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共通戦術装輪車シリーズ
陸上自衛隊は昨年2024年度予算から新型装甲車ファミリーの調達を開始した。それが「共通戦術装輪車」だ。「共通」の名が示すとおり、ひとつの車体から3タイプが開発された。
①歩兵戦闘型(24式装輪装甲戦闘車):一個分隊程度の隊員を輸送可能であり、また30mm機関砲を搭載して攻撃力も高い。
②機動迫撃砲型(24式機動120mm迫撃砲):車体後部に120mm迫撃砲を搭載し、①に追随して火力支援を行なう。
③偵察戦闘型(25式偵察警戒車):概観はほぼ①と同じだが、後部に偵察用機材や衛星通信アンテナを備える。
このうち今回は、③偵察戦闘型と②機動迫撃砲型が公開された。


共通戦術装輪車は、2016年より導入された16式機動戦闘車をベースに開発されている。今後、16式を中心に構成された有事即応部隊である「即応機動連隊」に配備される。これにより同連隊は、統一された車両ファミリーで構成される機動力の高い部隊となり、また整備や補給の効率も大幅に向上する。

12式地対艦誘導弾 能力向上型
現在、陸海空のすべての自衛隊で「スタンドオフ・ミサイル」の導入を進めている。これは、敵部隊から離れた場所(スタンドオフ)、敵のミサイル等の射程外から攻撃できる長射程ミサイルのことで、「12式地対艦誘導弾 能力向上型」も、そのひとつである。



島嶼防衛用高速滑空弾
最後が「島嶼防衛用高速滑空弾」だ。こちらもスタンドオフ・ミサイルのひとつであり、最初に配備される「早期配備型(ブロック1)」で射程900km、その後に搭乗する「能力向上型(ブロック2A/2B)」では3000kmに達する。射程3000kmと言えば、北海道に置いても南西諸島全体をカバーできる(台湾や中国本土すら射程におさめる)。対地攻撃用であり、上陸した敵部隊などを遠距離攻撃することが想定されている。

島嶼防衛用高速滑空弾は、単に射程が長いだけのミサイルではない。マッハ6程度で飛翔し、大気圏上層を滑空しながら目標に向かう特殊なミサイルだ。こうしたミサイルは「極超音速滑空体」と呼ばれ、近年各国で開発が進められている。極超音速と変則的な飛行のため、既存の対空ミサイルでは撃ち落とすことができないと言われており、島嶼防衛の“切り札”となるのではないだろうか。
さて、今回これだけの新型装備が公開された背景には、中国の脅威の増大があることは言うまでもないだろう。公開された装備のどれもが、島嶼防衛に直接的に関わるものだ。注目度が高い総火演の場で公開することで、中国の侵攻に対する「抑止力」とする考えなのだろう。