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  • 2018/02/07
  • MotorFan編集部 小泉 建治

クルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?【テスラ・モデルX試乗記】

MT万歳、後輪駆動bravo、2シーターyeahの旧石器人が、今さらながらの初試乗!

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テスラがファルコンウイングドアと呼ぶ、俗に言うガルウイングドアをリヤドアにのみ採用するという抜群のセンス。トヨタ・セラも霞んで見える。
すでに国内販売開始から一年以上が経過し、
自動車メディアには出尽くした感のあるテスラ・モデルXの記事。
とはいえ、まだまだ未知の乗り物という認識が一般的であるはず。
果たして昔ながらのクルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?

TEXT&PHOTO:小泉建治(KOIZUMI Kenji)
全長5037mm、全幅2070mmという巨体だが、試乗後に詳細スペックを確認するまでは、そこまで大きいとは感じなかった。感覚的には、全長4.8m、全幅1.9mくらいなイメージ。それでも十分に大きいが……。

今さらながらの初ドライブ

 自動車専門メディアとしては遅きに失した感があるが、2月上旬に神奈川県大磯にて開催されたJAIA試乗会にて初めてテスラに乗ることができた。今さら生真面目なインプレッションを書いてもしかたがないが、せっかく乗ったのに記事にしないのももったいので、昔ながらのクルマ好きのひとりが初めてテスラに乗ったらどう感じるのかを率直に綴ってみることにする。
 
 JAIA試乗会とは、日本の正規インポーターが一堂に会して代表車種を持ち込み、メディアの人間に一斉に試乗させてくれるイベントのこと。事前にリストのなかから希望車種を選び、抽選を経て試乗車種が決まる。希望がすべて通るとは限らないため、取材としての予定は立てにくい。JAIA試乗会で本気の取材をかける場合もあるが、今回は自分が好きな、あるいは乗ったことのない車種に絞って希望を出した。
 
 果たして当たった試乗車は、シボレー・カマロ、ロータス・エヴォーラ、ロータス・エリーゼ、ポルシェ718ボクスター、アストンマーティンDB11、そしてテスラ・モデルXだった。モデルX以外がことごとくスポーツカーであることからも、なんとなく筆者の嗜好がわかっていただけるかと思う。

旧来のクルマ好きは相手にしていない!

17インチもの巨大な縦型モニターがいやでも目に飛び込んでくる。映し出される中身のデザインもなんだかクルマっぽくない。まるでiPad?

 知ってはいたが、やはり実物を目の当たりにして度肝を抜かれるのはファルコンウイングドアである。昔ながらのクルマ好きにも刺さるアイテムだが、それを驚くべきことにリヤドアにだけ採用しているのがなんともテスラらしい。

 そして乗り込んでみると、ダッシュボード中央の巨大な17インチの液晶モニターがイヤでも目に飛び込んで来る。見やすいことは見やすいが、なにもこんなにデカくなくても、というのが個人的な本音だ。かつてサーブが、夜間ドライブ時の目の負担を軽減させるため、速度計以外の照明を落とす機能を搭載していたのとは対照的だ。サーブは航空機メーカーに出自を持ち、このインパネの機能もそこから引用された技術だそうだが、そんなエピソードにもクルマ好きという旧石器人はコロッと参ってしまうのであった。

 ところがモデルXの縦型モニター、話は大きさだけでは終わらない。写真を見ていただきたいが、画面に表示される中身がことごとくクルマっぽくないのだ。最近はドイツのプレミアム御三家なんかも、さまざまな電子デバイスを画面上で設定できるようになっているが、どれもクルマ好きの心を揺さぶるようなメカメカしいデザインで、「スポーツプラス」みたいなモードを選ぶといろんなところが真っ赤に光ったりする。

 一方のモデルXには、そんなギラギラ感は一切なし。まるでiPhoneの設定画面みたいで、なんというか、手応えというものがない。だがタブレットやスマートフォンに慣れ親しんだ世代にはこちらのほうが馴染みやすいのでは、という気はする。

 私事ながら筆者にはテスラの購入を検討している友人がふたりいる。ひとりはロンドン在住のノルウェー人で40歳代後半、もうひとりは東京在住の韓国人で30歳代後半で、いずれも外国人というのは偶然か否か考察の余地があるが、共通しているのは両者ともにIT系企業に勤めているという点だ。そして現在の愛車はノルウェー人がVWザ・ビートル、韓国人が日産セレナと、これまたいかにもクルマ好きではないところも注目である。

 そんな、クルマ好きではないはずのふたりが、テスラに関しては熱く語り、そして筆者に執拗に質問してくる。自宅に招いても、私のクルマやバイク、そしてズラリと並べられたミニカーには一瞥もくれないふたりがだ。

 つまり、テスラが相手にしているのは彼らのような人々なのだ。その点においては、クルマ好きにも訴えかけてくるBMW i3やi8とも明確に異なる。筆者が共感を覚えるのは圧倒的にiシリーズのほうだが。

テスラだけの世界観が、新しい顧客層を惹きつける

ステアリング越しのメータークラスター内もフル液晶だ。ウインカー、ワイパー、クルーズコントロールのレバーがメルセデス・ベンツと共通と気づいて心なしかホッとした。

 走り出すと、まぁEVらしく凄まじい加速を見せる。信号待ちで先頭にいると、路肩をすり抜けてきたバイクが停止線より前に停まった。一般論としてバイクのほうが発進加速に優れているから、先に行ってもらって結構、と思っていたのだが、青になってもモタモタしていたので堪らずアクセルを踏みつけると、あっという間にバイクがミラーのなかで点になってしまった。0-100km/h加速は3.1秒だそうで、もはやスーパースポーツである。

 だが、それにもかかわらず高揚感がない。EVなんてそんなもの? いやいや日産リーフなんて、e-Pedalを駆使すれば内燃機関のクルマとは違った、新しい「スポーツドライブ」が楽しめて相当エキサイティングだったりするのだ。

 一方このモデルXは、ACCとステアリングアシストを作動させて、できるだけ自動運転に近い状態でリラックスしたいと思わせる。早く来い来い完全自動運転、である。そういえば前述の韓国人も、先日会ったときに「セレナのプロパイロットは凄いですよ〜」とうれしそうに話していた。

 チョイ乗りドライブなので、航続距離だとか、街中での使い勝手だとか、ワインディングでのハンドリングだとかはわからない。だが、テスラの方向性は十分に伝わってきた。

 つまり、アピアランス然り、乗り味然り、筆者のような旧石器人はまったく相手にしていないということだ。EVでも駆けぬける歓びを体現しているBMW iシリーズや、なるべく既存のエンジン車から乗り換えても違和感を最小限に抑えられるように配慮されている日産リーフとは根本から理念を異にする。

 テスラの演出は徹底している。新しいMacBookやiPadが出るとついつい買い足してしまう友人や、愛車のプロパイロットが自慢の友人……そんな彼らの琴線にこそ触れるような世界観に満ちているのだ。

 仮に経済的に余裕ができても、おそらく筆者がテスラを買うことはないだろう。テスラの方向性は明確だ。旧石器人は既存の自動車メーカーにまかせておけばいい。

 ……でも、ファルコンウイングドアだけは、うん、嫌いじゃありません。
 
 
 



Specifications
テスラ・モデルX P100D
全長×全幅×全高:5037×2070×1680mm 車両重量:2487kg フロントモーター最高出力:262ps リヤモーター最高出力:510ps システムモーター最高出力:611ps 最大トルク:967Nm 駆動方式:AWD 価格:1718万2000円

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