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気持ちいい走りの実現のために



6代目となる新型スバル・フォレスターが公開された。過去2代はコの字型のヘッドライトとメッキモールで囲まれたヘキサゴン(六角形)グリルを採用していたが、新型はこれまでの流れとは決別した顔を採用しており、新鮮だ。取り回しのいい車両サイズは維持しながらもデザインを重視したのが新型の特徴だ。落ち着いて見えるのは、グリルだけでなくサイドウインドウのまわりからもメッキモールをなくし、ブラックを多用しているからだろう。

車体骨格は、アッパーボディとアンダーボディを別々に組み立ててから接合していた従来構造に対し、ボディ全体の骨格を強固に組み立ててから最終工程で外板パネルのみを接合するフルインナーフレーム構造に切り換えた。国内向けでは2020年のレヴォーグで初適用した構造である。インプレッサ、クロストレックに続いての採用で、これで一巡したことになる。合わせて構造用接着材の適用範囲も広げており、ボディのねじり剛性は先代比で1割程度上がっているという。
その結果、路面からの入力に対してボディが逃げなくなり、サスペンションがきちんと動くようになって、乗り心地と操縦安定性の両立が高次元でできるようになった。動的質感を担当する技術者は、「理想としているのは運転のしやすさ。言い換えれば、操作に対して遅れがないこと。それに、操作に対して、人間の感覚にリニアであること」と話した。


「思ったとおりにクルマがついてこないと違和感につながるし、ブレーキやステアリングを踏み増したり、切り足したりしたときに急に特性が変わると運転のしにくさにつながります。そういうところのつながりの良さはかなり意識して適合しました」
以上が、新型フォレスターをクローズドのコースでチョイ乗りし、「気持ち良かった。どうすればそういうクルマに仕立てられる?」との質問に対する回答である。新型フォレスターには2種類のパワートレーンが設定されており、2024年のクロストレックから適用が始まったストロングハイブリッドと、先代から引き継ぐ1.8L直噴ターボがある。


ストロングハイブリッド車はリヤダンパーのロッドを長くした。同じことはクロストレックのストロングハイブリッド車でも行なっており、重量増への対応だ。車重が増えると旋回時の横力が大きくなる。横力を受けるとロッドが摺動部に強く押し当てられてしまい、摩擦で動きが渋くなる。渋くなるとしなやかさが欠けてしまう。ロッドを長くすると摺動部にかかる力が弱まるので、動きがしなやかになるというわけだ。

ターボ車のほうもダンパーの仕様を変えた。こちらはバルブの機構を変更。微低速域では減衰力を適度に持たせてバタつきを抑え、路面追従性を向上させる方向。中速域では減衰力を下げ、硬さを緩和して乗り心地を向上させた。また、高速域では減衰力を上げ、伸びきり時の打音を改善している。フォレスターのダンパーは歴代、旧ショーワに起源を持つアステモ(Astemo、4月1日に日立Astemoから社名変更)製だそう。


エンジンの味わいが濃いターボ


ターボ車はキビキビ感が強く、ストロングハイブリッド車はゆったりと落ち着いた印象。走りのキャラクターが明確に異なるのが印象的だった。ステアリングを操作している際の感触が良くなっているのも印象に残った。手応えがしっかりし、雑味がなく、必要な情報だけを確実に伝えてくる。
「(良くなった)理由のひとつはEPS(電動パワーステアリング)をデュアルピニオンにしたことですね」と技術者。先代はシングルピニオン式だったが、新型は入力軸とアシスト軸を分離したシステムを採用した。デュアルピニオン式はレヴォーグから採用しているが、サプライヤーはアステモからボッシュに変更している(クロストレックから)。「ステアフィールのつながりの良さを出しながら、手応え感も同時に合わせてセッティングできるようになった」と話す。

1.8L直噴ターボ(CB18)は2020年のレヴォーグが初出しで、ライフ途中でフォレスターのラインアップに加わった。基本的にはキャリーオーバーだが、新型に搭載するにあたっては「ハードと制御を細かく変えている」という。まずハード面では、オルタネーター(デンソー製)を高効率のタイプに変更(燃費に効く)。エンジンオイルは粘度を変えずに添加剤のチューニングでフリクションを低減した(やはり、燃費に効く)。

制御では、アクセルオフ時の燃料カットのタイミングを少し早めたという。これも燃費のためだが、背反としてショックを感じやすくなってしまう。そこで、CVTの制御に手を入れることでショックを発生させずに早めの燃料カットを実現した。車体の剛性アップを果たしたことなどで新型は先代より重くなっているが、燃費性能が悪化していないのは、こうした燃費改善の努力があるからである。
またSモード選択時は、先代より回転数が高めとなる制御に変更したという。コーナー脱出時のエンジン回転数が高くなるため、レスポンス良く加速態勢に移行できるようになっている。新型は先代に対して遮音・吸音が徹底しているため、高めのエンジン回転になっても耳障りに感じなかった。
ストロングハイブリッド車のシステムは先行して投入されたクロストレックと同じだが、ラジエーターの仕様が異なる。クロストレックとフォレスターではボンネットの高さが異なるためで、高さに余裕のあるフォレスターはダウンフロータイプを採用。クロストレックは車両右上から左下に流すクロスフローとなっている。重力を素直に利用するダウンフローのほうが理に適ってはいるが、クロスフローでも冷却性能は充分に確保しており、ハイブリッドシステムとしての性能に差はない。トリビア的な情報というべきか。
ターボ車はエンジンしか積んでいないので当然だが、エンジンの味が濃厚に味わえる仕立て。対照的に、ストロングハイブリッド車はモーターが主体の走り。エンジンは完全に黒子に徹している印象。スペックを見る限り、燃費面でも相当に期待できそうである。
グレード | Premium | X-BREAK | SPORT |
全長 | 4655mm | ||
全幅 | 1830mm | ||
全高 | 1730mm | ||
室内長 | 1950mm | ||
室内幅 | 1540mm | ||
室内高 | 1270mm ※サンルーフ装着車は室内高-15mm | ||
乗員人数(名) | 5 | ||
ホイールベース | 2670mm | ||
最小回転半径 | 5.4m | ||
最低地上高 | 220mm | ||
車両重量 | 1750~1780kg | 1730~1770kg | 1640~1660kg |
パワーユニット | 2.5L水平対向4気筒DOHC直噴 + 2モーター[e-BOXER(ストロングハイブリッド)] | 1.8L水平対向4気筒DOHC直噴インタークーラーターボ | |
エンジン最高出力 | 118kW(160ps)/5600rpm | 130kW(177ps)/5200-5600rpm | |
エンジン最大トルク | 209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm | 300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm | |
燃料(タンク容量) | レギュラー(63L) | ||
モーター型式・種類 | MC2・交流同期電動機 | ー | |
モーター最大出力 | 88kW(119.6ps) | ー | |
モーター最大トルク | 270Nm(27.5kgm) | ー | |
バッテリー | リチウムイオン電池 | ー | |
電池容量 | 4.3Ah | ー | |
定格電圧[V] | 259V | ー | |
燃費(WLTC) | 18.4km/L | 18.8km/L | 13.6km/L |
トランスミッション | リニアトロニック(CVT) | ||
ステアリング | ラック&ピニオン | ||
サスペンション | 前:ストラット式独立懸架 後:ダブルウィッシュボーン式独立懸架 | ||
ブレーキ | 前後:ベンチレーテッドディスク | ||
タイヤサイズ | 235/50R19 | 225/55R18 |