ヤマハ WR125R ABS……53万9000円(2026年1月30日発売)

シート高875mmはテネレ700 ABSと共通。車重は138kgで、これはWR155Rより4kg、セロー250(DG31J)より5kg重い。製造国はインドネシアだ。なお、排気量は124ccだが、新基準原付には該当しないので、原付免許や普通自動車免許での一般公道走行は不可だ。
車体色はヤマハブラックとディープパープリッシュブルーソリッドEの2種類。サイドカバーやラジエーターシュラウドの形状を工夫することで、オフロードブーツの引っ掛かりを少なくしている。
先日、筆者はオートサロンオギヤマが取り扱う並行輸入のWR155Rに試乗している。これを執筆している2026年3月上旬現在、53万4600円で販売されていることを確認。つまり、125より4400円安いのだ。筆者のインプレッション記事はこちら

155との力量感は僅差、公道走行に十分なパワーを有する

2026年1月30日に発売されたヤマハのWR125R ABSは、フルサイズのオン・オフモデルであるWR155Rをベースに設計された。この2台、真っ先にヘッドライトの違いが目に付くが、実はシートとテールカウル以外の外装がそれぞれ専用設計となっている。また、エンジンについては排気量が異なるだけでなく、125の方はグローバルな規制に対応するため、チャコールキャニスターやエバポレーターなどを追加。さらに、125はABSの導入に伴いフロントのブレーキディスク径をφ240mmからφ267mmに拡大するなど、変更点は多岐にわたる。

エンジンは、58.7mmというストローク量は155、125とも共通で、ボア径は155が58.0mm、125は6mm小さな52.0mmとなっている。動弁系はSOHC 4バルブで、どちらも低回転向けと中~高回転向けの吸気カムが7000~7400rpmを境に切り替わるVVA(可変バルブ機構)を搭載する。WR125Rの最高出力は、欧州におけるA1免許の上限である15PSに設定され、これはWR155Rに対して1.7PS低い。

左がWR125R、右がWR155Rのエンジンだ。125はABSを追加した影響で、ラジエーターのリザーバータンクをサイドカバー左側からシリンダー右側に移設している。なお、最高出力は125が15PS、155は16.7PSで、どちらも可変バルブタイミング機構“VVA”を組み込む。トランスミッションは6段だ。

WR125Rの124cc水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンは、MT-125やYZF-R125、XSR125らと同系ではあるが、オフロードで重要となる低回転域でのトルクフィーリングを適正化するため、最大トルクの発生回転数を12Nm/8000rpmから11Nm/6500rpmへと引き下げている。

先日、WR155Rに試乗したばかりなので、兄弟モデルの125はそれなりに非力さを感じるのではないか。そう思いながらエンジンを始動して発進すると、意外にも加速感に大きな差がないことに驚かされた。具体的には、2000rpmを超えて3000rpm付近からしっかりとトルクが沸いてきて、苦もなく交通の流れをリードできる。155との排気量差は24%なので、その差は決して小さくはない。理由は二次減速比にあった。

155と125では、一次減速比と6段ミッションの各変速比が共通で、二次減速比のみが異なる。ドライブスプロケットは14Tで同じであり、ドリブンスプロケットは155の51Tに対して125は59Tを採用する。つまり、125の二次減速比は約16%もショートなのだ。

それもあって、街中では155よりも吹け切り感がやや早いものの、同等レベルの加速性能を得ることに成功。この二次減速比のショート化は林道においても威力を発揮し、2速ですら半クラッチを使わずに13~14km/hでトロトロと上り勾配を進むことができる。トップ6速、60km/hでの回転数はメーター読みで5000rpm付近。可変バルブタイミング機構のVVAについては、7000rpm付近を境に切り替わる仕組みだが、パワーカーブ自体は極めてシームレスであり、アクチュエーターの「カシャッ」という小さな作動音を聞くか、もしくはメーターに表示される「VVA」の文字を見ない限り、切り替わったことに気付かないだろう。

ハブダンパーが使われていないこともあって、スロットルの動きに対する車体の反応は加速、減速ともダイレクトであり、特に林道では意のままに力を取り出すことができる。それでいてパワーがありすぎるわけではないので、オフロードビギナーにとっては扱いやすい排気量と言えるだろう。気になったとすれば、クラッチレバーの操作がやや重いことだが、個人的にはクラッチ接続時の分かりやすさに良い印象を持った。

オフロードビギナーが楽しめる車体剛性、ABSは賛否あり

今回用意された試乗車には、ダンロップのD603が装着されていた。本来の標準装着タイヤは同D605だが、ヤマハには「林道を走るかも」と伝えたことから、よりオフロード指向のD603に交換してくれていたのだ。ちなみに先日試乗したWR155Rには、IRCのトレイルズGP-21F/GP-22Rが装着されていた。

今回の試乗車に装着されていたのは、林道ツーリングなどに最適なオフ指向のトレールタイヤであるダンロップ・D603だ。

舗装路でのハンドリングはWR155Rと同質であり、フルサイズのトレール車らしい穏やかな舵角の付き方が特徴だ。スロットルのオンオフ操作で車体がバランス良くピッチングし、ハンドルへの軽い入力でスムーズに向きを変える。同じホイール径(フロント21インチ/リヤ18インチ)のセロー250ほどのクイックさはないが、それはWR125Rの方がホイールベースが70mmも長いことが影響していそうだ。

タイヤの指定空気圧は、1名/2名乗車時ともフロント150kPa、リヤ170kPaとなっており、スタート前にそれを確認。30分ほど走行したら前後とも20kPaずつ上がっていたので、林道の入口でとりあえず140/160kPaまで下げ、いざダブルトラックのダートへと進入した。

玉砂利の多い区間では、セローよりもフレーム剛性が高いことを確認。それでいて硬すぎないことから、変に弾かれることなくグングンと前に進むことができる。フロントの正立式フォーク、リヤのリンク式サスペンションとも作動性はスムーズで、大きな段差によるショックをうまく吸収してくれる。ちなみにホイールトラベル量はフロント215mm、リヤ187mmで、これはセロー250の225mm/180mmに限りなく近い。

プロテクターの巧みなデザインによって倒立式のように見えるが、フロントフォークはφ41mm正立式だ。
リヤサスペンションはリンク式モノショックで、5段階のプリロート調整機構あり。標準位置は最弱から2段目だ。純正アクセサリーでシート高が約40mm下がるローダウンリンク(7700円)を用意。

未舗装路走行があまり得意ではない筆者だが、気が付けば無心でWR125Rを走らせていた。かつて所有していた最終型セローでも何度か林道走行を経験しているが、しなやかに過ぎる車体(主にステアリングヘッド付近)に漠然とした不安が常に付きまとい、心底楽しめたという記憶がない。これに対してWR125Rは、足着き性の悪さに起因する怖さは拭いきれないものの、ライダーの「このラインを通りたい」という意思をしっかりと汲み取ってくれるので、自然と心が躍るのだ。もちろんこの楽しさは、タイヤがダンロップ・D603だったことも少なからず影響しているはずだ。

ブレーキについては、特にフロントの絶対制動力がセロー250よりも高く、舗装路においてはかなり扱いやすかった。一方、林道においては、特に勾配のきつい下りにおいて、フロントのみに採用されているABSが早くに介入してしまい、リヤをロックさせてどうにか事なきを得るというシーンも。先に試乗したWR155RにはABSが付いておらず、そのイメージが残っていたからこそ余計に焦ったのだろう。ABSは現行のレギュレーションにおいて装備することがマストであり、加えてキャンセル機構も法的にNGなので、この事象は仕方のないことではある。未舗装路をガンガン走りたいというエンジョイ勢にとっては、これが購入する際の悩みどころとなる可能性は大だ。

身長175cmの筆者でも、もう少し足着き性が良ければと思うものの、それと引き換えに得られる視点の高さはデュアルパーパス車の醍醐味である。では、WR125RとWR155Rのどちらを選ぶべきか。前者は原付二種であり、一般的にはファミリーバイク特約が使えるので維持費が安いと言われるが、条件次第では軽二輪のWR155Rと同等になることから、これは必ずしも当てはまらない。免許の種類やよく利用する駐輪場の条件、自動車専用道路の利用頻度など、さまざまな視点で熟考し、あなたにとって最適だと思う方を選んでほしい。少なくともこの2台、走りのパフォーマンスは同等レベルにあるといっても過言ではないのだから。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

オフロードモデルとして表現すべき性能を担保するため、シート高は875mmに設定。これは155の880mmに対して5mm低い。太ももが干渉するカバーを125専用設計とすることで、155よりも足が側方へ広がりにくくなり、足着き性の向上に貢献している。ハンドル位置はやや低めであり、街乗りでは操縦しやすいものの、スタンディング姿勢をメインで走るならもう少し高くしたい。

ディテール解説

シリンダーヘッド周辺の冷却構造の兼ね合い、および左右の重心バランスをとるため、トレール車では珍しく左出しのアップマフラーを採用。サイレンサーの出口は、155の真後ろに対して125はほぼ真下を向いている。
ABS搭載によるブレーキディスクの大径化、およびヘッドライトのLED化などにより、ステアリングモーメントが増加。その影響によるハンドリングの重さを解消するために、フロントホイールのハブの剛性調整を実施している。ホイールのリムはアルミ製だ。フロントブレーキはφ267mmソリッドディスクと、ニッシン製ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーの組み合わせで、フロントのみABSを標準装備。
リヤブレーキはφ220mmディスクとニッシン製シングルピストンキャリパーのセットだ。スイングアームは角断面のスチール製。
ハンドルバーはスチール製で、クランプはラバーマウントとなっている。純正アクセサリーのグリップウォーマー180Cは1万9580円だ。燃料タンク容量は8.1L(無鉛レギュラー)。
必要最小限のスイッチボックス。ハザードランプも設けられている。
WR155Rのメーターをベースに、ABS警告灯を追加した関係で左のインジケーター類の配置を変更している。右側のLCDマルチファンクションメーターは、バーグラフ式のタコメーターと燃料計、速度、ギヤポジションを常時表示するほか、下段ではボタンを押すたびに積算計、トリップ1、トリップ2、トリップF、時計、瞬間燃費、平均燃費を切り替え表示する。
着座位置の移動がしやすいスリムなシート。座面が約30mm低くなるローダウンシート(1万9800円)、反対に約30mm高くなるハイシート(2万9700円)を純正アクセサリーで用意する。
125で新設された右側後方のツールボックス。内部への浸水が確認されたので、書類などを収納する際はビニール袋などで対策を。
左が125、右が155のヘッドライトだ。125は上段のポジションランプが5.0Wのフィラメント球、下段はLEDヘッドライトで、この二つを別体化することでフロントマスクの小型化を実現した。
テールランプは125cc専用設計でLEDを採用。前後ウィンカーとナンバー灯はフィラメント球だ。

ヤマハ WR125R ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BJ-DE14J/E35ME
全長/全幅/全高 2,160mm/840mm /1,195mm
シート高 875mm
軸間距離 1430mm
最低地上高 265mm
車両重量 138kg
燃料消費率 国土交通省届出値
定地燃費値 49.8km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 44.8km/L(クラス2, サブクラス2-1) 1名乗車時
原動機種類 水冷, 4ストローク, SOHC, 4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.0×58.7mm
圧縮比 11.2:1
最高出力 11kW(15PS)/10000r/min
最大トルク 11N・m(1.1kgf・m)/6500r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.10L
燃料タンク容量 8.1L(無鉛レギュラーガソリン)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V,5.0Ah(10HR)/YTZ6V
1次減速比/2次減速比 3.041 (73/24)/4.214 (59/14)
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速
変速比 1速:2.833 2速:1.875 3速:1.363 4速:1.142 5速:0.956 6速:0.840
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター/トレール 28°20′/117mm
タイヤサイズ(前/後) 2.75-21 45P (チューブタイプ)/4.10-18 59P (チューブタイプ)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED
乗車定員 2名

製造国:インドネシア