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■パジェロの最後を飾ったファイナルエディション
2019年(平成31)年4月24日、三菱自動車は1982年にデビューし、1990年代のRVブームをけん引して大ヒットした「パジェロ」の最後の特別仕様車「パジェロ・ファイナルエディション」を発売した。パジェロは同年8月に国内向けの生産を終えることから、最後の特別仕様車としてファイナルエディションを発売したのだ。

乗用車感覚を纏った本格オフロード4WDパジェロの誕生

初代「パジェロ」が誕生したのは1982年のこと。目指したのは、ジープのような走破性能を持ちながら、乗用車的な快適性や安全性を合わせ持つオフロード4WDだった。

堅牢なセパレートフレーム、フロントサスペンションにダブルウィッシュボーン/縦置きトーションバーの独立懸架、フロントブレーキにベンチレーテッドディスクなど、新しい時代に対応した仕様を採用。ボディタイプは、当初は2ドアのメタルトップと帆をまとったキャンパストップの2種だけだったが、翌1983年に乗用車系のワゴンタイプと7名乗車を可能にしたロングボディが追加された。

パワートレインは、低中速トルクに優れた最高出力95psの2.3L直4 SOHCディーゼルターボと75psの3.0L直4 SOHCディーゼル、110psの2.0L直4 SOHCガソリンの3種のエンジンと、4速および5速MTの組み合わせ。駆動方式は、オフロードに対応したパートタイム4WDだった。
従来の武骨なオフロード4WD車とは異なり、街中の走行も似合うスタイリッシュな新しいタイプのパジェロは、瞬く間に人気モデルとなり、日本のRVブームをけん引した。
パジェロ人気を決定的にしたパリダカの活躍

パジェロは、発売の翌年1983年からオフロード性能の高さをアピールするため、パリ・ダカールラリー(通称、パリダカ)に参戦。パリダカは、毎年正月元旦にパリをスタート、アフリカの砂漠地帯を走破してセネガルのダカールにゴールする、当時は世界一過酷なレースだった。
初参戦は、2.5L直4ガソリンエンジン搭載のキャンパストップモデルで、さっそく市販車無改造クラスで優勝。その後、エンジンを同エンジンのターボ仕様に変更して市販車改造クラスに移り、1985年に日本車初の総合優勝を果たす。1990年代から、このパジェロのパリダカでの活躍ぶりをNHKが連日特番で放映したため、パリダカブームに火がつき、パジェロ人気はさらに加速した。


1991年パジェロは初めてのモデルチェンジで2代目に移行。2代目は、フルタイムとパートタイムの両方式の長所をあわせ持つ世界初のスーパーセレクト4WDを採用。その後1997年、篠塚建次郎が選手がついに日本人初となるパリダカ総合優勝を果たした。

1999年に3代目となったパジェロは、ラダーフレーム構造からビルトインフレーム構造のモノコックボディに変更され、軽量化と高剛性化を実現。1999年からはパリダカに増岡浩選手が参戦し、パジェロは2001年から2007年まで破竹の7連覇、7連覇中の2002年と2003年は、増岡選手が連覇するなど、世界の舞台で三菱パジェロは輝き続けたのだ。

ファイナルエディションで栄光の幕を閉じたパジェロ

その後、2006年には4代目が登場したが、この頃にはパリダカ人気もRVブームも去り、代わりに市場の興味がミニバンやソフトな都会派SUVに向かったため、パジェロ人気は徐々に下降線を描いた。同時に、三菱自体の経営状況も悪化したことで有効な商品力強化ができず、パジェロの輝きは失せてしまった。
このような状況を受けて、三菱は国内向けについては2019年8月に生産を終了することを決断。2019年4月のこの日、最後の特別仕様車「パジェロ・ファイナルエディション」を700台限定で販売したのだ。

ファイナルエディションは、人気グレードの「パジェロ・エクシード」をベースに、パワートレインは3.2LコモンレールクリーンディーゼルとINVECS-II(5速スポーツモードAT)の組み合わせ。駆動方式は、スーパーセレクト4WD-IIである。

エクステリアは、ルーフレールと電動ロングサンルーフを標準装備し、インテリアには贅沢な本革シートとパワーシートを装備。また、悪路走破性能をさらに向上させるリヤデフロックやサイドエアバッグ&カーテンエアバッグを標準装備するなど、最後を飾るに相応しい仕様が用意され、車両価格は453.06万円に設定された。

その後、海外向けも2021年に生産を終え、1982年の初代モデル以来、生産台数で約300万台を誇ったパジェロは、39年の歴史に幕を下ろすこととなった。
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2015年に生産を終えたランエボ、そして2021年に生産を終えたパジェロ、三菱の2枚看板を下ろすという苦渋の英断をした三菱。例え人気があっても数が出なければ商品力が強化できずに徐々に勢いが失せていくという、名車が消えていく典型的なパターンを辿ったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。