IHIが、AIによるコンテナ船到着予測データとAI活用の電子通関サービスを融合したサプライチェーンの可視化・追跡情報提供事業を開始

IHIのグループ会社であるIHIジェットサービス(以下、「IJS」)は、今般、AIによるAIS※1情報を使ったコンテナ船リアルタイム情報とAIを活用した電子通関における貿易データとを融合し情報を可視化することで、コンテナ船の到着予測を可能とし、通関手続きの簡素化・遅延防止および輸入関連費用削減を実現するサプライチェーンの可視化・追跡情報提供事業を開始したことを発表した。

本事業は、IJSが衛星情報(AIS、衛星画像)を使ったさまざまなサービス提供事業※2で培ってきた衛星情報分析サービスを活用し、コンテナ船のリアルタイム・精度の高い位置情報、船舶の航行遅延情報をAIにより分析した到着予測データと、HAKOVO社※3のAIを活用した電子通関プラットフォーム※4を連携させた海外におけるサプライチェーンの可視化・追跡情報を提供するものである。海上コンテナ船の航行スケジュール遅延の影響を受けることなく輸入通関業務を行うことで、目的地までの物資のスムーズな輸送と、世界で問題となっている港湾混雑の削減が可能になる。

このサービスにより、利用者(コンテナ船の積荷の荷主、通関業者、物流・配送業者、輸入業者等)は、コンテナ船の港湾に入るまでのスケジュールを正確に把握することが可能になり、通関のための手続き準備を期間内に確実に実施できるようになり、遅延なく物資を運搬することが可能になる。特に、生産部材・機械部品、建設部材などの輸送において、工場・現場で精度の高い調達物流と納期管理が必要な産業で、陸上での貨物輸送車両の手配・配送が計画どおりに行うことができるようになり、無駄なコストの発生を抑えることができるようになる。AIを活用したコンテナ船の航行情報とAIによる電子通関プラットフォームの組み合わせたサービスは、世界初の取り組みである。

現在、世界の主要港では、COVID-19が海上コンテナ輸送に与えた影響により、海上コンテナの需給バランスの不安定化、ロックダウン制限・解除による港湾混雑に起因するスケジュール遅延発生など、大幅な乱れが生じている。更に、フィリピンでは、複雑な輸入通関業務により輸入通関にかかる時間とコストの高騰化が懸念されている。

一方、日本貿易振興機構(以下、「JETRO」)では、日本企業がASEAN企業・機関と連携し、デジタル技術等のイノベーションを駆使しながら、日ASEANの経済・社会課題解決を目指す取り組みへの支援を2020年に開始。IJSは、JETROの「第2回 日ASEANにおけるアジアDX促進事業」で採択された「海外サプライチェーンの更なる可視化とトレーサビリテイの実証事業」において、2021年8月からフィリピンで、本サービスにおける実証事業を行い、通関に必要な書類準備・作成、手続き・申請を遅延なく確実に行えるようになることを確認したことから、今回のサービス開始となった。

本実証事業は、フィリピンでの日本ODAダバオバイパス建設プロジェクトにおいて、建設資材の輸送・輸入へ適用されたが、今後、IJSでは、フィリピンに加え、インドネシアやタイなど東南アジア、中東でもサービスが展開されて行く予定となっている。

電子通関プラットフォーム(イメージ)

注釈

※1 AIS(Automatic Identification System):船舶自動識別装置。船舶の種類、位置、針路、速力等の安全に関する情報を自動的に送受信するシステム。

※2 IHIジェットサービス:衛星情報(AIS、衛星画像)を使い、各種データの分析・解析・販売、データ加工・可視化など、様々なサービスを展開。その他、ガスタービンメンテナンス、航空エンジン・宇宙機器の技術支援、製造・生産支援、材料・部品販売、人材派遣等。

※3 HAKOVO社:貿易を簡素化する国際的な通関のデジタルプラットフォームを提供。

※4 電子通関プラットフォーム:HAKOVO社の提供する通関申告書類の自動作成を行うツール。輸出国からのデータと文書をタイムリーに受け取り、輸入申告書類を当局に提出することが可能。

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