まったく別物! VW T-Roc R 「ゴルフRがいいかな?」と思っている人は一度、T-Roc Rも試してみてほしい

VW T-Roc R 車両価格:626万6000円
フォルクスワーゲン(VW)は、7月25日に行なったT-Roc(ティーロック)のマイナーチェンジに合わせ、ハイパフォーマンスSUVのT-Roc Rを国内市場に初めて導入した。1.0Lや1.5Lのガソリンエンジンや2.0Lのディーゼルエンジンを搭載する「ゴルフ」と高出力エンジンに4WDシステムを組み合わせた「ゴルフR」が別物であるように、T-RocとT-Roc Rもまた別物だ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

「R」はやはりパフォーマンス面でカッ飛んでいる

VW T-Roc R 全長×全幅×全高:4245mm×1825mm×1570mm ホイールベース:2590mm 車重:1540kg TSI Styleより車両重量が200kg重い

先に告白しておくと、筆者はT-Roc Rを軽く見ていた。ガソリンエンジン仕様のホンダ・シビックと、シビック・タイプRなら乗る前から「相当違うだろうな」と想像がつくのだが(実際、相当違う)、T-RocとT-Roc Rにそこまでの違いがあるとは、想像だにしなかった。T-RocとT-Roc Rの関係は、シビックとシビック・タイプRの関係と同等である。どちらのRもパフォーマンス面でカッ飛んでいる。

まずは車両概要から整理していこう。T-Roc Rの全長×全幅×全高は4245mm×1825mm×1570mmで、T-Rocより全高が20mm低い以外は同じ。大きく異なるイメージを漂わせる理由は、迫力ある専用のフロントバンパーと、T-Rocより2〜3インチ大径の19インチアルミホイールにある。開口面積の大きなホイールから覗く、ブルーにペイントされたブレーキキャリパーがアクセントになっている。

タイヤは235/40R19サイズのハンコックを装着
Rの文字が表面にデザインされたブルーブレーキキャリパー

リヤも専用のバンパーを装備。その下にある左右2本ずつのテールパイプが、後続車に高いパフォーマンスの持ち主であることを訴え掛ける。細かいところでは、リヤのナンバープレート上にあるロゴがT-Rocと異なる。T-Rocの場合はストレートに「T-ROC」の文字が並んでいるが、T-Roc Rの場合は「R」ひと文字だ。

インテリアはスポーティなムードが満点。本革ステアリングは専用で、スポークの左端にRボタンを配しているのが特徴。インフォテイメントシステムの画面上でエコ、コンフォート、ノーマル、レース、カスタムに走行モードを切り換えることができるが、Rボタンを押せば、センターのディスプレイに手を伸ばすことなく、ステアリングに手を添えたまま、ワンタッチでレースモードに切り換えることができる。

ステアリングホイール左にあるのが、「R」ボタン。

シートはナパレザーの専用品で、シートバックにあしらわれた「R」のロゴがいいアクセントになっている。試乗車のボディカラーはインジウムグレーメタリックだったので対象外だが、ラピスブルーメタリックを選択するとダッシュパッドもラピスブルーになり、エクステリアとインテリアのカラーが同色でコーディネートされる。

インテリアはスポーティなムードが満点。
ナパレザーのR専用シート

300ps/400Nm+4MOTION

エンジンは2.0L直列4気筒直噴ターボ(EA888)を搭載。最高出力は300ps(221kW)/5300-6500rpm、最大トルクは400Nm/2000-5200rpmを発生する。VWのSUVでは兄貴分のティグアンRが同じエンジンを搭載するが、こちらは最高出力320ps(235kW)/5350-6500rpm、最大トルク420Nm/2100-5350rpmを発生。ティグアンRのほうが大きな出力とトルクを発生するのは、約200kg重い車両重量(1750kg)に対応するためだ。発進デバイスに湿式多板クラッチを用いる7速DSG(DCT)を組み合わせる点もティグアンRと同様だが、ティグアンRはトレーラーなどの牽引を想定しているため高トルク型となる。

エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:DNF型 排気量:1984cc ボア×ストローク:82.5mm×92.8mm 圧縮比:9.3 最高出力:300ps(221kW)/5300-6500rpm 最大トルク:400Nm/2000-5200rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃 直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:55ℓ
専用スイッチは、左からスノー、オンロード、オフロード、オフロードカスタムの4モードが選べる。オンロードは、コンフォートとスポーツ、レース、カスタムを選択できる。

そして、4モーション、すなわち4WDだ。ティグアンRは後輪左右のトルク配分を制御するトルクベクタリング機構を備えるが、T-Roc Rは採用していない。後輪に駆動力を伝達するカップリングユニットを搭載する都合もあるのだろう。T-Rocのリヤサスペンションはトーションビームアクスル(カタログ表記はトレーリングアーム)だが、T-Rocはマルチリンク(カタログ表記は4リンク)だ。

リヤバンパー下からリヤサスペンションまわりを覗き込んでみると、ダンパーの下部にソレノイドバルブで減衰力を調節する外付けバルブが確認できた。同時にMONROE(モンロー)のロゴを確認。走行モードを切り換えると、モード選択に応じ、パワートレーン(エンジン+DSG)や電動パワーステアリン、とダンパーの減衰力を切り換える仕組みだ。

フロントサスペンションはマクファーソンストラット式。
リヤサスペンション ダンパーの下部にソレノイドバルブで減衰力を調節する外付けバルブが見える。

冒頭で「軽く見ていた」と記したが、動かして100メートルも走らないうちにT-Roc Rがただ者ではないことを悟った。このクルマ、ガチだ。脚が完全に、ヨーロッパのブランドの作法にのっとったハイパフォーマンスカーの仕立てになっている。「硬い」というより、「引き締まった」と表現するのがぴったりくる乗り味。尻より下の構造物だけで路面からの入力を受け止めるのではなく、ボディ全体でしっかり受け止める剛性感の高さが印象的で、流すようなドライブでさえ楽しい。

真骨頂はRモードで、ボタンを押した途端、T-Roc Rは牙を剥き、うなり声を挙げ始める。野太く、意図的(?)にばらつかせたエキゾーストサウンドがやさぐれ感を演出する。これまた、ヨーロッパのハイパフォーマンスカーにありがちな仕立てだが、迫力のあるバンパーや大径ホイールに、左右各2本出しのテールパイプで威張って見せているとはいえ、言ってみればBセグメントのコンパクトなSUVである。Rモードを選択すると、どこにそんな獰猛さを隠していたのかと驚くほど、荒々しいキャラクターに変化する。

といって、手に負えないほど扱いづらいかというとそんなことはなく、どこまでも飼い主(ドライバー)に柔順だ。痛快なほどにバカッ速いが充分にコントローラブルで、だから、思いのままに振り回せる楽しさがある。「ゴルフRがいいかな?」と思っている人は一度、T-Roc Rも試してみてほしい。引き締まった乗り味と抜群の加速力にキビキビした動き、それにスポーティなサウンドがもたらす独特の高揚感はきっと、ゴルフR好きにも刺さると思う。

T-Roc Rについては輸入自動車特別取扱制度(PHP)届出となるため、燃料消費率および二酸化炭素(CO2)排出量、最小回転半径は、国土交通省への届け出項目に存在せず測定値がない
VW T-Roc R
全長×全幅×全高:4245mm×1825mm×1570mm
ホイールベース:2590mm
車重:1540kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトレーリングアーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:DNF型
排気量:1984cc
ボア×ストローク:82.5mm×92.8mm
圧縮比:9.3
最高出力:300ps(221kW)/5300-6500rpm
最大トルク:400Nm/2000-5200rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:55ℓ

トランスミッション:7速DCT
駆動方式:4WD
T-Roc Rについては輸入自動車特別取扱制度(PHP)届出となるため、燃料消費率および二酸化炭素(CO2)排出量、最小回転半径は、国土交通省への届け出項目に存在せず測定値がない
車両価格:626万6000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…