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よくわかる自動車技術:第25号 ターボラグ ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態

  • 2020/04/19
  • Motor Fan illustrated編集部
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(PHOTO:INFINITI)

最近、ターボエンジンを搭載したクルマに乗るたびにイライラする。原因はターボラグだ。
国産初のターボエンジンであるL20ターボや、扇風機のようなビッグタービンを積んだチューニングカーにも乗ったことがあるから、ターボラグがどんなものなのか多少なりとも経験があるし、流体である空気を高速で動かす以上、ブーストがかかってもすぐに出力に反映されないことは理解しているつもりだ。だが、昨今のターボエンジンは千数百回転から最大トルクを発生し「ターボラグはほとんどない」と謳っている。それなのに、明らかに加速要求と実行の間に時間差があるものだから腹が立つのである。
TEXT:三浦祥兒(MIURA Shoji)

 内燃機関は熱エネルギーを運動エネルギーに変換する動力だ。燃料と酸素が燃えたことで生まれた力は、まずピストンを押し、コンロッドからクランクシャフトの間で直線運動から回転運動に変換され、変速機とデフ、ドライブシャフトを回してようやく動力がタイヤに辿り着く。いくら熱効率が高く燃費のよいエンジンでも、発進・加速時に猛烈に燃費が悪化するのは、車体を動かす前にエンジンそのものや駆動系を動かすための力をムダに消費しているからだ。

 メーカーが発表するエンジンの性能曲線がいくら1700rpmで最大トルクを発揮すると図示されていても、それはエンジン単体の無負荷での数値。いわば空ぶかし状態での計測だ。おまけにWTO(Wide Throttle Open)での指標である。路上の運転で発進時に全開にすることなどあり得ない。そうした状況ではアクセルをじわっと踏んで加速しだす前に、エンジンからタイヤに至る間に介在する様々な抵抗が存在しており、いくら変速機でトルク増幅していても加速要求と実際の加速には乖離があるのだ。

 当然、自然吸気のエンジンにだって「ラグ」がある。ただし、ターボと違ってエンジン回転数とトルクの上昇がほぼ正比例しているから違和感がないだけだ。今どきのターボエンジンが厄介なのは、街中での燃費を稼ぐために普段はターボを効かせずに自然吸気エンジンとして振る舞っていること。ついでに、いざ過給がかかった時のために圧縮比を純粋な自然吸気エンジンより落としているから、ブーストがかからないとやたら意気地がないのだ。特に発進時は。

画像はイメージ(PHOTO:SEAT)

 確かにエンジン本体はちょいとアクセルを踏んだだけでトルクが出ているのだろう。けれども種々の抵抗でクルマは前に出て行かない。それがそのまま続けば単に馬力のないエンジンということで済ませられるが、しばしの間を置いて後、抵抗に打ち勝ったエンジンは正味のトルクをいきなり出してくる。その落差こそがターボラグというわけだ。

 数の多い2ℓターボだと、正味のトルクを感じるインターセプトポイントは大体2300~2500rpmくらい。エンジンと変速機のメーカーの違いはあってもほとんど差は出ない。エンジンのスペックやターボチャージャーのサイズが同等に収斂している証左だろう。現実の市街地走行ではアイドリングからの1500rpmは多用する領域であり、意地悪く言えばターボラグを出すように走っているものだ。

画像はイメージ(PHOTO:SKODA)

 ターボエンジンと多段変速機はふたつでひとつ。これまた低速でのターボラグを助長する。

 2ℓ級のターボエンジンと多段ATの組み合わせだと、発進してから40㎞/h程度まで加速するうちに平気で4速くらいシフトアップしていく。それなりの加速要求を満たすために二千数百回転まで上げなければならないのに、エンジン回転は一向に上がらないから、いよいよ不満は募る。だからといって右脚を余計に動かしたりするとシフトダウンして加速はするものの、燃費計はズドーンとゼロの方向へ動いて心理的に負荷がかかる。自然吸気エンジンだってより加速しようとすれば燃費は悪化するが、加速と燃費の推移に濁りがないからイヤな思いはしない。ハイブリッドはもっとナチュラルだ。

 別にダウンサイジングターボを揶揄するつもりはないのだ。高速に乗れば自然と回転は上がるからそれなりにブーストも付いてくるし、その状況では自然吸気やハイブリッドより余裕があってヨロシイ。ヨロシイけれどここでも気分の良し悪しは変速機次第となるのが困ったものなのである。

 高速走行となると、例え制限速度が100㎞/hの日本でも欧州車の方が印象がよい。そのあたりの速度域ではエンジン回転数は2000rpm以下。発進加速時ではターボラグが気になる領域だが、エンジンもターボも負荷がほとんどかかっておらず、ターボには幾許か余回転がかかっているのでスロットルを開けても自然にトルクは増えてくる。欧州車の多くは高速での微少な加速に際し、変速機をこまめに動かして(可変バルタイや電制スロットルも当然一生懸命働いているのだろうが)加速要求を瞬時に呑み込む。取り分けBMWの8HPとVWの7速DSGはそのあたりの制御が見事だ。

 ところが国産のターボ車はもちろん、日本製多段ATは高速域での変速を嫌う傾向にある。兎に角現在のギヤ段をホールドしたがるのだ。また、シフトダウンするにしてもその際のマナーが違う。欧州変速機は基本的に変速にかかる時間を短くしたいようで、「スパッ」とギヤを変えてくる。そのままではシフトショックが出る筈だが、そこは制御の妙でキチンと抑えてあるし、不快にならない程度の微少な「段付き」は敢えて残して加速感を醸成しているフシさえある。逆に国産ATはシフトショックを極端に嫌うあまり、変速にかかる時間が僅かではあるが長い。例えれば手動変速で半クラを使っている時間が長いのだ。擬音で言えば「スパッ」ではなく「……ニュルッ」。結果として同等の加速が得られたとしても、加速する気分は圧倒的に前者の方がキモチよい。穿って見るなら、欧州車は「加速したいなら存分にどうぞ。高速なんだから」だし、国産は「いやいやもう制限速度です。燃費も悪くなるからそんなに踏まなくても」ということか。

 ターボラグは気にならなくても、変速ラグが気になるのが、ターボ車の高速走行なのである。

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