れた。

製作は現物合わせとなるため、作業中に何度も重量のあるグリルガードガードの着脱を繰り返さなくてはならなかったことや、ハンドメイドのために左右のデザインの再現性などに苦労したという。結果として、グリルガードは、全部で3本を作ることになったそうだ。

製作期間は3ヶ月!? 完成はオートサロン搬入日前日21時!

製作は(2024年)10月の初旬からスタートしたものの、作業時間が授業後の夕方以降に限られるため、完成したのは搬入日(2025年1月9日)の前日の21時だったというから製作には多くの苦労があったことが伺える。

フロアカットとロールバー、大径タイヤによりアリアのリヤビューが一変。クロカンらしい力強い印象に。

実はこのアリアは未完成で、走行や保管のことも考えて幌も作りたいという。当初は、自身の直感を信じて作りだしたアリアのクロカン仕様であったが、製作中は、世の中でアリアをクロカンにする人などいないだろうと思い、人に認められるか不安にもなったそう。ただ東京オートサロンで出会った人たちからは前向きなコメントを多く貰い、ほっとしたと教えてくれた。

タイヤは275/70R18サイズという大径のトーヨータイヤ・オープンカントリーM/Tをオフロード系ショップCUSTOM HOUSE改のホイールに装着。

大野さんは、作品の製作過程で、アリアに触れていくうちに、EVへの関心がより強まったことで、今後も学校に残り、EVに必要となる電気関連の勉強を続けていくことを決意したという。アリアは、一人の若き整備士の成長にも大いに貢献してくれたようだ。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…