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■J・ムーバー第1弾はマルチなトールワゴンのキャパ
1998年(平成10)年4月23日、ホンダの新世代マルチトールワゴン「キャパ」がデビュー(発売は翌日)した。ホンダが進めた大ヒットシリーズ“クリエイティブ・ムーバーに続く”J・ムーバー“シリーズ第1弾のモデルだったが、やや地味な印象でヒットモデルとはならなかった。


大ヒットのクリエイティブ・ムーバーに続いたJ・ムーバー
ホンダは、1980年代後半“クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)”というコンセプトの新型モデルを続々と投入した。クリエイティブ・ムーバーとは、実質的にはRVと同じような位置付けのクルマだが、“クルマは使う人が自らの生活を思いのままに創造・演出するための道具と位置づけ、主人公はあくまで人”という考え方で、具体的には空間効率に優れ、走行中でも停車中でも楽しめるクルマを指す。


その第1弾が、ミニバンブームをけん引した「オデッセイ(1994年~)」、第2弾は都会派SUV「CR-V(1998年~)」。第3弾はコンパクトミニバン「ステップワゴン(1996年~)」、第4弾は車高が高くユーティリティに優れた「S-MX(1996年~)」であり、S-MXを除けばいずれも大ヒットした。


そして、クリエイティブ・ムーバーに続いたのが、RV戦略モデルとして“Small is Smart”に基づいた“J(Joyful)・ムーバー(楽しさ創造車)”である。その第1弾が、新世代マルチワゴン「キャパ」であり、第2弾が“アーバンクール”をコンセプトにした「HR-V」だった。

ロゴベースでハイルーフにしたトールワゴンのキャパ

1998年4月のこの日にデビューした「キャパ」のベースになったのは、1996年にデビューした「ロゴ」だ。ロゴは、大ヒットモデル「シティ」の後継にあたり、ショートノーズにハイト&ロングルーフが特徴のハッチバックスタイルのコンパクトカーである。

キャパは、ロゴよりも160mm背の高いトールワゴンに変貌。取り回しに配慮して全長をコンパクトのままで、高さ方向に余裕を持たせることで開放感のある広い室内空間を実現。また、使いやすい大開口テールゲートを備えていることも特徴である。



スタイリングは、ウインカーを組み込んだ大きなヘッドライトと縦並びのリアコンビを持つボクシーなフォルムで、スタイリッシュというより実用性重視の印象が強かった。広い室内には、座り心地の良い大ぶりなシートを装備し、足元のゆとりも十分あり、後席にはクラス最大級となる250mmのスライドが可能なマルチモードリアシートが採用された。

パワートレインは、最高出力98ps/最大トルク13.6kgmを発揮する1.5L直4 SOHCエンジンとCVT(ホンダマチック)の組み合わせ。1.3Lエンジンを搭載したロゴよりも軽快な走りが楽しめた。

車両価格は、標準グレードで139.8万円。当時の大卒初任給は19.6万円程度だったので、現在の価値で約164万円に相当する。実用性に優れたキャパだったが、スタイリングも含めてやや個性に欠けていたこともあり、厳しい販売を強いられた。
J・ムーバーは第2弾のHR-Vで終焉
キャパに続いたJ・ムーバー第2弾は、“アーバンクール”をコンセプトにしたHR-V(Hi-rider Revolutionary Vehicle)だ。兄貴分のCR-Vより一回りコンパクトな3ドアのハッチバックだが、全高を抑えながら地上高190mmを実現したステーションワゴンとSUVを融合させたようなハイランダースタイルが特徴である。

フロントマスクは、大小2つの円型ライトとその曲線に合わせたバンパーで構成され、若々しい雰囲気をアピールした。パワートレインは、最高出力105psの1.6L直4 SOHCの標準仕様と125psのVTEC仕様の2機種エンジンと、ホンダマチックCVTおよび5速MTの組み合わせ、駆動方式はFFとオンデマンド4WDが用意された。
斬新で都会的なデザインが一部のファンには評価され、海外では人気を獲得したが、国内販売は苦戦を強いられた。結果として、2005年に1代限りで生産終了となってしまった。
大ヒットしたクリエイティブ・ムーバーシリーズ(オデッセイ、CR-V、ステップワゴン)に続いたJ・ムーバーのキャパとHR-Vだったが、いずれも存在感を示せず1代限りで生産を終えてしまった。
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クリエイティブ・ムーバーに較べて、不発に終わったキャパとHR-Vだったが、キャパの後継「フィット」およびHR-Vの後継「ヴェゼル」は、いずれも大ヒットした。キャパとHR-Vの反省が生かされたのだろうか。
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