連載

自動車エンブレム秘話

GMを支える中核ブランドとしてのシボレー

シボレーは、前回取り上げたキャデラックと並ぶゼネラルモーターズ(GM)の主要ブランドである。1911年、ウィリアム・デュラントとスイス生まれのレーシングドライバーでありエンジニアでもあったルイ・シボレーがデトロイトに設立したのが「シボレー・モーター・カンパニー」だ。

1918年にはGMグループの一員となり、実用性と性能、そして価格競争力を武器にGMを長年支える存在だ。キャデラックがラグジュアリーと先進技術を体現する存在であるならば、シボレーはより幅広いユーザーに向けて、「クルマのある生活」を提供してきたブランドと言える。

“ボウタイ”の誕生と時代による変化

シボレーのエンブレムとして知られる“ボウタイ”(蝶ネクタイ)は、1914年から量産車に採用された。その起源については複数の説が存在するが、デュラントがフランス滞在中に泊まったホテルの壁紙模様から着想を得たというエピソードが公式資料では紹介されている。

このボウタイエンブレムは、基本的な輪郭を保ちながら、時代の変化に応じて細部の表現を調整してきた。近年ではスポーツモデルやモータースポーツ仕様、さらにEVにおいて、ブラックアウトされたエンブレムも採用されている。これは視認性の向上やデザインのアップデートに加え、電動化やブランド表現の変化に対応するためだ。

形状は同じでも、置かれる文脈によって異なる役割を担ってきたと言える。その柔軟性もまた、ボウタイが長く使われ続けてきた理由のひとつである。こうした変化を重ねながらも、ボウタイの基本形状そのものは100年以上にわたって大きく変わることなく、シボレーというブランドの象徴として受け継がれてきた。

ゴールドに輝く理由:読み取れる「品質・価値・信頼性」

現在広く用いられているゴールドのボウタイは、1990年代以降に定着した意匠である。シボレーは、品質・安全性・信頼性・革新性をブランドの中核に据え、ユーザーの日常に寄り添いながら社会的責任を果たすクルマづくりに注力している。

ボウタイの形状やカラーが何を象徴しているかについて明確な説明はない。しかし、こうしたブランドの方向性と照らし合わせると、このエンブレムはその価値観を視覚的に体現した存在として読み取ることができる。簡潔で安定感のあるボウタイの形状は、品質や信頼性を重視する姿勢と重なり、ゴールドのカラーは価値あるプロダクトを長く届けてきたブランドの自負を示しているように映る。

日本で見るシボレーとエンブレム

日本市場におけるシボレーは、正規輸入モデルを絞り込んだ展開が続いてきた。現在は、ミッドシップレイアウトを採用した第8世代の「コルベット」のみをゼネラルモーターズ・ジャパンが扱っている。

コルベットはシボレーブランドに属しながらも、一般的な「ボウタイ」エンブレムではなく、旗とユリの花を組み合わせた専用の「クロスフラッグ」バッジをフロントおよびリヤに装着する。これは、コルベットが誕生当初から、シボレーの中で特別なパフォーマンスと象徴性を担うモデルとして位置づけられてきたためである。

一方、かつて日本にも導入されていた「カマロ」は、他の多くのシボレーモデルと同様にボウタイのエンブレムを掲げ、ブランドのスポーツイメージを体現する存在であった。現在の日本ではシボレー=コルベットというイメージがより明確になっているが、それでもなお、シボレーのボウタイが示すアメリカン・パフォーマンスの正統性は、多くのファンに共有されている。

変わらない形、変わり続ける意味

シボレーのボウタイは、キャデラックの「クレスト」のような装飾性や、フォードの「スクリプトロゴ」のような筆記体とは異なり、極めて抽象的で簡潔なデザインが施されている。しかしそのシンプルさゆえに、時代や車種を超え、意味を更新しながらブランドの象徴としての役割を担い続けている。

トラックにも、スポーツカーにも、EVにも掲げられるボウタイ。それはシボレーというブランドが「誰のためのクルマか」を問い続けてきた、100年以上の歴史そのものを象徴するエンブレムなのである。

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キャデラックの盾形エンブレムは、ブランド名の由来となった人物の“ファミリークレスト”(家紋)をベースにデザインされ、時代とともに進化してきた。2014年の刷新や近年の簡潔なモノクロ化までをたどり、GMのいちブランドとしての立ち位置とともに読み解く。

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