72度のVバンク角と左右のバンクオフセット値以外、残りはすべてと言っていいほどに変わった。
「量産エンジンであることに変わりはないのですが、設計的に吹っ切れた。そう言った方がいいかもしれませんね」と、丸山氏は振り返る。「例えば、設計はコストと機能のバランスで行ないますから、面が平行にできるなら、この方が合理的だよねと、普通だったらなります。ところが、ここをもうちょっと傾ければ機能に振り向けることができるとなる場合は、機能を取る。最終的にはコストとのバランスを見ますが、機能寄りの判断をしました」
シリンダーヘッドの小型化がそうだったという。岡本氏が話を引き継いで説明した。
「あるものを持ってきて済ませると、これだけのものしかできない。だけど、新しく開発すればここまで行くということが分かれば、新しいのをやろうという方向でした。シリンダーヘッドの小型化では、VVTがネックになりました。カム間ピッチを詰めたかったのですが、量産のVVTをそのまま持ってきたのでは寄せられない。ならばVVTを改良するかと。トヨタ自動車はブラックボックスを極端に嫌う会社ですから、VVTにしても外から買ってくるものと中で作っているものがある。自分たちでやっているので、ここまで小型化できるとわかるわけです」
妥協を許さない姿勢は冷却に関しても貫かれた。
「LFAはリヤにラジエーターがあります。レーシングカーをやってきた経験から、これは絶対に風が流れないと覚悟しました。だから、とにかくエンジンとしては冷却損失を減らすことを考えました。そこでヘッドは狭く、エキゾーストポートは短くと、とにかく冷損を減らそうと。ヤマハさんには水の通路の検討をお願いし、改良してもらいました」
開発を通じて当初よりラジエーターに風が当たるようになった。それと並行してエンジン自体の改良を進めたことで、ラジエーターは当初より小さくすることができたという。